雇用によらない働き方 ーフリーランスの光と闇ー
執筆: 田中靖子(たなかやすこ) | |
安倍内閣が力を入れている働き方改革は、フリーランスの活用にも及んでいます。厚生労働省は「柔軟な働き方に関する検討会」を開催し、フリーランスが働きやすい環境の整備について審議を重ねています。経済産業省は「雇用関係によらない働き方に関する研究会」を主宰し、フリーランスの実情に関する本格的な調査を行っています。
雇用によらない働き方とは、一体どのようなものなのでしょうか?サラリーマンとは何が違うのでしょうか?メリットとデメリットのどちらが大きいのでしょうか?
今回の記事では、外からは分からないフリーランスの実態を解説し、企業に頼らない新しい働き方の可能性を紹介します。
「雇用によらない働き方」とは
雇用によらない働き方とは、「企業との雇用契約に頼らない働き方」のことです。一言で「雇用によらない」と言っても、様々な働き方があります。大きく分けると以下の3つに分類されます。
(1)個人事業主 ーインディペンデント・コントラクターー
1つ目は、企業との雇用関係を全く持たない個人事業主です。
専門知識やスキルを生かし、複数の企業と業務単位の請負契約を結んで仕事をする形態です。プロジェクトごとの契約が基本となるため、企業との結びつきは強くありません。企業から完全に独立して仕事をするので、インディペンデント・コントラクター(IC=独立業務請負人)とも呼ばれます。
例えば、ウェブデザイナーとして働くAさんの場合を考えてみましょう。X社からホームページ制作の仕事が入った場合は、「納期を来月末、制作料を30万円」としてX社と契約を結びます。ホームページが完成すれば契約関係は完全に終了し、それ以降は一切関わりが無くなります。飲み会に誘われたり、年賀状やお歳暮などの時節の挨拶をすることもありません。
Aさんの納期は来月末なので、それまでにホームページが完成するのであれば、友人と海外旅行に出かけても構いませんし、平日昼間にのんびりショッピングに行くこともできます。X社がAさんの動向を監視することはありません。
ただし、ホームページの出来栄えにX社が満足しなければ、今後に継続して仕事が舞い込むことはありません。サラリーマンとは異なり、仕事の一つ一つにAさんの将来がかかっています。
(2) 副業 ーすきまワーカーー
2つ目は、企業で働きながら休日などの空いた時間に別の仕事をして収入を得るというワークスタイルです。会社での仕事をメインとしているため、このような勤務スタイルを副業と言います。空き時間を活用した労働スタイルであるため、すきまワーカーとも呼ばれます。
副業の場合は、お小遣い稼ぎ程度のアルバイトが一般的です。業種は様々ですが、グラフィック制作やプログラミングなどの自宅で行うことができる職種は人気があります。データ入力やテープ起こし、夜間のコールセンターなど、専門的なスキルを求められない職種は、初心者でも始めやすい業務として注目を集めています。
反対に、株式運用やセミナー講師など専門知識が必要となる職種は、数が限られています。しかしこのような専門性の高い仕事を副業として行っている人は、メインの仕事以上に稼いでいるという人も珍しくありません。
すきまワーカーのメリットは、余暇を利用してスキルアップにつなげることができること、社外でのネットワークを広げることができること、会社との雇用関係を確保しているので安定した地位を維持することができること、などがあります。
最近では、クラウドソーシングを利用して副業をする人が増えています。クラウドソーシングとは、インターネット上で不特定多数の人から応募を募り、気に入った人を選んでその場限りで業務を依頼するという方法です。最初から最後まで相手の顔を見ない、ということも珍しくありません。
クラウドとは「不特定多数の人(Cloud)」、ソーシングとは「仕事を依頼する(Sourcing)」という意味です。
クラウドソーシングはスマホを使って簡単に仕事を始めることができるため、副業でお小遣い稼ぎをしたい人にとって最も利用しやすい手段です。例えば、派遣として平日は建設会社で働きながら、有給や週末を利用してクラウドソーシングでイラスト制作の仕事をこなすというスタイルです。
会社が副業を禁止している場合もありますが、全面的に禁止している会社は意外にも多くありません。多くの会社では、「土日に限る」「本業に支障を来さない範囲に限る」などのルールを設けて、副業を許可制としています。
さらに最近では、積極的に副業を推奨する企業が増えています。2016年12月に政府が副業を支援する政策を発表したことで、企業が積極的に副業を容認する方向に動き出しました。
