1000件チェックの社労士が教える、就業規則見直し5つのサイン

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

元・労基署勤務で、様々な企業の就業規則を1000以上チェックしてきたという社会保険労務士の須田真一さん

そんな須田さんに「就業規則を見直す必要があるかどうかの判断基準を5つ」教えていただきました。どれも初歩的なことなので、1つでも当てはまっていたら、就業規則を見直す必要アリ!とのことです。

特定社会保険労務士の須田真一さん

 
今回の記事の前提として「就業規則は社員数が常時10名以上の事業所がある会社では作成する必要があります。そして、それを労働基準監督署に届け出て、社員がいつでも閲覧できるようにしておかなければなりません。」とのことです!
 

パート、アルバイトの就業規則がない

もちろん、社員が正社員だけの会社は、パート社員等の就業規則は必要ありません。最初は正社員だけだったけれど、社員が増えてパート社員を雇うようになったような会社では注意が必要です。就業規則の適用対象者として、正社員とパート社員等の区別がされているでしょうか?
 

規定に、ただ単に「社員は」となっていれば、パート社員も含むすべての社員に就業規則が適用されます。もし、適用を除外する必要があれば、パート社員の就業規則を作成するか、「ただし、パート社員は除く」などと規定する必要があります。(ただし、その除外が合理的かどうか争われる可能性はあります)
 

特に問題となるのは、退職金の規定です。採用時60歳を超える高齢者の退職金の支払請求が認められた高裁判例もあります(就業規則の規定の内容が社員全般に及ぶものとなっていて、高齢者には適用しないという定めはなく、就業規則の退職金の規定は高齢者にも適用されるとされました)。
 

この点は、すぐにでもご確認いただいたほうがいいでしょう。なお、退職金の請求権の時効は、労働基準法(以下、労基法といいます)115条で5年と定められていますので、今から就業規則を改訂してもすぐには安心できませんが。
 

他社の休職規定をコピペしたため、休職期間が長すぎる

休職規定は、労基法に定められた必須の規定ではありません。それだけに、どう規定していいか分かりづらいところです。それでつい他社の規定をマネしてしまうということがあります。
 

例えば、中小企業であれば、大企業のような長い休職期間を設けることは通常難しいため、自社の実態に合った休職期間となっているかをご確認ください。
 

また、入社1週間の社員でも使えるようになっていたり、欠勤6ヵ月してから休職となる、などとなっていたりするようでしたら、見直す余地がありそうですね。
 

「○○については、別途定める」と規定にあるが、別規定を作っていない

賃金規定、育児・介護休業規定が別に定められている会社も多いかと思いますが、これら別規定もすべて合わせて就業規則といいます。
 

したがって、就業規則を作成して初めて労基署に届出に行った時に、「別途定める」等の規定があれば、受付窓口で、別規定も一緒でないと受け付けられないと言われる場合もありますのでご注意ください。助成金のために急いでいるときなどに、そうなると大変ですね。
 

ちなみに、就業規則は労基署の窓口に一旦提出してしまうと、行政文書になってしまいますので、提出した本人であっても返してもらえなくなります。
 

金庫にしまってある

就業規則の重要性を認識されている会社の中には、大切に金庫等にしまわれている場合もあるでしょう。
 
しかし、冒頭にもある通り、就業規則は社員がいつでも閲覧できるようにしておかなければなりません(これを周知するといいます)。
 
逆に周知していなければ、就業規則を根拠とした懲戒処分の有効性が否定される等にもなりかねませんので、注意が必要です。
 

それにあまりご存知ないかと思いますが、金庫にしまってある就業規則でも見る方法があります。
 

私も労基署で見かけましたが、有能そうな弁護士と依頼人とおぼしき人物が一緒に窓口に現れ、「就業規則ノ開示請求シマス」と言っていました。なぜカタカナかというと弁護士が外国人だったからですが。それはともかく、提出された就業規則は、行政文書の開示請求で閲覧可能ということを知っておきましょう。そして、常に社員が弁護士に相談に行った場合を想定しておく必要があります。
 

労基署で受理されたら大丈夫だと思っている

いまだに昭和の就業規則をお使いの会社はあまりないでしょうが、育児・介護休業法の改正や社内規定の変更などに追いついていない就業規則は少なくないと思われますので、面倒ですがこまめな改訂、届け出が必要ですね。
 
ちなみに、労基署に就業規則を届け出すると、有給休暇の日数が少なくないかとか、残業代の計算方法が適正かはよく見られる点ですが、改訂部分だけを届け出することもできます。
 

もし、法律違反の規定のある就業規則がそのまま受理されたらどうなるでしょうか?受理されたことによって違法な規定が有効になることはありません。
 

労基法は最低基準を定めたものですので、それに満たない規定は、その部分は無効となり労基法の基準となります。したがって、就業規則の規定に関わらず、社員には労基法の定める内容を請求する権利があるということになります。
 

まとめ

就業規則見直し5つのサイン

  1. パート、アルバイトの就業規則がない
  2. 他社の休職規定をコピペしたため、休職期間が長すぎる
  3. 「○○については、別途定める」と規定にあるが、別規定を作っていない
  4. 金庫にしまってある
  5. 労基署で受理されたら大丈夫だと思っている

 

執筆者:須田真一さんの連絡先

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