勤怠管理をチームに本格導入する方法
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
勤怠管理は労働者が一人でもいれば対応義務あり
日本の労働基準法では、勤怠管理を前提としたルールがいくつかあります。原則として1日8時間を超えて労働をさせてはならないという規定、8時間超の労働に対して1時間の休憩を与えなければならないという規定。これらのルールは勤怠管理をしていなければ、守ることはおろか、そもそも守れているのかどうかすら分かりません。
また労働基準法は、労働契約を結んだ仲間が一人でも在籍している企業はすべて遵守が求められる法律です。つまりは、国内の多くの企業は労働基準法を守る義務があり、その前提となる勤怠管理も当然に行う義務があるという関係が成り立っています。
しかし、現実的には労働基準監督署の調査結果でも明らかになっている通り、すべての企業が労働基準法を完全に順守できているとは言えない状態です。まだ勤怠管理の対応ができていない企業であれば、早く対応を進めていくことが必要です。
では勤怠管理をスタートするタイミングでどのようなことに注意していくべきなのでしょうか。今回はそのポイントを順番に整理していきたいと思います。
勤怠管理の定義を理解する
まず勤怠管理とは、正確には何を指しているのか定義から確認することが必要です。
簡単に言うと、勤怠管理とは「法律と労働契約を遵守するために、仲間の労働実態を把握し、実態に応じて管理していく行為のこと」です。今回は勤怠管理における「把握」と「管理」と言う重要な概念をご説明します。
勤怠管理における「把握」とは
勤怠管理の重要な要素である「把握」ですが、これはつまり仲間がどれくらい働いているのか、欠勤しているか、休日・休暇を取得しているかなど、仲間の働き方を明確にすることを指しています。把握することができなければ、その先の管理する機能も果たせないので、重要です。
勤怠を把握するためには、下記のステップを踏む必要があります。
1.労働契約に内容を明記して、合意をする
労働契約に、仲間の働き方について明確に記載をして、その内容を偽りなく説明した上で仲間と合意します。このステップで誤解が生まれると、後々仲間との関係性が悪化する可能性が高くなるので、しっかりと話をします。
明記すべき事項は例えば下記のようなことです。
- 業務内容は何か
- 就業場所
- 就業時間
- 休日の定義
- 取得できる休暇の定義
- 時間外労働(残業)の有無
- 深夜労働の有無
2.勤怠管理の必要性を仲間に伝える
勤怠管理は労務部門の方がいくら努力をしても、チーム全体でその必要性を理解して取り組まなければ、うまくいきません。いきなり勤怠管理の必要性を全員が理解することは難しいので、継続して取り組んでいく必要はあります。
勤怠管理の必要性
- 法律の義務であり、遵守するため
- 適切な労働実態を把握して、健康管理を行うため
- 会社の利益創出能力を把握、改善するためなど
3.勤怠の記録開始
労働契約で働き方を定義して、その契約内容通りの労働を目指し、勤怠をしっかり記録していく必要性を説明する。ここまで出来れば、勤怠情報を楽に記録していく環境を用意することが必要です。
手前味噌ながらクラウド労務管理「Gozal」ではPC、スマホで簡単に勤怠を記録することができるので、もしご興味があればお問い合わせください。
そして勤怠の記録がスタートします。
4.例外的な日の対応を共有
例えば台風で出勤困難になった日、インフルエンザで休んだ日、お子さんの熱が下がらず半日だけ休んだ日など、例外的な状況というのはいくらでも発生します。最初から全てを完全に対策しておければ一番いいですが、そういうわけにもいかない場合もあります。
発生することが予見される都度、なるべく早めに対応策を考えて、社内で展開をし続けます。
以上のステップをたどって、まずは社内に勤怠を把握する動きを構築できるように進めていきましょう。
勤怠管理における「管理」とは
勤怠の「把握」が進めば、次に勤怠の「管理」を行います。管理とは把握した勤怠データを元に、働き方を改善したり、チームを教育したり、チームを改善するための意思決定を行っていくことです。
勤怠を「管理」するために必要なステップを整理してきます。
1.勤怠データをチームで見る
従業員数が20人を超えてきたら、勤怠のチェックは労務チームではなく、各チームの上長に任せていくことが望ましいです。労務担当者だと物理的に一人一人の働き方の実態を掴むことが難しい人数に近づいているので、早めに上長に勤怠マインドを持ってもらうことが後々の規模拡大に対応出来る組織につながります。
2.上長の勤怠チェックを教育する
各部門の上長は最初はどうしても勤怠チェックが粗かったりします。その原因が重要性を理解していないのか、忙しいのかはチームによりますが、しっかりと指導をしていきます。
上長が勤怠管理が雑だと、その部署のメンバーがサービス残業をやってしまったり、休暇を取得できなかったりするリスクが増大し、組織全体のモチベーションが次第に低下していきます。また上長が時間にルーズだと、指導を受けた部下の考え方まで影響され、組織全体が時間を大切にしないカルチャーになる恐れもあります。
そのため、労務チームは上長に勤怠チェックのやり方、注意が必要な社員の見分け方などを教えていくことが大切です。
3.社員ごとの働き方を分析する
労務チームの方は最初から複雑な分析をする必要はありません。まずは残業時間が多い人・部署をピックアップして、その理由などを分析し、改善が必要かを検討するくらいでも十分です。残業が多い部署があれば、人が不足している可能性もあります。労務チームは組織全体の働き方をデータを通じて俯瞰することができる唯一の存在なので、気になる部分があれば、積極的に現場の仲間とコミュニケーションを行って、実態を把握しておきましょう。
その後慣れてくれば、欠勤・遅刻・早退が高頻度で発生している社員がいないかどうかをチェックしましょう。注意深く解析を続けていると、休職・退職リスクを見極める目を養うことも可能です。
労務データの分析は他にもいろいろな切り口で行うことができるので、組織のために常にデータを眺めていくことが必要です。
4. 分析結果から行動を起こす
例えば実態調査などの結果、人員不足が明らかな部署があれば採用計画を前倒しにするなどの行動を実行することができます。欠勤・早退・遅刻が増えている社員がいれば、上長と1on1を早めに設定してあげて、不満や悩みなどを解消するためにできることを行います。
勤怠の入力が粗い社員がいれば、重要性やチームに迷惑がかかることを伝えて改善を促します。
データに基づいて組織を改善する意思決定を展開していきます。まずは以上のようなステップを踏んで、勤怠を管理していく仕組みを作っていきます。
勤怠概念の導入についてまとめ
勤怠管理は、勤怠を把握すること、そして把握した勤怠をもとに管理を行うことです。そしてそれをチームとして対応します。常にチームがより良い働き方になるように分析・改善を行っていくことができます。
勤怠データを通じて、どんどん良いチームになる。労務担当者のやりがいはそういう部分にもあるなと日々思います。
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