ロート製薬株式会社は「社外チャレンジワーク制度」を打ち出し、企業の枠に囚われない自由な働き方を支援しています。その他にも、ヤフー株式会社、株式会社サイバーエージェントなど、大手の企業が次々と副業を推奨する方針を発表しています。株式会社サイバーエージェントの子会社である株式会社サイバー・バズに至っては、「副業採用(助っ人採用)」という新しい採用スタイルを打ち出しました。他社に採用されている人を採用対象としており、副業と前提とした新しい求人スタイルです。
いずれの企業においても、「社外の業務を経験させることで視野の広い人材を育成する」「会社の枠に囚われない自由な発想を活性化する」という狙いがあります。
3)兼業・複業 ーパラレルワークー
3つ目は、複数の企業の仕事を掛け持ちするというスタイルです。2つ目の「副業」と似ていますが、パラレルワークの場合は「どれもメインの仕事として本格的に取り組んでいる」という点が異なります。
1つ目の「個人事業主」と異なる点は、複数の企業から雇用されているという点です。個人事業主の場合は、プロジェクトベースで契約するため、企業との雇用関係はありません。パラレルワークの場合は、複数の企業と雇用契約を結んでいます。ただし、多くの場合は年単位や月単位で契約しており、サラリーマンのような終身雇用は保障されていません。
パラレルワークの場合は、複数の企業と雇用関係にあるため、厳密に言うと「雇用されていない者」ではありません。しかし、一つの企業に依存しておらず、労働者としての独立性が高いため、「雇用によらない働き方」に分類されます。
パラレルワークの働き方は、多種多様です。ウェブデザイナーとして午前中はX社で働き、午後はY社で働くというスタイルもあります。
異なる業種を掛け持ちすることもあります。平日は広告代理店で働き、週末はキャリアコンサルタントとして活動する、という人もいます。ネイリストとインテリアコーディネーターを掛け持ちしたり、薬剤師とファイナンシャルプランナーを掛け持ちしている人もいます。
どの仕事も本業として力を入れているので、このような働き方は「パラレルワーク」と呼ばれます。パラレルとは「平行している」という意味です。
以上のように、雇用によらない働き方には3つの種類があります。この3種類の働き方をまとめて、以下では「フリーランス」と呼びます。
会社に頼らないで収入は大丈夫なのか?
「フリーランス」と聞くと、どのようなイメージがあるでしょうか?
「自由に仕事をすることができてかっこいい」という良いイメージがある一方で、「会社からのお給料に頼らないで生活はやっていけるのだろうか」という収入面でのマイナスのイメージが大きいのではないでしょうか。
経済産業省が発表したデータによると、フリーランスの約24%は年収100万円未満にとどまっています。つまり、フリーランスの4人に1人は、生活できるほどの十分な収入を手にしていません。
サラリーマンを含む雇用者全体で見ると、年収100万円以下の割合は約15%にとどまります。一般的なサラリーマンと比較すると、フリーランスは低所得者の割合が高いと言えます。そのため、「フリーランスの年収は低い」という印象を与えています。
しかし、このデータにはからくりがあります。
以下の2点に注目してみましょう。
(1)主たる生計者の年収はサラリーマンよりもむしろ高い
フリーランスの多くは、主たる生計者ではありません。子育てを優先しながら仕事を続けている女性や、資格の勉強をしながら空いた時間にお小遣い稼ぎをしている人など、何らかの事情により仕事を第一にすることができない人が多数を占めています。
つまり、大多数のフリーランスは生活費を稼ぐことを目的としていません。「フリーランスだから収入が低い」のではなく、「収入が低くても良いから自由に働きたいという人がフリーランスを選択している」という構図があります。
経済産業省が行ったアンケートを見ても、フリーランスを選んだ理由の第1位は「自分の好きな仕事に集中したい」です。収入よりも仕事のやりがいそのものを重視していることが分かります。
それでは、フリーランスとして生計を立てている人はどうでしょうか?十分な生活費を稼ぐことができているのでしょうか?
フリーランスの中で主たる生計を担っている人に着目すると、年収600万円以上が26%にものぼります。年収1,000万円を超える人は10%です。いずれも一般サラリーマンと比較しても高い割合です。
つまり、主たる生計者の年収は、一般的なサラリーマンよりもむしろ高いという結果になります。
「フリーランスの年収が低い」というイメージは、データとしては間違っていません。しかし、年収の低さは「好きな仕事に集中する」というフリーランスの働く姿勢に起因しています。生計を担っているフリーランスの場合は、一般的なサラリーマンよりも高い収入を得ています。
(2)約半数ものフリーランスが収入に満足している
経済産業省が発表したデータによると、フリーランスの約45%が「現在の収入に満足している」と回答しています。
フリーランスの約24%が年収100万円未満にとどまっているにも関わらず、半数ものフリーランスが現在の収入に満足しています。これはどういうことなのでしょうか?
