パート・アルバイトにも労働条件通知書が必要な3つの理由

執筆: 田中靖子(たなかやすこ)

 

労働条件通知書って何?

労働条件通知書は、その名のとおり「どのような条件で労働するかについて、会社が労働者に通知する書面」です。

書面で通知することが義務付けられていますので、口頭で伝えるだけでは違法です。

労働条件通知書を交付する相手は、正社員に限りません。労働基準法及びパートタイム労働法では、パートやアルバイトにも労働条件通知書を書面で交付することを義務付けています。

パートやアルバイトに労働条件通知書を交付しなかった場合には、行政指導が行われます。行政指導によっても改善がみられなければ、雇用主に対して10万円以下の過料が課せられます。

どうして労働条件通知書が必要なのでしょうか?

どうしてパートやアルバイトにも労働条件通知書を交付しなければいけないのでしょうか?3つの理由を解説します。

理由①「労働者を守るため」

パートやアルバイトなどの非正規社員は、正社員とは異なるスケジュールで働くことが多く、勤務態様が不安定です。よって、事前に労働条件を確認することが正社員以上に重要となります。

正社員であれば、毎日定時に出退勤して、お盆休みやお正月休みを取ることもできます。しかし、パートやアルバイトの場合は、定時という概念がありませんので、「何時から何時まで働くのか」「土日祝日に休みを取ることができるのか」ということを事前に確認しておかなければ、勤務スケジュールを立てることができません。

また、パートやアルバイトの場合は、賃金を時給で換算することが多いので、「時給はいくらなのか」「交通費は支給されるのか」ということが事前に分かっていなければ、給与がいくらになるのかという予測を立てることもできません。

雇用が不安定であるパートやアルバイトにとっては、労働条件通知書が正社員以上に重要となるのです。

理由②「会社を守るため」

労働条件通知書を交付することは、会社の負担のように感じるかもしれませんが、実は会社の利益になる面もあります。労働条件を事前に定めておくことによって、パートやアルバイトとの労働トラブルを未然に防ぐことができるからです。

たとえば、アルバイトの人から「アルバイト代を日払いで渡してほしい」と言われた場合に、労働条件通知書で月末払いと定めていれば、このような要求を拒むことができます。

また、勤務時間を守らないアルバイトがいる場合を考えてみましょう。労働条件通知書があれば、「ここに記載されている労働時間を守ってください」「守らないのであれば解雇します」と伝えることができます。

しかし、労働条件通知書が無ければ、そもそも労働時間が何時から何時までなのかが定まっていないので、労働時間を守らないことを理由に解雇することはできません。

このように、事前に労働条件を確認しておくことで、会社を守ることにつながります。

理由③「トラブルが生じたときの解決策とするため」

パートやアルバイトは雇用態様が不安定であるため、労働条件について不満がたまりやすく、会社とトラブルとなるケースが珍しくありません。

労働条件についてのトラブルが生じた場合に、労働条件通知書があれば、迅速に解決することができます。

たとえば、パートの人から「残業はしたくない」と言われた場合、労働条件通知書に残業時間や残業代がきちんと記載されていれば、「あなたが残業をする可能性があることは事前にきちんと確認しています」「残業代の計算方法も決まっているので、残業をしてくれれば残業代はきちんと払います」と、建設的な話し合いを進めることができます。

反対に、労働条件通知書が無いにも関わらず残業をさせていた場合には、パートやアルバイトの人から訴えられてしまうかもしれません。裁判となった場合に、労働条件通知書が無ければ、会社は圧倒的に不利な立場に立たされてしまいます。

労働条件についてトラブルが生じた場合に、トラブルが大きくなることを防ぐためにも、事前に労働条件通知書を交付しておくことが大切なのです。

労働条件通知書の記入例

どのような書類を渡せばいいの?

労働基準法では、正社員やパート・アルバイトに対し、下記の事項を記載すべきことを義務付けています。

  • 契約期間、契約を更新する場合の基準
  • 仕事をする場所、仕事の内容
  • 労働時間、残業の有無、休憩、休日休暇
  • 賃金
  • 退職に関する事項

さらに、パートタイム労働法では、これらに加えて、下記の事項を記載することを義務付けています。パートやアルバイトに渡す労働条件通知書には、下記の事項を必ず記載しなければいけません。

  • 昇給の有無
  • 賞与の有無
  • 退職手当の有無
  • 雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

記載すべき事項はたくさんあります。記載漏れを防ぐためにも、雛形を参考にして労働条件通知書を作成しましょう。

まとめ

労働条件通知書は、雇用の際に必ず書面で交付しなければなりません。正社員にかぎらず、アルバイトやパートなどの非正規社員にも必ず交付しなければなりません。

労働条件通知書を交付することによって、労働者が事前に労働条件を確認することができます。労働条件に関するトラブルを防ぐことができるので、労働条件通知書が会社を守ることもあります。労働条件について揉めごとが生じた場合にも、労働条件通知書があれば、迅速に解決することができます。

労働条件通知書は、会社にとっても労働者にとっても重要な書類です。雇用の際には必ず交付しておきましょう。

労働条件通知書雛形

 

[PR] Gozalを登録すれば労働条件通知書も従業員情報などを入力するだけで自動で作成されます。従業員にメールで送付することも可能なのでぜひ登録してみてください。

Gozalで簡単に労働条件通知書を作成する

Profile

田中靖子(たなかやすこ)
田中靖子(たなかやすこ)
東京大学卒業後、2009年に司法試験に合格、弁護士として会社設立や知的財産権等の会社法関連の業務を扱う。現在は海外に在住し、法律関連の記事の執筆や講演を行うなど、日常に潜む法律トラブルの情報を世界に発信している。