「休日出勤」を完全理解する
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
繁忙期になると、休日であっても従業員を出勤させなければならないという状況になることも多いでしょう。そのような場合の労務管理をきちんとできていますか?休日出勤をさせる際には、代わりの休日や賃金について注意すべき点がいくつかあります。一つ一つ確認していきましょう。
休日出勤とは?休日と休暇との違いは?
休日出勤とは、その名の通り「休日に出勤すること」です。ここで言う休日とは、仕事が休みの日全般のことをいうのではありません。休日とは、労働者が労働の義務を負わない日のことです。土日休みや平日休みなど様々な形で会社によって設定されている毎週の休日や、お盆休みや正月休みなども、会社のカレンダー上、年間休日日数に含まれていれば休日ということになります。
似た言葉で休暇がありますが、休暇は「本来であれば労働の義務があるけれども、労働者の申し出によって労働の義務が免除される日のこと」をいいます。例えば年次有給休暇や、育児休暇、介護休暇などのことです。つまり、休日はそもそも労働の義務がない日のことで、休暇は本来であれば労働の義務がある日のことを差しています。
法律ではどう決まってる?
法律上は休日についてどのように定められているのでしょうか。労働基準法では「最低でも1週間に1日以上、または4週間に4日以上の休日を与えなければならない」と決められています。
この労働基準法で与えることが義務付けられた休日のことを「法定休日」といいます。これはあくまで法律上の最低基準なので、それ以上を与えることは全く問題なく、この法定休日以上に与えられた休日のことを「法定外休日」といいます。
例えば完全週休2日制の会社であれば、1週間に2日以上休日を与えていることになりますので、休日の片方は法定休日、片方は法定外休日とすることができます。
休憩時間はどうなってる?
休日出勤した場合の休憩時間というのはどのような扱いになるのでしょうか。休日出勤の場合であっても、労働時間が6時間を超え8時間以内の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなくてはなりません。しかし、休日出勤の場合は必要に応じての出勤になるため、個々人により出勤時間や勤務時間がばらばらで、監督者が不在のことも多く、管理が難しくなりがちです。忙しく、休憩をとる暇もなかった、というケースも多いでしょう。
では、もし仮に休憩を取れなかったとして労働者が休日出勤の労働時間を申告してきた場合に、その分の給与計算はどのようにしたらよいのでしょうか。その場合には、ひとまず労働者の申告の通りに計算をしましょう。実際には働いた時間を管理者の方で休憩を取得したとみなし、勝手に給与から差し引くという行為は賃金の未払いになるのでしないようにしてください。
しかし、休憩を与えないことは使用者の労働基準法違反となり、このような状況が続くことは労務管理上問題があるので、
「休日出勤は6時間までとする」
「〇時間就業したら×分休憩をとる」
など、休日出勤に関する決まりを就業規則に定めた上で、労働者に周知徹底しておく必要があります。
代休と振替休日の違い
休日出勤をさせた時に問題となるのが、代わりの休日をどう与えるかということです。ここで与える休日として、「代休」と「振替休日」があります。2つはよく混同されがちですが、意味が異なります。
代休とは
「代休」とは、休日に急きょ出勤をさせた後で、別の労働日(休日出勤後)を休日と設定した日を言います。後日休日を与えても、休日出勤を行ったという事実は変わらないため、休日出勤を行ったのが1週間に1日または4週間に4日の法定休日だった場合には、休日労働の割増賃金が必要です。
また、法定外休日に出勤した場合であっても、週の労働時間が法定労働時間(原則40時間)を超えた場合、超えた部分は時間外労働という扱いになるため、時間外労働の割増賃金が必要となります。しかし、代休として休んだ日に対する賃金は支払う必要はありません。
振替休日とは
「振替休日」とは、事前に本来の労働日と休日を交換して得た休日のことを言います。代休と違う点は、事前に本来の休日を労働日と設定するため、その日は「通常勤務」として扱われますので、休日出勤の割増賃金の支払いが必要ないことです。
しかし、労働日と休日を入れ替えた結果、1週間の労働時間が法定労働時間を超えた場合には、こちらも同様に、超えた部分について時間外労働の割増賃金を支払う必要があります。つまり、代休は急な休日出勤に対応するために事後的に設定するもので、振替休日は計画的な労働日の変更としてあらかじめ設定するものというのが大きな違いになります。
休日出勤を拒否したら解雇される?懲戒はある?旅行は理由になる?