フリーランスの平均年収は低いとは言え、「労働時間も短い」という点を忘れてはいけません。つまり、手にする収入は低いものの、「コストパフォーマンスは良い」ということです。そのため「収入面に満足している」という回答が半数にも上ります。
フリーランスは仕事をする時間を自由に設計できるだけでなく、仕事にまつわる諸々の時間を節約することができます。
まず、通勤時間はゼロです。都内に勤務するサラリーマンの平均通勤時間が片道58分であることからすると、フリーランスは毎日約2時間もの時間を節約することができます。時間的な節約だけでなく、通勤ラッシュに巻き込まれる精神的ストレスからも解放されています。
また、フリーランスはスーツを着る必要もありません。お化粧をする必要もありません。朝寝坊をしても怒られる心配はありません。好きな時間に起きて、自宅でテレビを付けながら仕事をすることもできます。
通勤のための準備時間は、女性の場合は1時間程度、男性の場合でも30分程度はかかります。通勤時間を合わせて考えると、フリーランスは毎日2.5〜3時間ほどの時間を節約できます。月単位で考えると、約50〜60時間もの時間を自由に使うことができます。
さらに、フリーランスはわずらしい付き合いに巻き込まれることがありません。歓迎会や忘年会に付き合いで参加する必要はありません。無駄な会議に出席する必要もありません。上司のタバコについて行ったり、付き合いでランチに出かける必要もありません。
このように、フリーランスの場合は、データには現れない様々な時間を節約することができます。企業に勤務するサラリーマンは、通勤ラッシュや飲み会などの時間を考えると、膨大な時間を企業のために費やしています。
以上の時間の節約を考えると、フリーランスは短い時間で効率的に仕事を片付けることができます。額面としての収入は低いものの、コストパフォーマンスが良いため、約半数のフリーランスが現在の収入に満足しています。
フリーランスの闇
以上では、フリーランスの収入面での実態を紹介しました。フリーランスの収入面での満足度は高いことは分かりましたが、その他の点ではデメリットは無いのでしょうか?
収入面での満足度が高いとは言え、フリーランスを取り巻く環境には未だ多くの課題が残っています。
(1)いざというときのセーフティーネットが無い
日本の社会保障制度はサラリーマンを念頭に置いて設計されているため、フリーランスにはいざというときのセーフティーネットがありません。
サラリーマンの場合は、あらゆる場面において補償が充実しています。仕事で怪我をした場合には、ゆっくり入院することができます。休業補償を受け取ることができるので、治療費を気にする必要がありません。突然病気で倒れたときには、仕事を休んでゆっくり療養することができます。出産や育児で仕事を休んだとしても、健康保険や雇用保険で生活費をまかなうことができます。さらに、定年退職した後には企業年金を受け取り、のんびりと老後を過ごすことができます。
フリーランスはこのような補償を受けることができません。怪我や病気で仕事ができなくなれば、その途端に収入が途絶えてしまいます。育休や産休といった制度もありません。自分の都合で仕事を休むことは自由ですが、休めば休んだ分だけ収入の減少として跳ね返ってきます。
フリーランスの場合は、65歳の定年退職を気にする必要が無いため、好きなときに仕事を辞めることができます。しかし、仕事を辞めればその時点で収入は途絶えます。企業年金に加入していないため、公的な基礎年金しか受け取ることができません。老後の蓄えが十分でない限り、引退することはできません。
もちろんフリーランスの場合でも、自分で民間の保険を探し出して自らセーフティーネットを整えることはできます。しかし、どのような保険が自分に合うのかは、自分で判断しなければいけません。保険料も自分で払わなければいけません。自分自身で最適な保険を探し出したうえで、自分のお財布から保険料を支払わなければいけません。
このように手間がかかるため、大多数のフリーランスは保険に加入していません。精力的に仕事をこなしている間は顕在化しないものの、常に病気や怪我で収入が断絶するというリスクを抱えています。
(2)スキル形成にお金をかける余裕が無い
フリーランスは自己のスキルを売りにして仕事を受注するため、スキル形成が最重要の課題となります。自己のスキルを磨けば磨くほど、請け負うことができる仕事の選択肢が広がるため、スキルアップが収入アップに直結します。
