給与明細を電子化する前の必須知識

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

ITの発達に伴い、給与明細を電子化する動きが出てきています。そこで、給与明細を紙で発行するのではなく、電子化することでのメリットと手続きと対策について、解説していきます。

給与明細電子化の方法と法律上の扱い

給与明細を電子化する方法としては、電子メールで配布する方法と電子ネットワーク上(クラウド/社内LAN等)を活用する方法があります。

給与明細を紙で渡すのではなく、電子的に閲覧できるようにするのは、法律上は問題ないのでしょうか。

労働基準法では、給与明細そのものを作成することが義務化されていません。したがって、電子で給与明細を交付することは、労働基準法上は問題ないです。ただし、行政通達においては、給与明細を計算書という形で交付することが要請されています。したがって、大抵の会社では、給与明細を作成しています。

用紙代や郵送代のコストを削減するために、給与明細を電子化することは労働基準法上、問題ないでしょう。

ただし、給与明細は個人情報になります。この個人情報が流出した場合は、個人情報保護法に抵触するため、給与明細を電子化する場合は、セキュリティー対策をしっかりと行う必要があります。

給与明細電子化の会社側のメリット

給与明細を電子化することで会社側には、どんなメリットがあるのでしょうか。

まずは、給与明細を紙でなく、電子化してペーパーレス化することで、用紙代や印刷代、郵送代などのコストの削減につながります。したがって、会社の総務部としても、紙の発行の場合、従業員が多ければおおいほど、印刷と郵送の手間が大変でしょう。この手間が給与明細の電子でなくなるので、業務の効率化にもつながります。

また、給与明細の電子化は、確実な配布と個人情報の守秘義務の遵守にもつながります。

給与明細を郵送ではなく、直接、手渡しをする場合、給与日に会社内にいればいいですが、特に営業の人の場合、外出することが多く不在の場合もあります。その場合、デスクの引き出しに入れるような形となり、個人情報の流出につながる可能性もあります。また、間違えて、他人の給与明細を渡してしまう可能性もあります。よって、給与明細を電子化することで、確実な配布と個人情報の守秘義務を全うできることになります。

そして、給与明細における給与データは、従業員に開示する目的で作成しますが、会社の給与システムや会計システムとの連携が必要となります。給与明細を電子化することで、これらのシステムとの連携がしやすくなります。

また、経理部と総務部とに分かれている場合、相互で給与データのやりとりが必要になりますが、そのやりとりもしやすくなります。結果的には、業務の効率化につながります。

給与明細電子化の従業員のメリット

給与明細を電子化することで従業員側には、どんなメリットがあるのでしょうか。

給与明細は、毎月渡されるもので、全てを保存するには、自己管理が必要となります。紙で手渡される場合には、紛失してしまう可能性もあります。また、過去の自分の給与データを確認したいこともあります。そんな場合に給与明細を電子化しておけば、給与明細の再発行も不要であり、簡単に過去の給与データを確認することもできます。

また、給与明細の電子化により、どの環境でも給与明細の情報を確認することができます、スマホでもPC上でも,給与明細を確認することができます。

そして、給与明細をクラウドや社内LANで閲覧するには、IDとパスワードで管理することになるため、紙での管理を行う場合より、よりセキュリティー対策につながるといえます。

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給与明細電子化の手続きと対策

給与明細を電子化するにあたり、必要な手続きと対策について、確認していきます。

まずは、給与明細を電子化するにあたっては、従業員の承諾が必要となります。所得税法では、給与明細や源泉徴収票は電子交付することに対して、従業員の承諾を得ることは義務化されているので、この手続きが必要となります。したがって、従業員の承諾をどのように得るかを検討する必要があります。

また、給与明細データへのアクセスをどうするかです。前述したように、電子メールで配布するか、クラウドや社内LANを活用して、IDとパスワードでログオンするかです。どちらが従業員と会社の双方でやりやすいのかを充分、話し合う必要があります。

そして、セキュリティー対策の強化です。経理部や総務部のPCからのデータ流出を防ぐ対策を行うことは勿論ですが、IDとパスワードは定期的な変更も欠かさず行うことが必要となります。

まとめ

給与明細電子化は、会社側にとっては、用紙代や印刷代、郵送代などのコストの削減と業務の効率化につながります。また、従業員にとっても、すぐにスマホでもPC上でも、給与明細を確認できます。したがって、双方にメリットがあり、効果があるといえます。ただし、行うべき対策と注意点もあります。まずは、当然ながら、従業員の承諾を得るということです。従業員の中には、紙での発行を希望するかたもいるでしょう。したがって、どのように同意を取り付けるかが課題であるともいえます。また、セキュリティー対策の強化です。個人情報の流出は、社会問題化されています。したがって、セキュリティー対策を強化することも検討しておく必要があります。

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