解雇制限とは|労働基準法の定義

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

「解雇」という言葉を聞いて、マイナスの印象を受ける方がほとんどだと思います。いわゆる会社をクビになることを意味していますので、良い気分はしないかと思います。しかし、労働基準法では、この解雇について規制を定めていて、お仕事をされている労働者の方を守る仕組みを作っています。

今回はこの解雇を抑制する「解雇制限」とは何かということについて見ていきたいと思います。

 

そもそも解雇とはどういうこと?

前提として、「解雇」がどういう行為をさしているのかを理解していきます。解雇とは、使用者の一方的意思表示による労働契約の解除のことを言います。

知って役立つ労働法-働くときに必要な基礎知識」という厚生労働省が公開している資料にも説明がなされています。

使用者からの申し出による一方的な労働契約の終了を解雇といいます
(知って役立つ労働法-働くときに必要な基礎知識)

この「一方的な」という部分に対して配慮が必要となります。なぜなら、解雇を制限なく行えるような世界だったとしたら、労働者の生活の糧を得る手段を不意打ちのような形で失わせることになるからです。

そのため解雇制限というルールが定められているのです。

 

解雇制限とは

解雇制限に関するルールは労働基準法第19条で定められています。

 

第十九条(解雇制限)

使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

 

つまり、労働者が仕事をしている時に怪我をしてしまって、そのせいで療養のために休業している間にもかかわらず、突然クビにするのは酷だから、やめましょうということです。

また出産前の女性、出産して間もない女性が、休業している時に解雇することはできません。これも酷だからということで、制限されています。

 

療養のための休業中に契約期間が終了した場合は?

もし期間の定めのある契約を結んでいる労働者が、業務中に怪我をしてしまったとします。そして契約期間がその休業中に満了した場合には、どのように取り扱うべきなのでしょうか。これについては通達で取り扱いが定められています。

契約期間満了により当然に労働関係が終了する場合には、たとえ労働者に辞める意思がなかったとしても、「解雇」ではなく、労働者が業務上の傷病の療養のため休業している期間中に契約期間が満了した場合には、その契約が引き続き更新されたと認められる事実がない限り、労働者をやめさせたとしても労働基準法第19条の解雇制限の規定違反とはならない。
(昭和63.3.14 基発150号)

 

怪我はしたけど休業はしてない場合は?

業務中に怪我をしてしまって、治療を行っているときに、休業はしていない場合もあります。この場合には解雇制限の規定は適用されないのでご注意ください。

また産前6週間以内の期間中でも、女性が休業をせずに働いている場合には、その期間中の解雇については解雇制限の規定は適用されません。

あくまで、休業をしている方を守る規定ですので、お忘れなく。

 

解雇制限が解除される場合がある

解雇制限の規定によって、怪我をしたり、産休中の労働者が保護されていることは先ほどの説明でご理解いただけたと思います。しかし例外として、解雇制限が解除されることがあるので確認します。

具体的には労働基準法第19条に記載があります。

第十九条 (解雇制限)
ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

つまり、下記の2つのケースです。

  1. 打切補償という補償を支払った場合(打切補償とは?
  2. 天災事変その他やむえない理由で事業継続が不可能になった場合

ちなみにこのうち2のケースでは、労働基準監督署長の認定を受ける必要があります。これらの場合には、解雇制限が解除されるということをご注意ください。