勤怠管理入門|#2勤怠管理の肝は労働時間を分類して「箱」に収納することである
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
「勤怠管理入門」シリーズでは、勤怠管理を行うにあたって知っておきたい基礎知識を体型的に学ぶことができ、新人の労務担当者の方でも全体イメージをつかむことができる情報配信を目指しています。
第2回目の本記事では、勤怠管理のもっとも重要な部分の一つ、労働時間の分類についてです。労働時間の分類について正確な知識を身につければ、労務管理の質が高まります。それでは一つ一つ確認していきましょう。
労働時間を「箱」に収納するという考え方
勤怠管理をやる上で基本となるのは、始業時刻と終業時刻を記録することです。これについては前回の記事でご説明させていただきました。
そして次の重要なステップは、始業時刻と終業時刻から算定した労働時間を、定めたルールに基づいて分類して、分類項目ごとに時間を集計するという作業です。
イメージで表すと、様々な種類の「箱」が用意されていて、労働時間を性質に応じて分割し、分けた労働時間をそれおぞれ適切な箱に収納していくという感じです。分類して収納する「箱」として最初に知っておくべきものを紹介しておきます。
※ちなみにこれから説明する項目の名称・定義は会社によって微妙に異なる場合もあるのでご注意ください。
箱の名前 | 箱に入れる時間の定義 |
拘束時間 | 拘束時間とは、オフィスに入ってからオフィスを出るまでの時間です。業務の途中にもうけた休憩時間も含めています。 |
総労働時間 | 総労働時間とは、休憩時間を除いた労働していた時間の合計のことです。 |
休憩時間 | 休憩時間とは、始業から終業までの間で労働をせずに休んでいた時間のことです。 |
所定内労働時間 | 所定内労働時間とは、労働契約で定められて、合意している労働時間のことです。 |
所定超法定内労働時間 | 所定超法定内労働時間とは、労働契約で定めた労働時間を超えて働いた時間のうち、労働基準「法」で定められた1日8時間、週40時間上限より少ない労働時間のことです。 |
法定外労働時間 | 法定外労働時間とは1日8時間を超える労働時間、そして週40時間を超える労働時間のうち1日8時間を超える労働時間と重なる部分を控除した時間のことです。 |
日でみて、週で見ると、月が見えてくる
具体的な事例を見ながら、時間を箱に分類する方法を見ていきましょう!
例えば下記のような労働契約を締結した労働者がいるとします。
定時勤務:10:00〜17:00
休憩時間:1時間
STEP1:1日の労働時間を箱に分類していく
ある休日ではない出勤日の勤務実績として10:00〜21:00まで仕事をして、12:00〜13:00で休憩したとしましょう。
拘束時間
上記の10:00〜21:00の11時間は「拘束時間」の箱に収納します。
休憩時間と総労働時間
「休憩時間」1時間を除いた10時間を「総労働時間」の箱に入れます。
所定労働時間
労働契約では10:00〜17:00のうち休憩時間を除いた6時間を「所定労働時間」の箱に入れます。
所定超法定内労働時間
17:00〜19:00までの2時間は労働契約の時間を超えていながらも、労働基準法で定められた上限8時間を超えていないので、「所定超法定内労働時間」の箱に入れます。
法定外労働時間
19:00〜21:00の2時間分は法律で定められている制限時間の8時間の労働時間を超える時間であるため、「法定外労働時間」の箱に収納します。
上記の勤務時間をまとめると下記のようになります。
箱の名前 | 箱に収納された時間 |
拘束時間 | 11時間 |
総労働時間 | 10時間 |
休憩時間 | 1時間 |
所定内労働時間 | 6時間 |
所定超法定内労働時間 | 2時間 |
法定外労働時間 | 2時間 |
1日単位で労働時間を分類して集計するステップを繰り返すことで、週単位の勤怠集計、月単位の勤怠集計に繋がっていきますので、基本として以上の考え方をぜひ覚えておいてください。
STEP2:週で見て箱の中身を調整する
日ごとの集計を終えて箱がたくさん出来上がったと思います。しかし週ごとでも労働時間を見ていくことが必要です。なぜなら労働基準法では、一部の業種を除いて週40時間までが労働時間の上限となっているからです。40時間を超えると法定外労働時間として集計する必要があるので、日ごとに収納してきた箱の中身を調べていきましょう。
曜日 | 日の種別 | 始業時刻 | 終業時刻 | 休憩時間 | 総労働時間 | 所定内労働時間 | 所定超法定内労働時間 | 法定外労働時間 |
月 | 所定労働日 | 10:00 | 18:00 | 1:00 | 7:00 | 6:00 | 1:00 | 0:00 |
火 | 所定労働日 | 10:00 | 19:00 | 1:00 | 8:00 | 6:00 | 2:00 | 0:00 |
水 | 所定労働日 | 10:00 | 19:00 | 1:00 | 8:00 | 6:00 | 2:00 | 0:00 |
