育児時間とは|労働基準法の定義

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

幼い子供を育てている女性にとって、通常通り労働を行うことは簡単ではありませんし、女性ご自身が働きたいと願っても、子供の安全や成長を考えると難しいでしょう。また育児をしている女性に無理な労働を強いるようなことはあってはなりません。

 

育児時間とは

労働基準法第67条は、育児をしている女性を守るために定められた条文です。

 

第67条 (育児時間)

生後満一年に達しない生児を育てる女性は、休憩時間のほか、一日二回各々少なくとも三十分、その生児を育てるための時間を請求することができる。使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。

 

搾乳をしたり、保育所の送り迎えなど、女性は一定の時間を確保して子供の世話をすることが必要となるので、その時間を法的に確保することが目的です。育児時間中の給与を支払うかどうかは、使用者と労働者の間で相談の上で決めていいそうですが、少しの時間ですし、女性の働きやすさを守るためにも給与から控除しない会社も増えています。

 

ここで「生児」という言葉が出てきていますが、実際に女性が出産した子供である必要はないと解されています。

 

女性は育児時間はいつ取得できるのか

1日に2回、最低でも30分の育児時間を請求することができると条文では記載されています。それでは、女性の方はいつでも育児時間を請求することができるのでしょうか。これについては厚生労働省労基局長から答えが出されています。

この育児時間をどの時間に請求するかは原則として本人の自由であり、始業時間のすぐ後、終業時間の直前に請求してきた場合であっても使用者としては託児施設の有無を問わず、これを拒否できない
(昭33・6・25 基収第4317号)

つまり、ご自身の状況やお子様の健康状態に合わせていつでも育児時間を請求して良いとされているのです。これについて使用者は拒否したりすることはできませんし、そんなことをする方もこの国にはいないと信じています。

 

アルバイトの方など労働時間が4時間の場合、育児時間は何時間?

今までお話しした内容は、所定労働時間が8時間のケースを説明しています。しかし、所定労働時間が4時間の場合に、原則通り休憩を1日2回、最低30分与えてしまうと仕事をする時間がとても少なくなってしまいそうです。このような場合にどのように対応すべきでしょうか。

その答えも過去の厚生労働省労基局長の回答が出されていますので、確認しましょう。

育児時間は、1日の労働時間を8時間とする通常の勤務態様を予想し、1日2回の附与を義務づけるものであって、1日の労働時間が4時間以内であるような場合には、1日1回の附与で足りる
(昭36・1・9 基収第8996号)

つまり、4時間以内の労働時間であるならば、1日1回、30分の育児時間を与えれば問題ないよということです。アルバイトの方でも当然、育児時間を申請することは権利として保障されているので、必要に応じて申請してください。

 

育児時間は朝と夕方に使うことが効率的

育児時間は休憩時間とは明確に違う点があります。それは、労働時間の途中でなくても取得できるということです。これについても厚生労働省労基局長が回答を出しています。

勤務時間の始め又は終わりに請求してきた場合にも拒否できない
(昭33・6・25 基収第4317号)

つまり始業時刻から30分と終業時刻前30分というように請求することもできますので、朝少しゆっくり育児をしたり、早く帰って育児を行うことができます。

また,必ずしも2回に分けて取らなければならないものでもなく,1回にまとめて1時間取ることも可能です。ご自身のご都合に応じて育児時間を活用することができます。

 

育児時間に関して労務管理上注意すべきこと

注意しておくべきポイントは下記の4つです。

1,請求がなければ、育児時間を与えなくてもいい

2,男性には育児時間を与える必要はない

3,休憩時間と違って「労働時間の途中」に与えなければならないわけではない

4,1日の労働時間が4時間以内である場合は、1日1回の育児時間を付与すれば良い

 

育児をしている女性は体もそれまでとは違う変化があったり、育児でストレスや疲労も溜まっていたりします。メンタル・フィジカルともに配慮をし、女性が活躍できるための支援を整備していきましょう。

 

また実際に育児をしている女性からすると、「 1日に30分休憩を2回もらったくらいでは育児なんて到底出来ない」という方もたくさんいると思います。現実的には、労働基準以上の待遇や配慮がなければ難しいこともたくさんあると思いますので、会社としてどのようなルールを定めるのか、検討をしていくことが必要です。