反対に考えると、フリーランスがスキル形成を怠ると、いつまでたっても昇給することはありません。サラリーマンが年功序列で自動的に基本給が上がっていくことに比べると、フリーランスの昇給は非常にシビアな問題です。
このようなシビアな状況に置かれているにも関わらず、フリーランスの約48%はスキル形成に費用をかけていません。スキルを磨くための費用は自分で負担しなければいけないからです。しかもスキルアップのために仕事を休めば、その分だけ収入が減少します。
サラリーマンの場合は、多くの会社がスキルアップの制度を設けています。会社に費用を負担してもらったうえで、専門的なセミナーに参加したり、資格の勉強をすることができます。資格試験を受けるために休暇を優遇してくれる会社もあります。
企業がスキルアップを支援することには多くのメリットがあります。会社が講習会の費用を負担した場合には、経費として計上することができます。従業員のスキルアップを手助けしながら、企業としても節税できるというメリットがあります。従業員一人一人のスキルが上がれば、会社全体のモチベーションも上がります。
一方で、フリーランスは自己責任でスキルアップをしなければいけません。参加費は自分で捻出しなければいけませんし、もちろん交通費や宿泊費も自費で払わなければいけません。セミナーに参加するために仕事を休めば、その分だけ収入が減少します。
(3)ネットワークを広げるためには自分から動かなければいけない
フリーランスは単独で仕事をすることが多いため、他の職種についての情報を得ることができず、視野が狭くなる傾向にあります。
サラリーマンの場合は、上司や部下などの周囲の人から様々な仕情報を得ることができます。自分が直接関わっていないプロジェクトについても、自然と知識を身につけることができます。このように、会社に勤務しているメリットとして、情報網が広がり広範な知識を吸収できるということがあります。
フリーランスの場合は、新しい情報を得るためには自分から積極的に動かなければいけません。上司や同僚を頼ってノウハウを教えてもらうことはできません。自分で情報を集めたうえで、自己判断で情報を取捨選択をして正しい情報を選び抜かなければいけません。
フリーランスの光
以上のように、フリーランスには多くの課題が残されています。
しかし、政府がフリーランスの活用に動き出したことをきっかけとして、最近ではフリーランスを再評価する声が高く上がるようになりました。
フリーランスの将来は明るいのでしょうか?
以下では、フリーランスを再評価する動きを紹介します。
(1)フリーランスを活用する企業が増えている
政府がフリーランスを支援する政策を発表したことで、フリーランスを活用する企業が急速に増えています。平成28年の調査によると、約19%の企業が実際にフリーランスを活用した経験があり、今後の活用を検討している企業は約34%にも上ります。
大手の企業でもフリーランスを活用するケースが増えています。みずほ証券では、金融機関に勤務経験のある社外のフリーランスをプロジェクト単位で活用しています。株式会社サイバーエージェントでは、アプリ開発の技術を持つフリーランスを積極的に起用しています。イラストやデザイン業務についても、社外のフリーランスを活用しています。
株式会社ポーラでは、ショップオーナーやビューティーディレクターという重要な役職についてフリーランスを起用しています。年収1億円以上のグループマネージメントをする女性リーダーとしてもフリーランスを採用しています。
どの企業にも、「自社では得られない人材を活用したい」「専門知識や専門スキルを活用したい」という理由が共通しています。
(2)政府がフリーランスの働きやすい環境を整えることに力を入れている
安倍内閣は、「雇用関係によらない働き方に関する研究会」を開催し、フリーランスの活用に乗り出しています。フリーランスに関する規制を緩和し、フリーランスが働きやすい法環境を整えることに力を入れています。
現時点では副業や兼業について多くの規制がありますが、今後はますますフリーランスが働きやすい環境が実現するかもしれません。政府の公的支援があるということは、フリーランスの将来に確実な追い風となっています。
なぜ今フリーランスの活用なのか?
それでは、政府は具体的にはどのような政策に取り組んでいるのでしょうか?
以下では、政府の取り組みについて解説します。
そもそも、なぜ政府は今フリーランスの活用に力を入れているのでしょうか?
