従業員退職時の最後の給与計算の注意点と具体例

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部

従業員退職時の、最後の給与計算はどのように扱ったらいいのでしょうか。特に気を付けなければならないのが社会保険料の控除と住民税の取り扱いです。従業員退職時の、最後の給与計算について、具体例を交えて解説していきます。

社会保険料の控除方法

社会保険料の控除は、会社が社会保険料の控除を「翌月控除」、「当月控除」のどちらの方法で行っているのかを確認する必要があります。

翌月控除とは

「翌月控除」とはその月に支払う給与から前月分の社会保険料を控除する方法です。

例えば9月30日締め、10月25日支払いの会社では、10月25日に支払う給料から9月分の社会保険料を控除します。

当月控除とは

「当月控除」とは、その月に支払う給料から当月分の社会保険料を控除する方法です。例えば9月30日締め、10月25日支払いの会社では、10月25日に支払う給料から10月分の社会保険料を控除します。

したがって、末締翌月25日払いで、10月1日から20日前後で退職した場合、「翌月控除」の場合、最後の給与が11月25日になりますが、10月分の保険料は、11月25日の給料から差し引かれます。

これが、「当月控除」の場合、10月分の保険料は、10月25日の給料で差しかれており、最後の給与の11月25日からは社会保険は差し引かれないことになります。

原則は翌月控除

通常、社会保険では、毎月の保険料は、前月分の保険料を給与から控除することになっています。したがって、

「翌月控除」が本来取るべき原則の方法です。なぜなら、健康保険法167条に以下の規定があるからです。

第百六十七条  事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所に使用されなくなった場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる。

引用元:健康保険法

厚生年金保険法84条にも同じ規定があります。

しかし、罰則規定はなく、実際は、「当月控除」の方法を採用している会社もあるので、確認する必要があります。

退職の処理について

そして、退職日の問題です。
例えば、9月29日退職者と9月30日の退職者の場合では、社会保険料の金額の1ヶ月の差が生じてきます。社会保険料は、その資格を喪失した日の属する月の前月分まで徴収します。社会保険では、退職日ではなく、資格を喪失した日は退職日の翌日になるので、注意が必要です。

例えば、9月29日の退職者の場合、翌日の9月30日が資格喪失日になり、資格喪失の属する9月の前月の8月分まで保険料がかかることになります。

9月30日の退職の場合、翌日に10月1日が資格喪失日になり、資格喪失の属する10月の前月の9月分まで保険料がかかることになります。

したがって、退職日が1日違いであっても、社会保険の計算単位は1ヶ月になるため、保険料が1ヶ月分違ってくるので、注意しましょう。

「翌月控除」と「当月控除」はやや難しいところですが、社会保険料の徴収にかかわるので、よく確認するようにしましょう。

住民税の控除

住民税は源泉所得税の場合と徴収の考えかたが異なります。源泉所得税は、毎月の給与をもとに見込みで、所得税額を源泉徴収しています。

しかし、住民税の場合は、給与から引き落としする特別徴収の場合、前年の給与をもとに住民税を算定し、その金額を毎月の給与から差し引きしています。

したがって、退職者の給与に対する住民税の扱いは気を付ける必要があります。

住民税の計算期間は、6月から翌年の5月までの期間を1年として、考えています。したがって、例えば平成28年の3月に退職した場合、3月分までの給与から住民税は差し引かれているので、問題はないです。ただし、平成28年4月分と5月分の2ヶ月分に関しては、原則会社でまとめて引き落として、一括徴収します。徴収しない場合は、自分で納付してもらう形になります。

アルバイトの退職時の給与

アルバイトの場合、短期労働のため、急に退職するケースが多いです。ここで気を付けたいのが、従業員の希望に応じて、退職後の7日以内に賃金を支払うケースが出てくることです。労働基準法では、以下のように定めています。

労働基準法第23条

「労働者の死亡又は退職の場合に、権利者から請求があったときには、7日以内に、賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称にかかわらず労働者の権利に属する金品を返還しなければなりません。」

引用元:労働基準法

例えば、末締め翌月25日払いで、10月20日で退職したような場合、通常であれば、最後の給与日は11月25日になりますが、10月27日に支払うように従業員から請求される可能性があります。

この場合、前述した社会保険もこの10月27日の給料日に10月分の社会保険料を差し引きします。結果的に10月分の給料からは、9月分と10月分の2ヶ月分の社会保険料が差し引かれることになります。

まとめ

従業員退職時の、最後の給与計算は意外にややこしいです。給与の締日と支払日は会社ごとに異なり、従業業員の退職のタイミングも当然、異なるからです。まずは、社会保険ですが、会社が「翌月控除」か「当月控除」のどちらを採用しているかをよく確認するようにしましょう。そして、資格喪失した日は退職日の翌日になることです。退職日のタイミングで社会保険料が1ヶ月違ってくる可能性もあります。

さらに、住民税です。住民税は給与から天引きする特別徴収の場合に問題となります。住民税の計算期間は、6月から翌年の5月までの期間を1年であり、退職のタイミングで5月分までを徴収する必要があります。

従業員にとっては、最後の給与で社会保険と住民税が多く引かれて、手取が大きく減少する可能性もありますが、きちんと処理を行うようにしましょう。

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『人事労務の基礎知識』編集部
『人事労務の基礎知識』編集部
株式会社BEC内で、Gozal(ゴザル)の編集制作を担当する部門です。社会保険労務士/弁護士/税理士などの専門家執筆陣とともに、中小企業の労務・給与計算担当の方が実務上感じる不安を払拭できるよう、情報発信しています。「こんな記事を読みたい!」とTwitterやFacebookでメッセージいただければ、可能な限り執筆いたします。