会社の経営が危ない?そんな時は雇用調整助成金を利用しよう!

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

事業をしていると、数か月先にはなんとか持ち直しそうだが、今は経営が苦しく従業員の給料を支払う余裕がなくどうしたらよいかと悩む場面や、一方、従業員も突然解雇されては生活に困ってしまうので、できるだけその会社で働きたいと思う場面に遭遇することもあるでしょう。そのような時に活用できる「雇用調整助成金」について、今回はご説明いたします。

雇用調整助成金とはどんな制度?

事業活動の縮小を余儀なくされる場面は、様々な理由によって起こります。景気の変動や、産業構造の変化等による経済上の理由により事業活動の縮小を迫られたとき、事業主が従業員を一時的に休業教育訓練を行ったり出向させたりすることにより、雇用を維持した場合に助成される制度です。

従業員の雇用を維持した場合のメリット

苦しい時も雇用を維持してくれた事業主と、少ない給料でも頑張った従業員の間には一体感と信頼関係が深まります。円滑な職場の人間関係は生産性の向上につながり、経営回復に役立つのではないでしょうか。

従業員を解雇した場合のデメリット

同僚が解雇された職場内の信頼関係は崩れてしまい、会社への帰属意識が薄れてしまいます。経営回復後に従業員を募集したとしても、人材確保が困難となり、せっかくの回復タイミングに生産性向上のスピードが上がらないことになってしまいます。

雇用調整助成金の申請状況

雇用調整の助成金は平成21,22年度では年間70万件以上の申請がされていましたが、その後は景気回復等に伴い平成23年度は50万台、24年度は30万台25年度は10万台と申請件数は減少傾向となっています。助成金は手続きが煩雑だと感じてしまいがちですが、企業活力の維持のためにも、現状の打開策のためにも制度の利用を考えてみてはいかがでしょうか。

参考:http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000357m8-att/2r985200000357q8.pdf

雇用調整助成金の条件(要件)とは?

まずは、助成金申請するための3つの条件(要件)を確認してみましょう。

1.雇用保険の適用事業主であること

2.事業活動が縮小していること

雇用の調整が必要な経営状態であることが前提条件となります。

  • 売上高、生産量等が減少していること
    売上高または生産量などの事業活動の指標について、最近3か月間の月平均値が前年同期に比べ10%以上減少していること。
  • 労働者が増加しすぎていないこと
    雇用保険被保険者数および派遣労働者の最近3か月の月平均値が前年と比べ、
    ・中小企業の場合⇒10%を超えてかつ4人以上増加していないこと
    ・中小企業以外の場合⇒5%を超えてかつ6人以上増加していないこと

3.雇用調整(休業、教育訓練・出向)が基準を満たしていること

【休業の場合】

①事業主が自ら指定した対象期間内(1年間)に行われるもの

②所定労働日の全一日にわたるもの(休業の場合、所定労働時間内に事業所の雇用保険被保険者全員について一斉に1時間以上行われるものも可)

③労使間の労使協定により実施されるものであること

④休業規模要件を満たすこと:平成25年12月1日以降の判定基礎期間(賃金締切期間)から所定労働日数に対し休業を実施した割合が一定以上であることが必要となりました。休業実施日数の割合が少ない場合は助成の対象となりません。

・中小企業 ⇒ 休業等実施日数 ≧ 対象労働者の所定労働日数の1/20
・大企業  ⇒ 休業等実施日数 ≧ 対象労働者の所定労働日数の1/15
⑤休業手当を平均賃金の6割以上支払っていること

【教育訓練を行う場合】

上記①~④に加えて2項目を確認しましょう。

  • 教育訓練の種類

 教育訓練は、事業所内訓練と事業所外訓練とが対象となり、一日または半日にわたり行われるもので受講日において業務に就かせないこと(半日研修の場合、残りの半日について休業することは可)

  • 教育訓練内容についての規定(主なもの)

 職業に関する知識・技能・技術の習得や向上を目的とする内容であること
再就職の目的のものや、職業人として共通に必要となるもの、訓練に直接関連しない内容等は対象外

【出向の場合の主な項目】

①事業主が自ら指定した対象期間(1年間)内に開始され、3か月以上1年以内の出向期間で出向元事業所に復帰すること
②出向元事業所が出向労働者の賃金の一部を負担していること
③労使協定に基づくものであること

ご注意下さい!!
雇用調整の基準については対象労働者や、教育訓練の種類、その他、出向先と出向元の事業所の関係等についても種々条件がありますので、申請前にハローワーク等に相談して確認しましょう。

受給できる額は?

