固定残業代制度はスタートアップで導入できるか(第1回/全2回)
執筆: 有馬美帆 | |
【連載企画】として「スタートアップの労働法」をテーマに、社労士シグナルの有馬美帆さん(特定社会保険労務士)にお話を伺いました。今回は、IT系のスタートアップでもよく使われている「固定残業代制度」(全2回)についてお送りいたします。
第1回目の今回は、制度を活用する理由と導入によって得られる効果についてです。
スタートアップが固定残業代制度を活用する理由
Q|固定残業代制度を導入するスタートアップは多いと思います。どのような理由で導入が増えているのでしょうか?
スタートアップで固定残業代制度を導入している企業はとても多いですね。体感として6割強ほどで導入していると思います。一番よくある導入理由としては、採用時に月給を高額にみせることができるという点だと思います。
Q|他に固定残業代制度を導入する理由としてどんなことが考えられるのでしょうか?
人件費予算が立てやすいために導入しているケースもあります。
固定残業代制度によって得られる効果
Q|固定残業代制度を導入することで実現できるメリットは何でしょうか?
固定残業代制度を活用することによる企業のメリットは大きく分けて4つあります。
①みかけ上高額に見せることができる
②割増賃金の肥大化の抑制
③給与計算時の工数削減
④残業単価が割安
①みかけ上高額にみせることができる
例えば、同じ30万円であっても、基本給30万円と基本給25万円+固定残業手当5万円の合計30万円では、後者の方が企業のメリットは大きいです。
②割増賃金の肥大化の抑制
毎月一定の残業時間までは賃金額が変動することがないため、割増賃金が予想以上に大きくなるリスクが減少します。
③給与計算時の工数削減
一定の残業時間分は給与計算上で考慮する必要がなく、時間外労働の割増賃金計算が楽になります。
④残業単価が割安
時給単価を割安にすることができるためで、以下の表の通りです。
この「1ヶ月の賃金」に固定残業代の金額は含まれないので、基本給250,000円・固定残業代50,000円の場合と、基本給300,000円の場合では、後者の方が時給が大きくなりますので、比較して残業代が大きくなります。
このような場合には、総額30万円でも固定残業代制度を導入した方が残業単価が割安になるということですね。
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