給与所得者の扶養控除等申告書の書き方。記入すべきは、現住所か住民票か?
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
会社の総務・人事給与担当の方は毎年、年末が近づいてくると「この季節がやってきたか」と思いながら年末調整に向けて動き出すことと思います。年末調整は、担当者側だけで処理できる手続きではなく、労働者の方に正しく書類を書いていただくことが必要であり、頭を悩ませてしまう担当者は少なくないと思います。
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
年末調整のために労働者にお渡しする「給与所得扶養控除等(異動)申告書」。
この書類は文字が小さく小難しい言葉ばかり並んでいて、嫌煙したくなりますよね。
しかしこれは、労働者が1年間で得た給与について配偶者控除、扶養控除、障害者控除などの控除を受けるために必要な大切な書類です。この書類を正しく書くことで、正しく控除を受けることができます。控除を受けるための書類と言っても、配偶者や扶養している人がいない方も書く必要がありますのでご注意ください。
この書類は毎年更新されますので、その年の書類(様式)で書く必要があります。ちなみに平成28年分からは、マイナンバー(個人番号)を記入する欄が追加されました。書類は、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。
ダブルワーカーなどお勤め先が2カ所以上ある労働者は、それぞれのお勤め先にこの書類を提出するのではなく、どこか1カ所だけに提出するようにしなければなりません。ダブルワーカーについては、1カ所からの給与だけでは控除が受けられないケースの対応などがありますが、そのご説明はここでは割愛させていただきます。
よくある「あなたの住所又は居所」の質問
控除を受ける方もそうでない方も必ず書く項目に、「あなたの住所又は居所」というものがあります。数年総務・人事給与を担当されている方ならご経験されている方が多いと思いますが、この項目は意外と質問が多いのです。
「住所は、今実際に住んでいる所を書けばよいのでしょうか。」
「結婚して東京都へ引っ越したのですが、住民票の住所は独身時代の時の神奈川県のアパートになっています。」
等々の問い合わせが飛んできます。
中には様々なご事情から、役所に届け出ている住所(住民票のある住所)と実際に住んでいる住所が異なる方がいらっしゃいます。
このような場合、給与所得扶養控除等(異動)申告書には、その年の1月1日に実際に住んでいる住所を書いていただくことになります。しかし、それと合わせて住民票のある住所も労働者に記載してもらうのがベストと言えます。
何故なら、給与所得扶養控除等(異動)申告書は実は2つの税金が関わっているからです。2つの税金というのは、1つは所得税、もう1つは住民税です。
住民税は住民票のある各市区町村から課税されます。しかし、会社は給与所得扶養控除等(異動)申告書の住所をもとに諸手続きを行いますから、書類通りの市区町村から住民税が課税されるよう事を進めてしまいます。
それでは、給与所得扶養控除等(異動)申告書の住所に記入した市区町村と住民票のある市区町村の両方から「うちに税金を納めていただけるのですね」と言われかねません。そこで、住民票のある市区町村には実際の住所地(ここでは給与所得扶養控除等(異動)申告書の住所)で課税処理を進めていることが伝わるようにすれば、誤ってダブルで課税されてしまうことも、住民票のある市区町村から「未提出者(未申告者)」という扱いを受けることも防げます。
しかし、一番正しい姿・望ましい姿としては、住民票のある住所地と実際に住んでいる住所が同じものであることです。会社側が転勤などを労働者に命じた際には、きちんと住民票を移してもらうよう労働者に伝えることも、総務・人事給与担当者のお仕事の一つと言えるのかもしれません。
余談ですが…住民票を移す手続きは役所があいている平日にしか行うことができませんよね。そのような必要な手続きは、会社による業務命令(転勤など)から生じたものとして考え、手続きを行う時間については有給で就業免除の扱いとしたり、有給の特別休暇を与える会社もあるようです。
まとめ
給与所得扶養控除等(異動)申告書に記入する住所は、原則として住民票のある住所です。
しかし、役所に届け登録している住民票のある住所と実際に生活している場所が違う場合があると思います。そのような場合には、その年の1月1日現在の実際に住んでいる住所を記入してください。
ただし、念のために住民票のある住所も記入するのが良いと言えます。住民票のある市区町村に対して「給与所得扶養控除等(異動)申告書に記入した住所の市区町村に住民税を納めます」と伝える役割を果たすためです。
しかし、最も望ましいのは、言わずもがな役所への届け出(ここでは住民票の住所)と現状がリンクしていることです。
マイナンバーの運用が開始され、もうすぐ1年です。これからますます年末調整などの事務手続きが簡易化されることが期待できます。しかし、申告する際に必要となる書類を準備する作業はまだまだ続くでしょう。
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