結果にこだわるものづくり集団『D2C dot』のプロフェッショナルなチーム&ルール作りを聞いてきた

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

「D2C dot」は、社員が自身のパフォーマンスを最大限発揮できる方法を考え、各自で働く場所・時間を決めています。会社は社員一人一人をプロフェッショナルとして扱い、働き方を委ねています。今回は、そんな自由と責任が伴うルールの中で、成長を遂げられているチームのルール作りの裏側について、コーポレート室の中山さん、開発部の大浪さん、鈴木さんにお話を聞きました。

お互いを理解するために必要な時間は、一人一人異なる

コーポレート室 中山さん

Q|貴社の採用面談の進め方について教えてください。

中山さん:面談の回数は、条件面談を含めて原則2回行っていますが、回数の上限は設定していません。お互いについて理解することを最大限重視しておりまして、同じ社員が複数回お会いして、より深くお話をお聞きすることもあります。

常に相互理解の場として考えていますので、面接ではなく、面談と言っています。

じっくりと選定したいという目的ではなく、お互いのことを理解するために必要な時間が人によって異なるので、複数回お会いすることがあるということです。早いときには1回目の面談終了後にそのまま役員面談も行って採用となるケースもあります。

Q|なるほど。お互いを理解するために必要な時間が異なることに配慮されているのですね。各面談の担当者はどなたがされているのでしょうか。

中山さん:初回面談では、担当部署のマネージャーと社員が担当してくれています。一緒に働くことになるメンバーの感覚を重視するために、現場のチームに参加してもらっています。また、人事もオブザーブとして参加して、進行などを行っています。もちろん何か違和感、気づきなどがある場合には、人事も遠慮なくお話をさせてもらっています。

最終の面談では必ず当社の代表取締役が担当します。

Q|ありがとうございます。面談ではどのようなことを意識していらっしゃいますか。

中山さん:弊社の採用では、成長意欲・好奇心の持ち方を重視してお聞きしています。例えば、どんなことをやりたいですかと言う質問に対して、「これしかやりたくない」という回答をする方は弊社とはマッチしないと考えています。

やりたいことがはっきりしていることは素晴らしいと思います。ただ事業も世の中も、これだけ変化をしている中で、一つのことだけに固執しすぎると、個人の発展性・成長性が失われてしまいます。

こうした理由により、幅広いチャレンジ精神や好奇心を持っている方が弊社に合う方だと考えています。

Q|では、エンジニアという職種に限定すると採用で何か特別に意識されていることはありますか?

大浪さん:お話を聞くより先に、こちらのことを正確に伝えることを大切にしています。弊社でのお仕事内容を包み隠さず伝えます。実際の仕事内容における良いところ、大変なところをその場でお伝えするようにしています。

現場の正確な状況を知っていただいた上で、興味を持っていただける方のみ次のステップに進みます。次のステップでは、いただいた経歴とお話をしている中で、エンジニアとしてのスキル・ご経験をヒアリングさせていただいて、弊社の要件を満たせるかを確認します。

鈴木さん:この方は会社にマッチすると強く感じた場合には、時間がもったいないので、すぐに役員を呼んできて、その場で採用決定を行うこともあります。

Q|採用に関する人事チームとしての考え方を教えてください。

中山さん:採用活動では互いに齟齬が無く、求職者の方と弊社で理解し合えるようにしたいと考えています。採用は可能性の仕事だと思います。

勤怠管理、給与計算など労務管理は確実性の仕事ですが、それらとは異なります。可能性を否定することも、可能性にかけることもあります。

求職者の方の話を聞いて、良いと思う部分があると、その他の部分も良く見えてしまう傾向があると思うのですが、そういった傾向があることを認識した上で、齟齬なく情報をすり合わせる精度を上げていくために何ができるのかということを常に考えています。

 

プロフェッショナルとして社員が主体的に働き方を決める

開発部 (左)大浪さん (右)鈴木さん

Q|働き方のパターン、契約区分の多様性について教えてください。

中山さん:契約区分は、無期雇用社員、有期雇用社員、派遣社員、業務委託の方がいらっしゃいますが、無期雇用社員が一番多いです。

弊社の働き方の特徴として、「何時に来てください」「何時まで仕事をしてください」といったルールはないですし、罰則もありません。お子さんがいる方であれば、送り迎えをした後に会社に来られる方もいれば、お子さんの体調が悪い日がある場合には、家で作業をしてもらっています。

