遅刻した従業員の賃金って減らしても大丈夫?給与控除する際の注意点とは
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
「遅刻した従業員の給料を減らすことは問題がないのか」
中小企業の人事給与担当として働かれている方は、一度はこのような問い合わせを労働者から受けたこと、もしくはご自身でお考えになったことがあると思います。毎月の給与はその人やそのご家族にとって非常に大切なものです。
ここでは、遅刻による賃金控除についてご説明していきます。
遅刻した分の給与控除
結論から申し上げますと、「遅刻した分について給与を控除することは可能」です。
「ノーワークノーペイの原則」という考えをご存知でしょうか。
「働いていない分については、賃金の支払いは必要がない。」という意味です。日本の労働法は、このノーワークノーペイの原則に基づいています。したがって、遅刻や早退などの欠勤がある場合には、その時間については給与を支払う必要はなく、給与から欠勤時間分の給与を控除することができます。
月給制の場合、給与控除をするために1時間あたりの単価を出さなければなりません。多くの場合は、月給を年間平均の1ヶ月の所定労働時間数で割った額を単価とします。ここで割られる数である「月給」には、通勤手当や家族扶養手当などその業務に関係のない手当ては含みません。そのようにして算出された単価をもとに、遅刻などをした時間に合わせて控除額を計算していきます。
給与控除の際の注意点
ここで注意していただきたいのは、「欠勤時間分以上の給与」を控除することはできないということです。つまり、10分遅刻した労働者の給与から、給与計算の都合などから1時間分を控除することは法律違反です。働いた分は賃金を支払わなければなりません。
(実際に遅刻等をした時間以上に相当する額を控除する場合には、下記制裁としての給与控除でご説明します。)
さらに、給与控除を行うためには、就業規則などに「遅刻・早退・欠勤分はその時間相当分を控除しますよ」という内容を定めておく必要があります。
制裁としての給与控除
なんだか仰々しい言い方になってしまいますが、遅刻等をした場合、制裁として給与控除することがあります。
具体的にどのようなことかといいますと、
「5分遅刻した場合は10分の給与控除をする」
「25分遅刻した場合は30分の給与控除をする」
などというように実際に遅刻した時間よりも多い時間に相当する給与を控除の方法です。
これは遅刻等の実態に合わせて給与を控除するのではなく、制裁(罰、懲戒)としての減給にあたります。そのような対応をとる場合には、その旨を就業規則などに定めて周知しておく必要があります。
制裁として減給する額は労働基準法で限度が定められています。
限度は、「1回に減給できる額はその労働者の平均賃金の1日分の半額まで」であり、かつ「1賃金支払期*に支払う賃金総額の10分の1まで」とされています。後者の要件は、1月に複数回の減給の事由に相当してしまった場合に気をつけることとなります。
たとえば、1日の平均賃金が10,000円である労働者では、1回に5,000円までの減給の制裁を行うことが可能です。また、その月に減給がなければ200,000円を支払う予定であったのならば、その額の10分の1である合計20,000円までを減給することができます。
つまり、「遅刻をしたら1回につき1日の平均賃金の半額(ここでは5,000円)減給」としている場合には、1月に4回の遅刻に対する20,000円の減給を行うことができます。その月にもし5回遅刻をして25,000円を減給すべき場合については、20,000円をその月に減給し、残り5,000円は次回給与で減給を持ち越すことができます。この減給の制裁の限度は、遅刻、早退、欠勤以外の他の事由に対して減給を定める場合も同じように守らなければなりません。
*…1賃金支払期とは、毎月25日締め当月末支払いなど月払い等の賃金を支払う周期のことです。
まとめ
遅刻をした従業員の給与から、遅刻をした時間に相当する額を控除することは可能です。10分遅刻したのであれば、10分の賃金は支払う必要はありませんし、労働者もその10分についての賃金請求権はありません。ただし、遅刻などがあった場合には給与を控除する旨を就業規則などに記載しておく必要があります。
また、遅刻をした時間に相当する額以上を控除することもできます。それは、制裁としての対応になります。制裁として減給する場合、「1回に減給できる額はその労働者の平均賃金の1日分の半額まで」であり、かつ「1賃金支払期*に支払う賃金総額の10分の1まで」と限度が決められています。
このような制裁としての対応をとる場合にも、就業規則などに明記しておく必要があります。
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