【受給額】

休業を実施した場合の休業手当または教育訓練を実施した場合の賃金相当額、出向を行った場合の出向元事業主の負担額について以下の割合の金額が受給額となります。

中小企業   ⇒ 2/3
中小企業以外 ⇒ 1/2

教育訓練を実施した場合は、訓練費として、1日1人当たり一律で1,200円が加算されます。

【受給上限額】

平成28年8月1日から1日1人当たりの上限額が7,775円に変更となりました。

【支給限度日数】

休業・教育訓練を実施する場合、1年間で最大100日、3年の間に最大150日分受給できます。
出向の場合は、対象期間の初日から起算して最長1年間の出向期間中受給できます。

手続と申請書

支給の対象となる休業・教育訓練、出向の実施について、事前に都道府県労働局またはハローワークへ届け出る必要がありますので、事前に整備する書類を確認しておきましょう。

【休業・教育訓練をさせる場合】

 手続き時期:初回は休業等開始日の2週間前まで(2回目以降は休業開始日等の前日)

 初回及び2回目以降共通の手続き書類

◯「雇用調整助成金休業等実施計画(変更)届」

 初回のみ必要な手続き書類

◯「雇用調整実施 事業所の事業活動の状況に関する申出書」
◯「雇用調整実施事業所の雇用 指標の状況に関する申出書」
◯休業(教育訓練)協定をした書面(写)
◯就業規則、賃金台帳、出勤簿等の確認書類
◯事業活動の縮小に関する書類
 ・生産量要件について:損益計算書、総勘定元帳
 ・雇用量要件について:派遣先管理台帳(派遣ありの場合)

 休業等実施計画の期間の選択
初回分の計画届の提出時に判定基礎期間の1~3回(1~3か月)分の中からいずれかを支給対象期間の単位として選択します。

 支給申請方法

判定基礎期間ごとにその末日の翌日から 2か月以内に労働組合等に実施された休業等と休業(教育訓練)協定との確認を得て、支給申請書等を都道府県労働局またはハローワークへ提出します。
◯「雇用調整助成金(休業等)支給申請書」
◯「支給要件確認申立書」(雇用関係助成金共通要領様式 第1号)

【出向させる場合】

 手続き時期:出向労働者の出向を開始する日の2週間前まで

 手続書類

◯「雇用調整助成金出向実施計画(変更)届」
◯「雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書」
◯「雇用調整実施事業所の雇用指標の状況に関する申出書」
◯出向の協定をした書面(写)
◯出向契約書(写)
◯出向実施計画(変更)届
◯出向に係る出向労働者の同意の確認書(任意の様式)
   ・出向先事業主の登記事項証明
   ・出向先事業主の株主名簿等、資本金関係のわかる書類

 支給申請方法

出向についての労働組合等の確認及び出向先事業主の確認を得て支給申請書等を都道府県労働局またはハローワークへ提出します。
◯「雇用調整助成金(出向)支給申請書」
◯「支給要件確認申立書」

まとめ

雇用調整助成金は事業所の危機に活用するあなたの味方となる制度です。解雇等の人員整理を行わずに、雇用を維持することによって社会全体としての経済効果を上げることを助成の目的とされています。もし、虚偽の申請等により不正受給をし、それが判明した場合は企業名が公表されるなどの処罰対象となってしまいます。せっかくの助成制度ですので、受給要件等をご確認の上、ルールを守ってご活用下さい。

参考:雇用調整助成金 |厚生労働省

 

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