事実婚をした場合、配偶者は社会保険の被扶養者になることはできるのか?

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

婚姻届は提出していないけれど、外見上全く夫婦と同じ生活をされている夫婦が増えてきていますね。働いている女性が結婚前の氏(姓)の変更したくない場合や、そもそも仕事等に関係なく夫婦別姓を希望される場合、前の配偶者との子供への影響等を考えて入籍されない場合、熟年なので入籍は躊躇している場合など、理由はそれぞれですね。

入籍をしていないだけで、それ以外は入籍をしている夫婦と同じ連帯感と責任、義務感をもって生活している事実婚のご夫婦の場合、社会的な保障は全くないのでしょうか。周りの人に相談するのも、なかなか難しいですよね。今回は事実婚の方の社会保険についてご説明いたします。

事実婚をした場合、配偶者は被扶養者になることができるか

近年増加傾向にある事実婚ですが、同棲とはどこが違うのでしょうか。
事実婚ではお互いが結婚の意思を持っていることや、同居、協力、扶助義務、貞操義務、婚姻費用分担義務など、法律上の夫婦と同じ義務を負うことになります。

恋人同士が取り敢えず一緒にいたいという理由で、同じ所に住んでいる状態とは異なるということですね。
事実婚と認定された配偶者は収入要件を満たせば法律上の配偶者と同様、健康保険や年金(第3号被保険者)について被扶養者となることができるのです。

では、事実婚の状態であると、他の人に認めてもらうにはどのような状態であれば良いのでしょうか。
また、事実婚の配偶者の被扶養手続きは法律上の入籍をしている配偶者とは異なります。どのような添付書類が必要となるのか見ていきましょう。

社会保険の被扶養者となる際の必要書類

法律上の配偶者の場合は、年間の収入が130万円未満を満たしていることが確認できる書類のみ(事業主が証明した場合は書類の添付は不要)で手続きできますが、事実婚の配偶者の場合は収入を確認する書類の他に、事実婚を確認するための書類として夫婦それぞれの戸籍住民票が必要となります。

社会保険の被扶養となる事実婚の状態とは

社会保険の被扶養者の届の添付書類では何をもとに事実婚の確認しているのでしょうか。
まずは同居していることの確認です。例外もありますが、事実婚の認定において同居は重要な項目となります。

同居においての世帯主は、お互いが世帯主になる世帯を分離する方法と同一世帯として届け出する方法の2種類の方法があります。

同一世帯として届ける場合、続柄は「同居人」か「妻(未届)」で記入します。お互い依存がないようでしたら、「妻(未届)」の方が、より夫婦の印象を与えることができそうですね。
現在は同居していないけれど以前は同居していた場合など、今もお財布は一緒でいわゆる単身赴任状態である場合に事実婚として認定してもらう時は、さらに確認書類が増えると考えられます。結婚式を挙げていればその時の写真や、民生委員さんの証明、お財布が同じであることの証明など、とりあえず二人が事実婚であることが分かる書類を提出してみましょう。

所得税法上の取扱いについて

このように社会保険において事実婚の配偶者は被扶養者として認定され、法律上の夫婦と同様の保障を受けることができるので、事実婚でも法律上の婚姻も同じと思われがちですが、異なる部分もあります。それが、税法上の扱いです。年末調整などで、配偶者控除という言葉を聞くことがあると思いますが、事実婚の配偶者はこの控除対象配偶者としては扱われませんので注意が必要です。

事実婚の夫婦に子供がいる場合は?

事実婚の夫婦の間に生まれた子は、そのままでは未婚の母の子として非嫡出子という扱いになります。母親の戸籍に入り、母親の姓を名乗ることになります。

事実婚の夫の子とするためには、夫が認知する、認知後、養子縁組する等、出生届以外に別の手続きが必要となります。したがって、被保険者が夫の場合の事実婚(内縁)の別姓の子を被扶養者とするためには、収入を証明する書類(事業主が証明した場合は書類の添付は不要)以外に同居が確認できる書類や扶養されている事実の確認等、別途添付書類が必要となります。
また、税法上では、事実婚の配偶者同様、法的に子と認定されない場合は被扶養者として認定されません。年末調整の控除対象被扶養者とはなりませんので注意が必要です。

まとめ

  • 事実婚でも要件を満たせば社会保険の被扶養者になることができる
  • 事実婚を認定するためには同居していることが重要
  • 事実婚の認定に必要な書類は収入を確認する書類の他に、夫婦それぞれの戸籍と住民票
  • 事実婚の配偶者は税法上は控除対象配偶者として扱われない
  • 事実婚の子供は夫の子とする手続きをすれば、税法上の被扶養者として認定される

法律上の配偶者ではないからといって、事実婚の配偶者や子が一般の配偶者や子と同様の行政サービスを全く受けられないわけではありません。事実婚とするか法律婚とするかを選択される場合は、配偶者や子が受けることのできる社会保障もあらかじめ確認しておくと今後の生活設計に役立ちますね。また、税法上の取扱いなど、法律上の配偶者とは異なる取扱いとなる事項もあります。所得税の控除対象配偶者とならないことや、相続時に配偶者としての減免措置が受けられないこと、認知されていない非嫡出子の税法上の扱いなど、今後の生活に影響する事項をきちんと確認しておくことをお勧めします。