全員にノートパソコンを支給して、どこからでも仕事はできて、いつでも対応はできるような環境を社員全員で協力して作っています

鈴木さん:私も子供を保育園に連れていってから出社するので、だいたい11時くらいに出社しています。それでも出社は早い方だと思います。みんなそれぞれの事情などに合わせて、働き方を自分で考えていますね。

Q|制度としてはどのような取り扱いになっているのでしょうか?

中山さん:働き方は裁量労働制を適用している社員が多くいます。その理由はシンプルです。弊社の社員はプロフェッショナルであると考えているからです。

弊社の仕事は、社員がプロフェッショナルとしてできる限りパフォーマンスを高めることが重要となります。プロとして、どうすればパフォーマンスを高められるかを各自が考えて行動すれば細かいルールなど必要ないと考えています。

そのため会社に来なければならないというルールもありません。チームとして仕事をするので、顔を合わせ、顔を見ながら意思疎通を取ることで、進捗・理解の状況を把握し、チームとして動きやすくなりますが、仕事としてのクオリティが担保されていれば、極論いつどこで仕事をしていても良いと考えています。

大浪さん:例えば、私は12時くらいに出社します。それは通勤ラッシュが自分にとってストレスになるので、それを回避するためですし、最近引越しをして、通勤時間が長くなったので、在宅勤務も組み合わせていきたいと思っています。

個人ごとの事情と、仕事としてクオリティを出すことを両立するためにベストな方法があれば、細かい申請など不要で、すぐに行動に起こせることがこの会社の良いところだと思います。

社員が主体的に働ける制度である一方で、自分に負けてしまうと結果が出せなくなってしまいます。そして結果が出せなければ、当然評価は下がっていきますので、ある意味厳しい制度であるとも言えます。

自由な働き方は、結果が出せているからできることであるという前提を忘れてはならないと考えています。

 

新入社員が組織に溶け込むためのイベント「dotの日」

左から中山さん、大浪さん、鈴木さん

Q|入社時のオンボーディングについて教えてください。

中山さん:新たに入社してもらった方に積極的に参加をしていただいているのが、月2回開催している「dotの日」というイベントです。シンプルに数人でご飯に行くというイベントです。

そのメンバーの組み合わせは、役員や別部署の方など普段話をする機会があまりない方をアサインしています。もともとは、月1回だったのですが社員数も100人くらいまで成長してきたので、月2回に増やしています。

役員側も新しく入社した社員が普段何をしているのかを知りたいというニーズがあり、コミュニケーションの場を設けています。部署を超えて、人間関係を作ってもらっています。弊社は、メインとなるプロダクトがある会社ではないので、組織力・人に対してしっかりと投資をしていきたいと考え、このような仕組みを設けています。

鈴木さん:あとは、各部署単位でしっかりとコミュニケーションをとってもらっています。各部署のマネージャーが、チーム内のメンバーと1対1で会話をする時間・機会を日々作るようにしてくれています。

新しく入社したメンバーに対して、気軽になんでも聞ける環境を作ることが重要だと思いますので、そういった配慮を各自で考えてやってくれています。エンジニア未経験の女性がエンジニア職で入社しているのですが、しっかりと成長する目的で、上司にいつでも相談できるように席を隣にしています

Q|未経験の方を採用されているんですね!未経験者をエンジニア職で採用されているのはどういう狙いがあるのでしょうか。

鈴木さん:エンジニア採用は、年々難しくなっているので、しっかり育てることができる仕組みを社内で作るために採用を行っています。

また、全社員が即戦力だと教え合う文化などが根付きにくい側面もあるので、そういった意味でも未経験の方を採用することで各社員には新鮮な刺激を与えることができました。

Q|社員間で交流したりコミュニケーションを促進するための施策はありますか?

