「法人番号」スタートから1年半経過。何がどう変わったのか?
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
いよいよ英語表記での検索・公開がはじまった、法人番号。ご存知の通り、国税庁が法人に付与する13桁の番号(数字)です。企業の不正を見逃さない、管理強化のための番号というイメージが強いかもしれませんが、「国税庁」などの国家機関や、神社仏閣などにも付与されています。例えば「法隆寺」も法人番号を持っています。
この法人番号、2015年10月から各法人に通知が開始され、2017年4月でちょうど1年半になります。
「バックオフィスの基礎知識」を運営する株式会社BECは、「法人番号システム Web-API」の公開後すみやかに法人番号検索サイト「Gozal会社ナビ」を開始し、約20万人以上の利用者に毎月利用いただいています。
法人番号の凄さを日々感じている身として、ここで改めて法人番号の「今」を考察します。
当初の狙い、導入理由
国税庁によると、法人番号の導入理由は「行政の効率化、公平性・公正性の向上、企業の事務負担軽減、新たな価値の創出」を狙ったものとし、3つのメリットが説明されています。
1. 法人の名称・所在地がわかる
- 法人番号をキーにして、法人名・所在地等をカンタンに(インターネット等で)確認できる
- 登記変更情報も素早く更新されるため、法人の保有する取引先情報の登録・更新業務が効率的になる
2. 法人がつながる
- 複数部署やグループ各社が異なるコードで管理している取引先情報を法人番号でまとめることで、情報集約や名寄せを効率的に行うことができる
- 複数の行政機関が、法人番号付で企業情報を授受することで、法人の特定や名寄せ、紐付け作業を効率的に行うことができる
3. 新たなサービスがひろがる
- 民間において、法人番号を活用して企業情報を共有する基盤が整備される。企業間取引における添付書類の削減等の事務効率化が期待されるほか、国民に対しても有用な企業情報の提供が可能となる
- 行政機関間での法人番号を活用した情報連携が図られ、行政手続における届出・申請等のワンストップ化が実現。法人(企業)側の負担が軽減する
現在の状況
さて。それでは現在、法人番号によって業務の負担が減り、効率化され、新たな価値が産まれているのでしょうか?確認しましょう。
管理部門の手間は増えた
企業の管理部門の手間は確実に増えました。たとえば「電子申告・納税など開始(変更等)届出書」にも、法人番号を記載する欄が追加されています。
※法人番号を記載する書類については「法人番号(法人版マイナンバー)を記載する書類まとめ」で詳しく説明しています。
法人番号で「法人の名称・所在地がわかる」ようになった
国税庁の法人番号検索サイトだけでなく、「Gozal会社ナビ」など民間のサービスも登場。企業情報をインターネットで簡単に検索できる環境が整ってきています。
国税庁サイトの利用者数はわかりませんが、Gozal会社ナビの月間ユニークユーザは20万人を超えています。このことからも、法人番号が公開され、法人の名称・所在地がわかりやすくなったと考えて間違い無いでしょう。
法人番号を軸に、法人がつながり、新たなサービスがひろがった?
取引先情報管理の効率化について。名寄せ等で有効活用されることが期待されていますが、この部分で法人番号が活用されるのは、まだまだ時間がかかると考えられます。
その要因として、そもそも中小企業はそれほど膨大な取引先情報を持っていないので、法人番号により効率化する対象が無い。一方で大企業には、膨大な取引先情報があり、効率化すべきなのだけれど、システム改修する場合には、現システムの減価償却等スケジュールと調整が必要で、すぐに対応することが困難であるためです。
行政機関も、大企業と同じ課題を抱えているので、対応には時間がかかります。時間はかかりますが、業務効率化を実現するために、法人番号による管理を着実に進めていくと考えられます。
2016年4月20日の日経新聞朝刊の一面に『同じ書類、提出1回 行政手続き簡素化 規制改革会議案』という記事がありましたので、引用掲載します。
政府の規制改革推進会議(議長・大田弘子政策研究大学院大教授)は3年後をめどに、企業が許認可を得る際などに必要になる財務諸表などの提出を同じ書類であれば1回で済むようにする。近く行政手続きの簡素化の改革案を公表する。電子化を進めるほか、省庁横断で情報を集める企業データベースをつくり、行政手続きコストを従来より2割減らす。
(中略) 政府が導入準備を進める、企業情報を法人番号で一括検索できるシステム「法人インフォメーション」を活用する。財務諸表など省庁横断で保有すべき情報を登録。手続きの際に必要なデータを同システムから入手し企業の手間を省く。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS22H3J_S7A320C1PP8000/
バックオフィスの効率化を推進する弊社としても、上記のような流れを歓迎します。「法人番号(国税庁)」と「会社法人等番号(法務省)」の統合など、まだ調整が必要ですが、全省庁一体となって業務効率化に邁進していただきたいと願っています。
参考)『Q3 会社法人等番号と法人番号とは,どう違うのですか。
商業登記法に根拠を有する会社法人等番号(12桁)と、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に根拠を有する法人番号(13桁)は別物である。
前者は法務省の所管であり、後者は国税庁の所管である。
もっとも、会社法人等番号を有する法人の法人番号は、会社法人等番号12桁の先頭(左側)に、12桁から計算される1桁のチェックディジットを置いたものになっている。
会社法人等番号も法人番号も、ある種の法人には付与されない一方、法人格を有しない一部の対象に対しても付与されるという特徴がある。ただし、会社法人等番号の付与対象と法人番号の付与対象との間にはずれがある。
※引用:http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00237.html#a03
ネット上で、参照情報として使われはじめた
TwitterなどのSNSでは、法人(企業)の存在を証明・説明するために、法人番号を利用するケースが散見されます。
もっと疑うと 株式会社と名乗ってても登記してない場合もあるから
国税庁のHPで法人番号とか調べたほうがいいわ
もし登記無しなら法人法違反で告発してやればいいよ— Reonald (@recording69) 2017年4月2日
このような、企業の存在を証明・説明する使い方は、便利な反面、注意も必要です。
国税庁は「法人番号は、実在証明を保証していない」と言っています。
法人番号は、特定の法人や団体を識別する機能を活用し、行政の効率化や企業の事務負担の軽減を図ることを目的として、登記や税務上の届出等に基づき指定されるものであり、必ずしも法人等が実在することを証明するものではありません。
また、同じ法人番号が指定された法人等がすべて一の法人等であることを証明するものでもありません。(参考)
例えば、1解散した法人であっても登記記録が閉鎖されていない限り、法人番号が指定されます。また、2所在地を移転しても所在地変更の手続をしていなければ変更前の所在地で公表されます。
したがって、法人や団体の実在性や同じ法人番号が指定された法人等の独立性については、法人番号の有無にかかわらず、それぞれ当該法人等の存立の根拠となる法令(会社法、公益法人認定法、一般社団・財団法人法、特定非営利活動促進法、宗教法人法、私立学校法、健康保険法、国民年金法など)などに基づき判断されることから、登記事項証明書や定款、規則等を別途確認する必要があります。
まとめ
法人番号公開から、2017年4月でちょうど1年半です。英語での情報公開も開始され、国際的な連動も期待されています。
法人の名称・所在地を確認するために、インターネットで法人番号検索サイトを利用するユーザは確実に増えている一方、大企業や、行政機関でのシステム連携は、期待されるほど進んでいません。
少子高齢化で、労働者人口の減少が予測される環境下、官民一体となって法人番号を軸に業務効率化することが必要です。行政機関には、古くからある縦割りルールを無視して法人番号を推進することが期待されています。
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