労働者が休日出勤を拒否することはできるのでしょうか。会社が労働者に休日出勤をさせるためには、2つのことが必要となります。
- 就業規則または個別の雇用契約書に、会社が労働者に休日出勤を命じることができる旨を明記する。
- 36協定を締結し、事業所所轄の労働基準監督署へ提出する。
※36協定とは・・・法定労働時間を超え、また法定休日に労働させる場合にあらかじめ使用者と労働組合または労働者の過半数代表者との間で書面で締結しておかなければならない労使協定のこと。
これらのことを会社が行っている場合、会社は労働者に業務命令として時間外労働・休日出勤を命じることができます。これを拒否した場合、懲戒処分の対象にもなりえます。実際に懲戒処分の対象として認められた判例もあります。(日立製作所武蔵工場事件 最一小判平3.11.28)
しかし、時間外労働、休日労働をさせる具体的かつ合理的な理由は必要になりますので、いじめや嫌がらせなどで不必要な残業や休日出勤を強制することは認められません。会社が上記1.2の手続きを確実に行っており、休日出勤する具体的かつ合理的な理由がある場合には、基本的には会社の命令を労働者が拒否することは難しいでしょう。
しかし、会社が納得できるような、やむを得ない理由がある場合は別です。旅行の場合は、親族との旅行で前々から計画していた、どうしても参加しなければならない重要な旅行であるなどの事情がある場合には、会社側としても配慮する必要があるのではないでしょうか。
休日出勤の手当はいくらになる?割増はどれくらい?祝日だと変わる?
休日出勤した場合の手当はどれくらいになるのでしょうか。これは、出勤した休日が週に1回の休日(法定休日)かそれ以外の休日(法定外休日)かどうかによって異なります。ここでは、月~金出勤で1日8時間労働、土日休みの完全週休二日制の会社で、土曜日を法定外休日、日曜日を法定休日としている場合で考えてみましょう。
(1)土曜日(法定外休日)に出勤した場合
法定外休日に労働させた場合でも、週に1日または4週に4日の法定休日が確保できていれば、休日労働の割増賃金の支払いは必ずしも必要ではありません。しかし、法定外休日に労働したことによって、週の法定労働時間40時間を超えた場合には、その部分については法定時間外労働になるので、時間外労働の割増賃金として通常の賃金の2割5分以上を上乗せして支払わなければなりません。
1,000円×1.25×8時間=10,000円
祝日に休日出勤した場合であっても、それが法定休日でなければ休日出勤の割増賃金は不要です。また、週40時間を超えていなければ時間外労働の割増賃金も不要です。
※大企業の場合、月60時間を超える法定時間外労働をさせた場合には、その部分についての時間外労働の割増賃金の率を5割以上としなければなりませんが、中小企業については平成31年3月31日までは猶予されています。
(2)日曜日(法定休日)に出勤した場合
法定休日の労働については、使用者はその分の賃金に休日労働の割増賃金として、通常の賃金の3割5分以上の賃金を上乗せして労働者に支払わなければなりません。
1,000円×1.35×8時間=10,800円
休日出勤で残業した場合どうなる?
