過労死白書から読む、働き方改革実行計画

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部

ネクタイを緩めるサラリーマン

2017年版の過労死白書(平成29年版過労死等防止対策白書)が公開されました。
 

労災認定の過労死・自殺が191件と高止まり傾向にある点。その温床と考えられる長時間労働について、フルタイムワーカーの1年間の総労働時間が2024時間とこちらも高止まりしている点。そして、「過労死ライン」と呼ばれる月80時間超の時間外労働と考えられる週20時間以上の時間外労働をした人が7.7%に達した点が指摘されるなど、過労死問題が改善していない点が強調された白書となっています。
 

この記事では、そういったファクトについてでなく、白書から読める政府の働き方改革実行計画の概要や、実施状況などを紹介します。
 

『過労死等ゼロ』緊急対策のおさらい

白書の第4章「過労死等の防止のための対策の実施状況」では、政府の過労死防止への取組みが説明されています。
これは、2016年(平成28年)12月26日に、「過労死等ゼロ緊急対策」として、長時間労働削減推進本部により決定されたものです。
 

違法な長時間労働を許さない取組みの強化

  1. 新たなガイドラインによる労働時間の適正把握の徹底
  2. 長時間労働等に係る企業本社に対する指導
  3. 是正指導段階での企業名公表制度の強化
  4. 36協定未締結事業場に対する監督指導の徹底

 

メンタルヘルス・パワーハラスメント防止対策のための取組みの強化

  1. メンタルヘルス対策に係る企業本社等に対する特別指導
  2. パワーハラスメント防止に向けた周知啓発の徹底
  3. ハイリスクな状況にある労働者を見逃さない取組みの徹底

 

社会全体で過労死等ゼロを目指す取組みの強化

  1. 事業主団体に対する労働時間の適正把握等について緊急要請
  2. 労働者に対する相談窓口の充実
  3. 労働基準法等の法令違反で公表した事案のWebサイトへの掲載

 

労働基準法の改正の方向性

政府見解では、日本労働組合総連合会、日本経済団体連合会の両団体が時間外労働の上限規制等に関して労使合意したとしています。それを踏まえ、以下の方向性で改正される計画です。
 

  • 現行の限度基準告示を法律に格上げし、罰則による強制力を持たせる
  • 上限無く時間外労働が可能となっていた臨時的な特別の事情がある場合として労使が合意した場合であっても、上回ることのできない上限を設定する

 
上記方向性にそって、時間外労働の上限規制、パワーハラスメント対策、メンタルヘルス対策、勤務間インターバル制度について法定化されようとしています。
 

時間外労働の上限規制

  • 週40時間を超えて労働可能となる時間外労働の限度を、原則として、月45時間、かつ、年360時間とする。
  • 特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合 意して労使協定を結ぶ場合においても、上回ることができない 時間外労働時間を年720時間とする。
  • かつ、年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限として(1)2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均で、いずれにおいても、休日労働を含んで、80時間以内(2)単月では、休日労働を含んで100時間未満(3)原則を上回る特例の適用は、年6回を上限
  • 労使が上限値までの協定締結を回避する努力が求められる点で合意したことに鑑み、さらに可能な限り労働時間の延長を短く するため、新たに労働基準法に指針を定める規定を設け、行政官庁は、当該指針に関し、労使等に対し、必要な助言・指導を行えるようにする。

 

パワーハラスメント対策、メンタルヘルス対策

健康に働くための職場環境の整備にむけて、労働時間管理の厳格化のみならず、上司や同僚との良好な人間関係づくりの重要性が指摘されています。
 

職場のパワーハラスメント防止を強化するため、政府は労使関係者を交えた場で対策の検討を行い、過労死等防止対策推進法に基づく大綱において、メンタルヘルス対策等の政府目標を見直しながら議論を進めています。
 

勤務間インターバル制度

労働時間等設定改善法を改正し、事業者は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努める努力義務を課そうとしています。
 
そのために、普及促進に向けて労使関係者を含む有識者検討会を開催している他、制度の導入が困難だと考えられる中小企業に、関連する助成金の活用や事例を周知することとしています。
 

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『人事労務の基礎知識』編集部
『人事労務の基礎知識』編集部
株式会社BEC内で、Gozal(ゴザル)の編集制作を担当する部門です。社会保険労務士/弁護士/税理士などの専門家執筆陣とともに、中小企業の労務・給与計算担当の方が実務上感じる不安を払拭できるよう、情報発信しています。「こんな記事を読みたい!」とTwitterやFacebookでメッセージいただければ、可能な限り執筆いたします。