初めて社員旅行をする場合の基礎知識
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
従業員の福利厚生になる社員旅行。しかし金額に上限があるのか、経費になるのかなど分からないことも多いのではないでしょうか。ここでは初めて社員旅行をする場合、経理や人事の担当者が知っておくべき基礎知識をご紹介します。
社員旅行の意義・意味
社員旅行とは、従業員のレクリエーションのために行われる旅行のことです。従業員の慰安やモチベーションアップ、社内コミュニケーションの活性化などを目的としています。
では、社員旅行を強制することはできるのでしょうか。これは社員旅行が業務に当たるかどうかで異なります。社員旅行が研修旅行の意味を兼ねているものであれば、それは業務になるため、従業員は参加しなければなりません。しかし、社員旅行が慰安旅行の場合は業務と見なされません。有給扱いと同じのため、従業員に社員旅行を強制することはできないのです。
休日に社員旅行を設定する場合も考え方は同じです。社員旅行が研修旅行の意味を兼ねているものであれば、それは業務です。休日に社員旅行を設定する場合は、時間外手当を支給する必要があります。社員旅行が慰安旅行の場合は業務にならないので、休日に設定しても法律上は問題ありません。しかし業務でない場合は強制もできないので社員旅行を休日に設定した場合、不参加の従業員が増えないかどうか考慮する必要があるでしょう。
社員旅行は経費扱いになる?
会社として気になるのは、社員旅行が経費になるかということです。こちらも社員旅行が業務なのか慰安なのかで取り扱いが異なります。
社員旅行が研修旅行などの業務と認められる場合
社員旅行が研修旅行などの業務と認められる場合は、当然仕事の一環のため経費になります。ただし、研修旅行の費用に会社の業務を行うために直接必要な部分と、観光などの直接必要でない部分がある場合、注意が必要です。直接必要でない部分の費用は会社の経費にはなるのですが、従業員の給与扱いになる可能性があるので注意が必要です。研修旅行の場合は、旅行の工程表などあとで見て証明できるものを残しておいた方が良いでしょう。
社員旅行が慰安などレクリエーション旅行の場合
社員旅行が慰安などレクリエーション旅行の場合は、経費になります。しかし金額や日数により、それが「福利厚生費」として経費になるのか、「従業員給与」として経費になるのかの違いがあります。
「福利厚生費」になるか「従業員給与」になるかについては旅行期間、参加割合、金額の3つの観点で考える必要があります。具体的には次の要件を満たす場合は「福利厚生費」として取り扱います。
1.旅行期間
海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること
2.参加割合
旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること
3.金額
少額であること。具体的な金額が法律で決まっていませんが、国税庁が発表した参考事例では、会社負担が10万円までなら「従業員給与」する必要はありません。
1.旅行期間4泊5日
2.参加割合100%
3.費用及び負担状況 旅行費用25万円(内使用者負担10万円)
例えば上記の場合は「福利厚生費」として取り扱ってよいということになります。
では、アルバイト・パートや従業員の家族を社員旅行に連れて行った場合は経費になるのでしょうか。アルバイト・パートの場合は、就業規則や社員規定などでアルバイト・パートを従業員としてみなす旨の記載があれば問題ありません。従業員の家族の場合は一般的には経費にすることはできません。社員旅行は従業員のための旅行で、従業員の家族は従業員でないとみなされるからです。
※「従業員給与」として取り扱われる場合は、その次の給料または年末調整の時期に、旅行代金などを、給料に含めて所得税を源泉徴収する必要があります。
社員旅行で非常事態が起こった場合はどうすればいい?
社員旅行で怪我や事故などがあった場合、労災は認定されるのでしょうか。労災は業務に関係ある場合しか認められません。業務に関係あるとは、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つが認められるということです。「業務遂行性」は事業主の支配下にあること、「業務起因性」は業務と関係している原因による怪我や病気であることです。社員旅行がレクリエーションのための旅行の場合は、業務とは関係ないので労災が認められる可能性は低いでしょう。社員旅行で労災が認められる可能性は低いため、研修旅行の場合は、業務と関係あることを示す書類などをしっかり残しておくことが最低限必要になるでしょう。
まとめ
今回は、初めて社員旅行をする場合の基礎知識をご紹介しました。社員旅行は慰安などレクリエーション旅行なのか、研修旅行などの業務なのかで取り扱いが異なります。
レクリエーション旅行であれば、参加を強制することはできません。研修旅行の場合は休日を日程に入れると時間外手当などを支給する必要があります。
また、経費になるかどうかの取り扱いも異なります。研修旅行の場合は経費になりますが、レクリエーション旅行の場合は、旅行期間、参加割合、金額によって従業員の給料になる場合もあります。労災もレクリエーション旅行の場合は認められる可能性は低いでしょう。社員旅行を計画している場合は、この記事を参考に目的に応じた準備をしっかりしてくださいね。
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