厚労省の標準報酬月額・事例集が改訂されました。
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
標準報酬月額は、給与計算時に社会保険額を計算するために使用します。人事労務のオペレーションでは馴染みのある単語ではないでしょうか?
この標準報酬月額の考え方を、実例をまじえて学ぶことができる標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集(厚生労働省発行)が改訂されましたので、今回はその変更点を紹介します。
短時間労働者の標準報酬月額の決定・改定について
標準報酬月額は通常、4月・5月・6月の「報酬」の平均額を、標準報酬月額等級区分と照らし合わせて算定し決定します。これを「定時決定」といいます。
パートタイマーなど短時間労働者の方の場合、次のいずれかで標準報酬月額を定時決定します。
- 4、5、6月の3ヶ月のうち支払基礎日数が17日以上の月がある場合は、17日以上ある月の報酬月額の平均により算定された額により、標準報酬月額を決定する。
- 4、5、6月の3ヶ月間のうち支払基礎日数がいずれも17日未満の場合は、その3ヶ月のうち支払基礎日数が15日以上17日未満の月の報酬月額の平均により算定された額により、標準報酬月額を決定する。
- 4、5、6月の3ヶ月間のうち支払基礎日数がいずれの月についても15日未満の場合は、従前の標準報酬月額をもって当該年度の標準報酬月額とする。
今回事例集では、標準報酬月額の算定の対象となる期間に、支払基礎日数(原則17日、短時間労働者は11日)を満たす月と満たさない月が混在する場合、どのように標準報酬月額を決定するのか。について、回答を掲載しています。
算定の対象となる期間に被保険者区分の変更があった場合は、区分の混在があっても、原則、一般の被保険者であるならば17日以上を、短時間労働者であるならば11日以上を算定の対象とし、対象となった月の平均で報酬月額を決定する。ただし、通常の労働者ではないものの、4分の3基準を満たす者(短時間就労者)については、従前のとおり、法定された支払基礎日数を満たす月がない場合、支払基礎日数が15日以上の月を算定の基礎とする。
事例集に掲載されている、その他の内容
報酬・賞与の範囲について
- 「報酬」・「賞与」にはどのようなものが含まれるか
定時決定について
- 支払基礎日数について、例えば夜勤労働者で日をまたぐ勤務を行っている場合はどのように計算すべきか。
- 給与の締め日が変更になった場合、変更月では支払基礎日数が通常の月よりも増減することになるが、定時決定の際にはどのように取り扱うべきか。
- 基本給や諸手当の支払月が変更となった結果、通常の月よりも給与額が増 減する場合があるが、定時決定の際にはどのように取り扱うべきか。
- 4~6月の3か月のうち、遡って降給が行われた結果、差額調整によって本来受けるべき報酬より低額の報酬が支払われた月がある場合、保険者算定によって定時決定を行うことはできるか。
被保険者資格取得時の標準報酬月額の決定について
- 被保険者資格を取得した際の標準報酬月額の決定について、例えば残業代が当初の見込みよりも増減した場合に、標準報酬月額の訂正を行うことができるか。
- 一つの適用事業所に勤務している被保険者が、別の適用事業所に勤務(同時に2つの事業所に勤務)することとなって新たな適用事業所において被保険者資格を取得した場合、どの時点から標準報酬月額を改定するのか。
随時改定について
- 固定的賃金の変動が発生した後、3か月以内に再度固定的賃金が変動した場合には、それぞれの固定的賃金変動を随時改定の対象とするか。
- (従業員から役員になるなど)身分変更が行われた結果、基本給が上がり(又は下がり)、(超過勤務)手当が廃止(又は新設)された場合で、各々の固定的賃金の変動が実際に支給される給与への反映月が異なる場合において、起算月はどのように取り扱うのか。
- 基本給(時間給)に変更は無いが、勤務体系(契約時間)が変更になる場合、随時改定の対象となるか。(例)基本給:1H 2,000円 → 2,000円(変更なし)/契約時間:1日 8時間 → 6.5時間(変更あり)、:1月 20日 → 20日(変更なし)
- 超過勤務手当の支給単価(支給割合)が変更された場合は、随時改定の対象となるか。
- 超過勤務手当等の非固定的手当が廃止された場合、随時改定の対象となるか。
- 固定的賃金が上昇したものの、超過勤務手当等の非固定的賃金が減額したために結果的に2等級以上報酬月額が下がった場合、随時改定の対象となるか。
- 同一月に固定的賃金の増額と減額が同時に発生した場合(手当の廃止と創設等)、増額改定と減額改定のどちらの対象となるか。
