労働保険事務組合と社労士事務所の違いとは?|特定社会保険労務士・山本多聞

執筆: 山本多聞

労働保険組合と社労士事務所の違い

労働保険事務組合は、中小企業の味方だ。そう聞いたことがあるけれど、実際のところ労働保険事務組合を利用するメリットは何なのか?顧問社労士に頼んでいる業務とバッティングするのではないか?
 

労働保険事務組合に勤務経験のある、特定社会保険労務士・山本多聞さんに、労働保険事務組合と社会保険労務士事務所の違いを伺ってきました。
 

労働保険事務組合の概要

ー労働保険事務組合って、何ですか?
 

一般にあまり知られていませんが、労働保険事務組合は、中小企業の労働保険料の申告、納付などに関する事務処理を事業主に代わって行う団体です。
 

労働保険の保険料の徴収等に関する法律により厚生労働大臣の認可を受けており、一定の事務処理能力や財政の要件をクリアしたうえで運営されているものです。
 

労働保険事務組合の多くは、商工会や青色申告会などの事業主団体がサービスの一環として運営するものと、社労士事務所に併設され労働保険事務に関する部分の処理を担当するもののいずれかに分類されます。

経営者も労災保険に加入することができる

ー労働保険事務組合の最大のメリットは何ですか?
 

労働保険事務組合を利用する最大のメリットとして、労災保険特別加入があげられます。
 

労災保険は労働者が仕事中にケガや病気となってしまった場合に会社に代わって補償するための保険ですが、経営者や親族は労働者でないため、一緒に仕事をしたとしても加入することができません。
 

労働保険事務組合を利用すると労災保険の例外として経営者や家族も加入でき、仕事中のケガや病気の補償を受けられるようになります。これを「中小事業主の労災保険特別加入」といいます。
 

とくに建設業などでは経営者や親族も現場に出ることも多いので、労災保険特別加入を行っておくと万が一の際にも安心です。

労働保険料を分納することができる

ー労働保険事務組合に加入する、その他のメリットは何ですか?
 

労働保険事務組合を利用する、その他のメリットとして労働保険料の分納があげられます。
 

労働保険料は通常、年間の保険料が40万円以上(建設業などでは各保険関係ごとに20万円以上)で3回に分けての分納が認められますが、労働保険事務組合を利用すると、労働保険料の金額にかかわらず分納が認められるようになります。

労働保険事務組合の利用には条件がある

ーどうすれば、労働保険事務組合に加入できますか?
 

労働保険事務組合制度は事務処理能力に乏しい中小零細企業の労働保険事務手続きをサポートするための制度です。利用できる事業主の規模に一定の制限が設けられています。
 

制限される基準は企業全体の労働者数で、金融業、保険業、不動産業、小売業は常時50人以下、卸売業、サービス業は常時100人以下、その他の業種は常時300人以下となります。
 

また、地域に関する制約があり、委託できるのは労働保険事務組合の所在する都道府県か、隣接する都道府県に主たる事業所がある事業主とされます。
 

加入ができるかや会費などの詳細についてはご関心をお持ちの労働保険事務組合にお尋ねください。
 

労働保険事務委託書という書類を提出すれば、晴れて労働保険事務組合に加入できます。

労災請求手続きや社会保険手続き等は、社労士事務所の独占業務です

ー労働保険事務組合と社労士事務所のサービスの違いを教えてください。
 

労働保険事務組合のサービスは組合によって若干違いがありますが、必ず行われているのが、年1回会社が行う労働保険料の申告および納付の手続き(労働保険年度更新)や従業員の入退社に関する雇用保険手続きなどを労働保険事務組合とのやり取りでワンストップで行うことができるというものです。
 

これ以外の、たとえば労災事故が発生した際の労災請求手続きや、従業員の入退社に関する社会保険手続きなどは労働保険事務組合で行うことはできず、委託しようとする場合は社労士事務所で行うこととなります。

まとめ

イメージとしては労働保険事務組合が乗り合いバス、社労士事務所がタクシーといったところでしょうか。
 

サービスの幅が広く自社にあわせて融通をきかせてくれるのは社労士事務所ですが、労働保険事務組合の方が一般的に費用が安く抑えられ、労災保険特別加入など独自のメリットもあります。
 

社労士事務所のサービスを利用しながら労働保険事務組合を利用したいというリクエストも多く、私が代表を務める東京人事労務ファクトリーでは「東京SR経営労務センター」という社労士が共同で運営する労働保険事務組合を利用しています。労働保険事務組合のご利用をお考えであれば、当事務所までお気軽にご相談ください。
 

労働保険事務組合 社労士事務所
メリット 費用が安い
労災保険特別加入を利用できる
労働保険料の分納を利用できる
サービスは事務所ごとの契約で自由に決められる
デメリット サービスが労働保険、雇用保険に関連したものに限定される
企業規模や地域に制約がある
それなりの費用である

山本多聞氏が代表を務める「東京人事労務ファクトリー」の連絡先

  • 事務所名:東京人事労務ファクトリー
  • 住所:東京都渋谷区渋谷3-13-5 BPRレジデンス渋谷1002
  • 業務対応可能エリア:東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県(電話、メール等による相談については全国対応)
  • 営業時間:9:00~18:00
  • 電話番号:03-5778-9817
  • 問合せメールアドレス:info@jinjiroum.com
  • Webサイト:http://www.jinjiroum.com/

 

関連する記事

Profile

山本多聞
山本多聞
1978年生まれ。特定社会保険労務士、RSTトレーナー(建設)。 22歳で大学を卒業後、銀座にある労働保険事務組合に入社。 社長や人事の方々から労務に関する相談をいただくとともに、労働基準監督署や公共職業安定所といった行政機関への手続きなどを手掛ける。その後、クライアントごとの柔軟な対応や個性のある提案など自分ならではの仕事がしたいとの思いから、24歳の時に個人事務所「東京人事労務ファクトリー」を立ち上げ。 以来、ベンチャー企業を中心に年間数十社の労働社会保険手続きや労務問題の解決、サポートを実施。 1名~50名程の企業規模が多い一方、数年前よりマザーズ上場企業(従業員450名ほど)の規程整備や職長教育講師なども手掛ける。