休日出勤した際に、通常の労働時間より長く働いてしまうこともあるかもしれません。そういった場合の賃金はどうなるのでしょうか。これも、上記の場合と同じ条件で、法定外休日の場合と、法定休日の場合に分けて考えてみましょう。
(1)土曜日(法定外休日)の場合
法定外休日の労働については、週の法定労働時間40時間を超えた部分については全て時間外労働と扱われるので、その部分については全て2割5分以上の割増賃金で計算すればよいということになります。しかし、時間外労働が深夜(22時~翌朝5時)に及んだ場合には、別途深夜労働の割増賃金として通常の賃金の2割5分以上が上乗せされます。従って、法定外休日の深夜労働部分については、2割5分+2割5分=5割以上の割増賃金が必要となります。
・9時~22時(内1時間休憩:実働12時間):1,000円×1.25×12時間=15,000円
・22時~23時:1,000円×1.5×1時間=1,500円
合計15,000円+1,500円=16,500円
(2)日曜日(法定休日)の場合
法定休日の労働については、時間外労働という概念はありません。その日一日の労働については全て休日労働の割増賃金で計算されます。仮に1日の法定労働時間8時間を超えて働いたからといって、休日労働の割増の他に時間外の割増がつくわけではありません。しかし、法定外休日の場合と同様、休日労働が深夜に及んだ場合には、深夜労働の割増賃金として通常の賃金の2割5分以上が上乗せされます。従って、法定休日の深夜労働部分については、3割5分+2割5分=6割以上の割増賃金が必要となります。
・9時~22時(内1時間休憩:実働12時間):1,000円×1.35×12時間=16,200円
・22時~23時:1,000円×1.6×1時間=1,600円
合計16,200円+1,600円=17,800円
休日出勤した週に有給休暇をとると損をするかも?
休日出勤しなければならない週に有給休暇を取る場合には、給料の計算はどのようになるのでしょうか。これについても、上記と同じ条件で、法定外休日と法定休日に分けて考えみましょう。
(1)土曜日(法定外休日)に休日出勤し、その週の他の日に有給休暇を取得した場合
土曜日(法定外休日)に出勤した場合では、土曜日に休日出勤したことにより、週40時間の法定労働時間を超えたため、土曜日の出勤分については時間外労働の割増賃金が必要となっていました。しかし、同じ条件で平日に有給休暇を取得した場合には、週の労働時間は32時間となり、土曜日に休日出勤したとしても週40時間の法定労働時間は超えないため、時間外労働の割増賃金は不要となります。休日出勤した週と同じ週に有給休暇を取得したことにより、手当が少なくなるのです。
(2)日曜日(法定休日)に休日出勤し、その週の他の日に有給休暇を取得した場合
一見、週に1日の休みは確保されているので、日曜日の出勤について休日の割増賃金は不要なのではないかと思われがちですが、そうではありません。有給休暇を取った日は法定休日とみなすことはできず、あくまで法定休日に労働したという事実は変わらないため、やはりその部分については休日労働の割増賃金は必要ということになります。
振替休日がとれない?半日でも取れる?
休日出勤をすることが事前に分かっている場合、振替休日を取得することができますが、多忙のために丸一日取るのが難しいこともあるかもしれません。そういった場合、半日単位で振替休日を取得することは可能なのでしょうか。
実際には、半日単位での振替休日の取得というものは法律上認められていません。本来、休日というものは、仮に1日8時間労働であれば8時間与えればいいというものではなく、丸一日(午前0時~午後0時)与えられるべきものであり、一日のうち数時間であっても労働する場合には、それは休日とは呼べないからです。しかし、これはあくまで法定休日の場合に限られます。
法定外休日に休日出勤した場合には、1週に1日の法定休日は確保できているので、必ずしも振替休日を与えなければならないわけではありませんし、法律上の決まりはないため、半日単位での取得も可能です。
パートタイマー・アルバイトが休日出勤した場合の扱いはどうなる?