- 給与計算期間の途中で昇給した場合、どの時点を起算月として随時改定の判断を行うのか。 例:当月末締め翌月末払いの給与で、当月15日以降の給与単価が上昇した場合。
- 固定的賃金の変動の翌月に給与支払い締め日変更があった場合、随時改定はどのような取扱いとなるか。 例:9月支給分の給与から固定的賃金変動が反映されたが、10月支給の給与から、「月末締め翌月15日払い」→「15日締め翌月15日払い」に変更。 9月15日支給の給与(8/1日~8/31日分) 10月15日支給の給与(9/1日~9/15日分) 11月15日支給の給与(9/16日~10/15日分)
- 非固定的賃金が新設された月に、非固定的賃金が支払われる条件が達成されなかったために初回の支払が0円となったが、次月以降は実際に支払いが生じたような場合、起算月の取扱いはどのようになるか。
- 休職によって通常受けられる報酬よりも低額な休職給を受けることとなったが、休職中に固定的賃金の増減があった場合、随時改定の対象となるか。
- 産休又は育休取得中の無給期間において昇給等があった場合、起算月はいつになるか。
- 固定的賃金に変動が生じた月(起算月)の次月以降、随時改定の算定対象月内に、休職によって通常受けられる報酬よりも低額な休職給を受けることとなった場合、随時改定の対象となるか。
- 遡って昇給が発生した場合、保険者算定による随時改定の対象となるが、遡って降給が発生した場合も同様の取扱いが可能か。
- 基本給の減給制裁があった場合、随時改定はどのようになるか。また、同月に役職手当等の付与による固定的賃金の変動(増額)がある場合、随時改定の取扱いはどのようになるか。
- 現物給与の標準価額が告示により改正された場合は、随時改定の対象になるか。
- 自動車通勤者に対してガソリン単価を設定して通勤手当を算定している事業所において、ガソリン単価の見直しが月単位で行われ、その結果、毎月ガソリン単価を変更し通勤手当を支給している場合、固定的賃金の変動に該当するか。
- 産前・産後休業期間について、基本給等は休業前と同様に支給するが、通勤手当については支給しないこととしている。この場合は、賃金体系の変更による随時改定の対象となるか。
一時帰休における標準報酬月額の決定・改定について
- 一時帰休による休業手当等が支払われた日は、支払基礎日数に含まれるのか。
- 定時決定の算定対象月に休業手当等が支払われた月があり、標準報酬月額の決定の際に一時帰休の状態が解消していない場合、休業手当等が支払われた月のみで標準報酬月額を決定するのか。
- 定時決定の算定対象月に休業手当等が支払われた月がある場合、標準報酬月額の決定に当たって、一時帰休の状態が解消しているかどうかを判断する必要があるが、どの時点で一時帰休解消を判断することになるのか。
- どのような場合が一時帰休が解消している状態にあたるのか。
- 標準報酬月額の決定にあたって、一時帰休が解消していたために休業手当等を含まない報酬で定時決定を行ったが、その後、結果的に9月までの間に再び一時帰休の状態となって休業手当等が支給された場合、定時決定の内容を訂正することができるか。
- 標準報酬月額の決定にあたって、一時帰休が解消していなかったために休業手当等を含んだ報酬で定時決定を行ったが、その後、結果的に一時帰休が解消した場合は、どのように取り扱うべきか。
- 「9月以降において受けるべき報酬」とは、どのように算出するのか。
- 一時帰休に伴う随時改定について、1か月の全てについて休業手当等の支払を受けている場合が対象となるのか。それとも、1か月のうちの1日でも休業手当等の支払いを受けていれば対象となるのか。
- 一時帰休に伴う随時改定は、低額な休業手当等の支払いが継続して3か月を超える場合に行うこととなるが、いつの時点から3か月を起算するのか。
- 一時帰休期間中に休業手当等の支給割合が変更した場合は、随時改定の対象となるのか。
- 一時帰休期間中に休業日数が変更となった場合は、随時改定の対象となるのか。
- 「一時帰休の状況が解消したとき」とは、どのような状態をいうのか。また、どのような場合に随時改定の対象となるのか。
- 一時帰休の状況が継続している間に固定的賃金が変動した場合は、随時改定の対象となるか。
- 通常の給与で標準報酬月額の決定又は改定が行われている者について、固定的賃金の変動があった月の翌月に一時帰休による休業手当等が支払われた場合、随時改定の対象となるか。
短時間労働者の標準報酬月額の決定・改定について
- 標準報酬月額の決定・改定の算定の対象となる期間の月の途中に、被保険者の区分(短時間労働者であるかないか)の変更があった場合、当該月の支払基礎日数はどのように取り扱うのか。
出典
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