中山さん:会社全体として、年に2回ほどイベントを行っています。10月に会社の周年記念パーティをやっておりまして、3月には年度決算が完了したタイミングで慰労会も行っています。

部署単位では、四半期ごとに会社が費用を負担して、メンバーで食事に行っていただいたり、お客様もお呼びしてお食事会をしていただいています。

その他の取り組みとして「ナレシェア(ナレッジシェア)」という勉強会が社内にあります。各社員が自分で勉強会を主催して、周りの社員を集めて行うものです。例えば、ライティングの講座を受けてきた社員が、その講座で学んだ内容を発表してシェアをするというものがありました。

弊社では各社員が学んだことを、自発的にシェアするというカルチャーができておりまして、その行動は人事評価にも連携させています。

 

MBOにより全社員が会社のPL/BSに対して目標を持つ

左から中山さん、大浪さん、鈴木さん

Q|社員の方の目標管理はどのように行われていますか。

中山さん:弊社では、目標管理はMBOで行っています。定量的には、会社の業績に連動する業績数値、日々の取り組みの数値などを評価し、定性的には、行動に対する評価をしています。

弊社ではどんな部門でも必ず数値目標を設定しています。例えばコーポレート部門でも、会社のPL/BSに影響を与えているので、その影響を改善する具体的な数値目標を設定しています。

目標設計は、会社の事業計画からブレイクダウンして各部署・各社員に落とし込まれていきます。最終的には社員と上司が一緒に話し合って目標のすり合わせを行っています。

必ず前年よりも成長する目標を設定し、その目標の達成度を評価しています。

Q|エンジニアの方の目標設定はどのように行っていますか

鈴木さん:エンジニアも他の社員と全く同じ方法で目標管理、評価を行っています。定量的には、会社の業績にどれくらい関与できたのか金額で目標設定しています。定性的には、エンジニアとしてのスキルを向上することを目標に設定しています。イベントで登壇する、技術書を出版するなども定性的な目標設定の例です。

Q|社員の能力、スキルを高めるための支援体制について教えてください。

中山さん:研修としては、新卒社員に対するビジネスマナー研修などを行っています。また職務能力を高める支援として、マネージャーなどに対しては2~3時間くらいの研修をやっています。

例えばリーダーとしての行動研修、コミュニケーションのやり方などの研修です。

あとは、全社員に何か学びたいことに対して投資してもらって、その費用を各自年間10万円までの範囲で会社が負担しています。セミナーへの参加などの費用です。

Q|昇進、表彰などの制度について教えてください。

中山さん:弊社において、役職とは役割だと考えています。マネジメントはエキスパートから選ばれるようにしています。

マネジメントにならないと給与が上がらない会社もあると思いますが、当社の場合はそうではありません。マネジメントは重要な役割ではありますが、特定の領域のスペシャリストも重要な人財です。

それぞれの役割の中で、結果を出せば自然に給与が上がっていくはずなので、マネジメントもエキスパートも給与のテーブルのレンジは同一にしています。

また社員の表彰は会社側で行うことはせず、各部署で自然に行われているようです。人事や会社は全く関与せずに、社員が自発的にその期に結果を出した人・チームを表彰してくれています。

 

長く働いてもらえる会社づくりを目指して

(左)中山さん (右)大浪さん

Q|表彰を社員が自発的にやっているというのは面白い文化ですね。お話ありがとうございました。最後に、お話いただいた人事制度・ルールを作る際に大切にしている考え方を教えてください。

中山さん:代表がいつも言っているのは、終身雇用です。ここでいう終身雇用とは長く働いてもらえる環境を作るべきだというポリシーのことです。

そのためにライフステージに柔軟に対応できる勤務制度、なりたい姿に応じたキャリア支援、社員が主体的に働き方を設計できる環境を整備しています。

会社の成長は、社員の成長の結果であると考えておりまして、社員に長期間寄り添って、個人の成長を担保するために会社がやれることを常に考えています。

鈴木さん:エンジニアチームとしても、いかに楽しく働けるかということも大切にしています。たくさんある案件の中で、社員がやりたいと思うようなわくわくする案件をたくさん獲得できるように努めていますし、どうしても負担の大きな対応が必要な業務をやってくれた社員には、次は面白い仕事をアサインしようと考えています。