パートタイマーや、アルバイトなど、所定労働時間が一般社員より短い労働者が休日出勤した場合はどうなるのでしょうか。パートタイマーやアルバイトの場合、出勤する日数も一般社員より少なかったり、シフト制であったりすることが多いと思います。
シフトでは休日とされていた日に出勤した場合、法律上休日労働の割増賃金が必要となるのは、法定休日に出勤した場合のみです。シフト制の職場では人によって休みがばらばらとなるため、就業規則等で法定休日を何曜日と定めていない場合が多いと思います。そのような場合はそれぞれの1週間に1日または4週間に4日の休みが法定休日となるのですが、それが確保できていれば、仮にシフトの中の法定外休日に出勤させたとしても休日出勤手当の支払いは不要です。
つまり、法律上は1週間のうち1日も休みなく出勤した場合のみ支払いの義務が発生するということです。この場合、労働時間が短くても関係はありません。
以上が原則ではありますが、仮に就業規則等で、「法定外休日の出勤に対しても休日出勤の割増賃金を支払う」などの定めをしている場合には、法定外休日の出勤に対しても休日出勤手当の支払いが必要となりますので注意してください。また、休日出勤の結果、週の労働時間が合計で法定労働時間の40時間を超えるようであれば、超えた部分に時間外労働の割増賃金が発生するのは他の一般社員と同じです。
まとめ
休日出勤の取り扱いは、労働者の賃金や労働時間、休日の管理に関わる重要なものです。休日出勤とは、労働者が本来労働の義務のない日に出勤することを差します。休日は、労働基準法上最低でも1週間に1日、または4週間に4日与えなければなりません。
休日出勤の休憩について
また、休日出勤の場合でも、休憩時間は通常の出勤と同様に与える必要があります。うまく管理できていない場合には、就業規則等でルールを明確にし、周知徹底を図りましょう。休日出勤した際に問題となる代休と振替休日ですが、代休は急な休日出勤に対応するために事後的に設定するもので、振替休日は計画的な労働日の変更としてあらかじめ設定するものです。
代休について
代休を与える場合には、休日出勤した休日が法定休日であれば休日出勤の割増賃金が必要であり、法定外休日であっても、週の労働時間が法定労働時間の40時間を超える場合には、超えた部分に対しては時間外労働の割増賃金が必要となります。
振替休日について
振替休日を与える場合には、休日労働の割増賃金は不要になりますが、代休同様、法定労働時間を超えた場合には時間外労働の割増賃金は必要です。会社が労働者に休日出勤を行わせるには、就業規則や労働契約への明記と、36協定の締結と監督署への提出が必要です。
この2つが行われている場合には、労働者に休日出勤の義務が生じます。しかし、会社側が理解できるやむをえない理由であれば、一定の配慮をするべきでしょう。
給与計算時の割増残業代について
休日出勤の給料の計算については、法定外休日の場合と法定休日の場合で異なります。法定外休日に労働した場合、休日労働の割増賃金は不要であり、それが祝日であっても同様です。
しかし、週の法定労働時間40時間を超えた場合には、超えた部分が時間外労働となり、2割5分以上の割増賃金の支払いが必要です。法定休日に労働した場合、休日労働に対し通常の賃金の3割5分以上の割増賃金の支払いが必要です。
休日出勤の深夜労働について
休日出勤で残業した場合も、法定外休日と法定休日の場合に分かれます。法定外休日に残業した場合、週の法定労働時間40時間を超えた部分については全て時間外労働として2割5分以上の割増賃金で計算しますが、時間外労働が深夜に及んだ場合には、深夜労働に対し2割5分以上の割増賃金が必要です。法定休日については、全て休日労働の割増賃金で計算されますが、深夜労働の割増賃金については法定外休日の場合と同様です。
有給と週40時間労働の関係
休日出勤した週に有給休暇を取ると、割増賃金が減ることがあります。法定外休日に休日出勤し、その他の日に有給休暇を取得した場合、休日出勤しても週40時間の法定労働時間は超えなくなった時には、時間外労働の割増賃金は支払い不要となります。
一方、法定休日に休日出勤し、その他の日に有給休暇を取得した場合、あくまでも法定休日の休日労働に対する割増賃金は必要ということになります。振替休日の半日単位での取得については、実際には法律上認められていませんが、法定外休日の場合は法律上の決まりはないため、半日単位での取得も可能です。
パート・アルバイトの休日出勤手当について
パートタイマーやアルバイトの場合、それぞれの1週間に1日または4週間に4日の休みが確保できていれば、仮にシフトの中の法定外休日に出勤させたとしても休日出勤手当の支払いは不要です。1週間に1日も休みがなければ、労働時間の長さは問わず、休日出勤手当の支払いが必要です。
仮に就業規則等で、「法定外休日の出勤に対しても休日出勤の割増賃金を支払う」などの定めをしている場合には、法定外休日の出勤に対しても休日出勤手当の支払いが必要となりますし、休日出勤の結果、週の労働時間が合計で法定労働時間の40時間を超えるようであれば、超えた部分には時間外労働の割増賃金が発生します。
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