会社として副業を認めるべきか禁止するべきか
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
副業というと、昔はどこの会社も禁止しているのが一般的でした。しかし、今は大きな企業で副業を認め出しているということも聞きます。
実際のところ、副業を認めるメリットはどこにあるのか? 自社はどうしたらいいのか?など迷っている代表者、人事担当者も多いのではないでしょうか。
ここでは、そんな副業を認めるべきなのか、それとも禁止するべきなのかを解説します。
副業と複業について
皆さんは「複業」が何かご存知でしょうか。副業と同じじゃないの?と思う人も多いでしょう。副業と複業、似ているようで違います。ここでは2つの違いを見ていきましょう。
副業とは
副業とは、主となる仕事のかたわらで行っている仕事です。いわゆるサイドビジネスといわれるもので、本業に対し仕事にかける時間や、そこから得る収入が少ないのが副業です。
本業にあまり影響が出ないように、主に勤務時間後や休日に行います。FXや株などの投資や、アフリエイトなども副業に当たります。主に今の給料に満足していない、あるいは新しいことにチャレンジして自分を成長させたいと思う人が取り組んでいるようです。
複業とは
複業とは、簡単にいうと本業が複数あるイメージです。それぞれの仕事で時間的に同じぐらいの比重をかけ、収入も同じような金額を得ます。
不景気や不祥事、震災などの災害で企業の倒産が増えたことにより、複数の本業を持ってそのリスクを回避しようという動きが高くなり、すこしずつ増えてきた仕事のスタイルです。
複業をしたいとまで思っている人は少ないですが、副業をしたいと思っている人は多いのが実情です。
会社として副業をどう考えたらいいか
このような世の中の動きから、会社の中に副業をしたいと思っている従業員は少なからずいるはずです。では、会社として副業をどう考えたらよいのでしょうか。
副業を禁止する企業と容認する企業の考えの違いを見てみましょう。
副業を禁止する企業の考え
[speech_bubble type=”think” subtype=”L1″ name=””] 副業が本業に差し障るのではないか ?[/speech_bubble]副業を禁止する企業の多くは、こう考えています。
具体的には、勤務時間後に副業の予定があるので残業ができない、あるいは、例えばFXや株の動向のような副業に気を取られ、勤務時間中でも本業に集中できなくなるのではないかといった懸念です。
副業を容認する企業の考え
[speech_bubble type=”think” subtype=”L1″ icon=”2.jpg” name=””] 他の仕事をすることで広い視野を持つことができ、自主的に行動できるようになるなど従業員の成長につながる。それを自社に生かしてくれることで、会社の成長につながる!! [/speech_bubble]副業を容認する企業の多くは、こう考えています。
では、どちらが正しいのでしょうか。これはその企業の規模や事業内容によって一長一短があり、一概にどちらが正しいとは言えません。
先ほども少し触れましたが、従業員が副業をする主な理由は、金銭的な事情や自分の成長のためです。
副業を禁止する会社の場合、金銭的な理由で従業員が副業したいのであれば、副業を禁止するだけではなく、給与体系の見直しをする必要があるでしょう。勤務中に仕事に集中できないのは、そもそも副業するしない以前の問題です。
副業を容認する企業の場合、突発的な仕事などで残業が発生したときなどの対処方法を考えなければなりません。
大企業のように誰かが抜けた穴を他の人でカバーできればよいですが、日本の企業の大部分はそうではありません。常に仕事に追われている企業も多く、そもそも副業する時間がないでしょう。
副業を認めるかどうか迷っている場合は、従業員と話し合いを持ち、自社の状況と照らし合わせながら慎重に決める必要があるでしょう。
就業規則はどうすればよいか
慎重に決めた結果、副業を禁止することになった場合は、就業規則にその旨を記載しなければなりません。就業規則には通常、会社に不利益になることを禁止する条項が記載されていますが、副業自体はそれに当たらないため、別途記載が必要です。
就業規則に記載する文言は「禁止」と書かずに、「会社の許可なく他の業に従事してはならない」というように記載するのが一般的です。そのあとに「許可なく他の業に従事した場合は○○する」といった罰則規定を記載します。
ただし、同業他社に情報を漏えいした、あるいは仕事中に副業したなどの理由がなければ罰則規定は行使できないという考え方が一般的ですので、罰則規定を行使するときは注意しましょう。
まとめ
ご覧いただいたとおり、副業をすることで従業員が成長し、それが会社の成長につながるという考えのもと、副業を認める企業が増えてきています。
一方で、本業に差しさわりがあってはいけないという理由から副業を禁止している会社がまだまだ多いのも事実です。
どちらが正しいとは一概に言えるものではありません。それぞれにメリットやデメリットがあります。重要なことは従業員の意見をきちんと聞き、その意見と会社の実情を照らし合わせながら慎重に決めていくということです。
もし副業が禁止となった場合は、就業規則に記載が必要です。記載がないと副業できるとみなされるので注意しましょう。
副業に対する考え方が昔とは異なってきているのは事実です。政府の方針などにより大きく流れが変わる場合もあるかもしれません。わが社は絶対容認、あるいは禁止ではなく、他社の動向や世情などを注意深く見ながら、柔軟に対応していきましょう。
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