業績不振を理由とした賃金カットの減額率は10%が上限?
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
業績が伸びていない場合に倒産リスクを下げるためには、従業員の賃金を減額も検討する必要があるかもしれません。従業員の賃金をカットするなど、かなり苦しい判断と言えますが、経営者は時として決断を迫られます。その際に労働基準法を理解して、適切な対応を行うことは重要でしょう。
賃金減額の合理的な理由をきちんと説明すること
賃金カットなどの労働条件の切り下げを行う場合、一方的に条件変更を行うことはできません。労働条件が不利になる従業員全員から個別の同意を取得することが原則ルールです。そのためにも、まず最初に業績不振による自社の状況を説明し、今後の再建計画も共有した上で、賃金の減額の合理的な理由があることを理解してもらいましょう。
賃金減額時に注意すべき法的要素
労働条件を変更する際には、幾つかの法的要素に注意して変更を進める必要があります。まず、変更後の条件が労働基準法などの強硬法規に違反しないこと、また就業規則・労働協約の定めよりも労働者に不利益な労働条件を定めないことが必要です。
そして労働者の同意が必要です。過去の裁判例でもこの同意を取得しているかどうかが争点になっているケースがありますので、書面などで同意を取得し、書類を保管しておきましょう。
また賃金カットにおいて、労働者によって条件を変えるなど、合理性のない不平等な条件に変更をすることなども認められませんので、注意しましょう。
賃金減額対象を上層部を重点的に行うことも合理的
上層部のメンバーの方が、一般的には賃金・報酬を多く支給していることが多いですので、報酬の減額により会社負担を大きく下げることができます。また経営の失敗についてより責任を負うべき存在でもあるため、会社全体から理解してもらえる可能性が高まります。
上層部は8%の報酬減額を行い、従業員は賃金の5%をカットするなど、傾斜をつけて減額を行うなども有効とされています。
賃金カットの上限は10%
賃金のカット上限に関する規定は実はありません。ただし、労働基準法の第91条に減給の制裁の規定があり、その内容を元に考えることが一般的です。
労働基準法 第91条(制裁規定の制限) 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。 |
以上の条文より減額率は10%程度に留めておくことを考慮する方が望ましいでしょう。
業績不振による賃金カットのまとめ
ここまで述べてきたように、実際に賃金カットを行う際には、賃金カットを行うことに合理的な理由があり、その理由を丁寧に従業員に説明していくことが大切です。会社の存続の危機を一致団結して乗り越えることができれば、その後の会社にも未来が開けていくでしょう。個別に同意を取り、契約条件を切り下げていくことになりますが、賃金の減額率は大きくても10%程度に留めておくことも考慮しておくべきでしょう。
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