理由は2つあります。
(1)女性が働きやすい環境を整えることで少子高齢化対策とする
日本は深刻な少子高齢化に直面しています。少子化の大きな原因として、「女性が仕事と子育てを両立できない」という実態があります。
これまでの政府は、女性が仕事と子育てを両立できるようにするために、保育園を増設したり、育休制度を充実させる方向で政策を進めてきました。
しかし、未だに待機児童問題は解消されておらず、長期間での育休を取得しづらいという問題が残っています。そこで政府は、「子育て中の女性が企業にしがみつく手段を支援するだけではなく、企業に頼らず柔軟に働ける環境を整えるべきだ」という方向に動き出しました。
女性がフリーランスとして自由に働くことができれば、出産や子育てという時間的制約に悩まされることなく、柔軟に仕事を続けることができるということが期待されています。
(2)高齢者や女性が働きやすくなることで労働力不足を補う
政府が着目しているのは、子育て中の女性に限りません。心身を壊して会社で働けなくなった人や、親族の介護で会社を離れなければいけなくなった人など、日本全国には様々な事情でサラリーマンとして勤務することができない人がたくさんいます。
今の日本では、一度会社を離れると社会復帰を果たすことが困難となるという現状があります。このような人々が、それぞれのライフステージに合わせて柔軟な働き方を選択できるようになれば、少子高齢化対策になるだけでなく、労働力不足を補うことができ、ひいては国民全体のQOL(人生の幸福度)も上がります。
フリーランスの活用のための具体的な改革内容は
それでは、具体的にどのような政策が検討されているのでしょうか?
(1)社会保障制度をフリーランスにも適用できるように改革する
フリーランスは、病気や出産により収入が途絶えるというリスクを常に抱えています。このようなリスクを払拭するためには、公的支援を拡大することが必須です。
具体的には、新たな民間保険を創設して休業時の補償制度を充実させるという方法や、廃業後の生活資金を積み立てる小規模企業共済制度を周知させるという方法が検討されています。
これらの方法によりセーフティーネットが充実すれば、フリーランスが休業や廃業のリスクに悩まされることが無くなり、意欲的に仕事に取り組むことができるようになります。
将来的にサラリーマンと同等のセーフティーネットが実現すれば、サラリーマンからフリーランスに転身するハードルも低くなります。
(2)転職や再就職を支援して格差を固定化させない教育を進める
フリーランスに興味はあるものの、なかなか会社に辞職届を出すことに踏み切れないという人は多いのではないでしょうか?
会社を辞めることに抵抗がある人は、「一度会社を辞めたら二度と社会復帰することができない」というリスクを恐れています。確かに、会社から会社への転職は一般的になりつつありますが、フリーランスから企業への再就職というプロセスは未だに多くありません。
「一度会社を辞めると二度と戻れない」というリスクを払拭しない限り、多彩なスキルを持つ人であってもなかなかフリーランスに転身することはできません。そこで安倍政府は、転職や再就職を支援することで、格差の固定化を解消することを試みています。
また、フリーランス向けの職業教育や職業訓練を充実させることで、フリーランスが廃業したとしても企業に再就職しやすい環境を整えることが検討されています。
将来的にはフリーランスとサラリーマンの垣根が低くなり、ライフステージに合わせて自由に行き来できるようになるかもしれません。
(3)フリーランスの社会的地位を上げる
フリーランスは社会的信用が低く、特に年配層からは「企業に勤めてこそ一人前である」「フリーランスは不安定で頼りがいがない」という印象を持たれています。
このような社会的信用の低さは、普段仕事をしているときには気にする必要がありません。しかし、家を建てる際に住宅ローンを断られたり、事業資金を受けにくいというデメリットがあります。
政府はこのような社会的地位の低さを深刻な問題と捉えており、フリーランスの地位を向上させる政策を検討しています。金融機関に対しては、フリーランスの収入リスクを過大評価することのないように警鐘を鳴らしています。フリーランス向けの新たな金融サービスを提供することも検討されており、将来的にはフリーランス向けの住宅ローンプランや事業資金サービスが創設されるかもしれません。
フリーランスの将来性は結局は自己責任
時代の流れにより、雇用によらない働き方を選択する人が増えています。フリーランスは自由に働くことができるというメリットがあるものの、いざというときのセーフティーネットが無いなど多くの課題が残されています。
しかし、政府は雇用関係によらない働き方に関する研究会を開催するなどフリーランスの活用に本格的に乗り出しています。近い将来、フリーランスに関する規制が緩和され、フリーランスが働きやすい法環境が実現するかもしれません。
政府による改革が実現するか否かに関わらず、フリーランスとして自由な働き方を選択する以上、常に責任が伴うということに変わりはありません。結局のところ、フリーランスの将来が明るいのかどうかは、政府の意向に依存するのではありません。各々のフリーランスがどのような価値観を持ち、どのような姿勢で仕事に取り組むのかによって決まります。
目の前の仕事に一つ一つ真摯に取り組むことこそが、フリーランスの社会的地位を上げ、ひいてはフリーランスが働きやすい環境の実現につながるのではないでしょうか。
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