木 | 所定労働日 | 10:00 | 18:00 | 1:00 | 7:00 | 6:00 | 1:00 | 0:00 |
金 | 所定労働日 | 10:00 | 17:00 | 1:00 | 6:00 | 6:00 | 0:00 | 0:00 |
土 | 所定労働日 | 10:00 | 17:00 | 1:00 | 6:00 | 6:00 | 0:00 | 0:00 |
日 | 法定休日 | – | – | – | – | – | – | – |
例えば日の集計を繰り返して、上記のような労働実績が出そろったとします。このケースでは1日ごとに見ていくと労働基準法の1日8時間の上限を超える労働時間は発生していませんので、「法定外労働時間」の箱はすべての日でからっぽ(0時間)となっています。
次に、1日ごとの箱を、1週間の箱に収納していきます。イメージは下記のスライドのような感じです。
そして週の箱を見てみると、労働時間を単純合算された下記の表の数値が入っています。
総労働時間 | 所定内労働時間 | 所定超法定内労働時間 | 法定外労働時間 | |
合計 | 42:00 | 36:00 | 6:00 | 0:00 |
労働基準法では、週40時間の制限があるので、40時間を超えた労働時間のうち、1日8時間超の労働時間とかぶらない時間は法定外労働時間となります。今回のケースでは、1日ごとで見ると法定外労働時間は0時間ですが、週で見ると40時間を超えた時間が2時間あるので、その2時間が法定外労働時間となります。
そして週40時間超の法定外労働時間を認識するタイミングは、「総労働時間が」40時間を超えたタイミングなので、最後の所定労働日の「後ろの」2時間部分を法定外労働時間として集計することになります。改めて週で見て調整を加えた表を示すと下記の通りです。
曜日 | 日の種別 | 始業時刻 | 終業時刻 | 休憩時間 | 総労働時間 | 所定内労働時間 | 所定超法定内労働時間 | 法定外労働時間 | |
日単位 | 週単位 | ||||||||
月 | 所定労働日 | 10:00 | 18:00 | 1:00 | 7:00 | 6:00 | 1:00 | 0:00 | 0:00 |
火 | 所定労働日 | 10:00 | 19:00 | 1:00 | 8:00 | 6:00 | 2:00 | 0:00 | 0:00 |
水 | 所定労働日 | 10:00 | 19:00 | 1:00 | 8:00 | 6:00 | 2:00 | 0:00 | 0:00 |
木 | 所定労働日 | 10:00 | 18:00 | 1:00 | 7:00 | 6:00 | 1:00 | 0:00 | 0:00 |
金 | 所定労働日 | 10:00 | 17:00 | 1:00 | 6:00 | 6:00 | 0:00 | 0:00 | 0:00 |
土 | 所定労働日 | 10:00 | 17:00 | 1:00 | 6:00 | 4:00 | 0:00 | 0:00 | 2:00 |
日 | 法定休日 | – | – | – | – | – | – | – | – |
この週の集計を繰り返すことで、月の集計を行うことにつながります。少しづつ複雑になってきましたが、1つ1つをじっくり見ていけば、考え方は実にシンプルです。
STEP3:月ごとの労働時間の分類集計
月ごとの集計は、上記の日の集計と週で見たときの調整を加えた結果を1ヶ月分集めることで集計できます。ここで通常の労働時間制度を設けている場合には特に考慮する必要はありません。
ただし、変形労働時間制(フレックスタイムや1ヶ月単位変形など)と呼ばれる制度を活用している企業であれば、上記の日ごとの集計と週で見たときの調整の手続きもやり方が変化しますし、月ごとの労働時間に対しても調整を加えていくことが要求されます。
その変形労働時間制の考え方については次回以降で見ていきたいと思いますので、今回は割愛します。
労働時間を箱に収納するという考えまとめ
いかがでしたでしょうか。今回ご紹介したのは、始業時刻と終業時刻を管理するという勤怠管理の原点処理から一歩進んで、その次は何をするのかという部分でした。まずは労働時間をしっかりと記録しておき、その時間を正確に分類して、正しいラベルをつけて、正しい箱に収納することです。日で見たときの労働時間を分類し、週で見たときに40時間の調整を行い、月ベースで分類した労働時間を、分類ごとに集計することで、毎月の勤怠管理作業はゴールとなります。
ただし、今回説明したのは本当にシンプルな勤怠ステータスの労働者を想定したパターンです。本当の実務の現場では、各種休暇や休日労働、振替休日・代休、日をまたぐ勤務など様々な難問が待ち構えています。しかも、変形労働時間制を採用している企業であれば、今回説明した考え方とは異なる対応が必要となります。
勤怠管理は奥深い世界ですが、一つずつ体系的な知恵に昇華していきましょう。今回もご覧いただきありがとうございました!
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