求人・募集のルールが変更〜2018年1月に職業安定法が改正されます〜
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
労働者募集や求人のルールが定められている、職業安定法の一部の改正を含む「雇用保険法等の一部を改正する法律」が、2017年(平成29年)3月31日に成立・公布されました。
改正法の施行は3段階で行われ、既に施行された(1)2017年4月1日〜、(2)2018年1月1日〜施行分、(3)公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日に施行される(予定)分と別れています。今回は(2)2018年1月1日〜施行分について、求人する企業向けの注意点(変更点含む)を紹介します。
労働条件の明示タイミング
Webサイトで求人する場合や、ハローワーク等の外部募集媒体を利用して求人する場合、求人開始から労働契約が締結されるまでの期間、下記の条件を明示する必要があります。
求人開始時
募集要項や求人票に、労働条件を明示します。注意事項は下記の通りです。
- 求人票のスペースが足りない等、やむを得ない場合には、「詳細は面談の時にお伝えします」などと書いた上で、労働条件の一部を別途明示することも可能です。
- 全ての労働条件は、最初の面接時(求人者と求職者が最初に接触する時点)までに、明示すべきとされています。
労働条件に変更がある時
- 面接等の過程で労働条件に変更があった場合、速やかに求職者に知らせるよう配慮が必要です。※今回の法改正で新設
労働契約締結時
労働条件通知書等による労働条件の通知が必要です。これは、労働基準法で定められています。
※参考:厚生労働省「モデル労働条件通知書」
必ず明示が必要な労働条件
求人する際は、最低限以下の事項を書面で公布し明示する必要があります。
求職者が希望する場合には、電子メールでの明示も可能です。
★印は、今回の法改正で追加された項目です。
労働条件明示の遵守ポイント
労働条件を明示する場合「職業安定法に基づく指針」等の遵守が必要です
職業安定法に基づく指針等の主な内容
- 明示する労働条件は、虚偽又は誇大な内容としてはなりません。
- 有期労働契約が試用期間としての性質を持つ場合、試用期間となる有期労働契約期間中 の労働条件を明示しなければなりません。また、試用期間と本採用が一つの労働契約であっても、試用期間中の労働条件が本採用後の労働条件と異なる場合は、試用期間中と本採用後のそれぞれの労働条件を明示しなければなりません。
- 労働条件の水準、範囲等を可能な限り限定するよう配慮が必要です。
- 労働条件は、職場環境を含め可能な限り具体的かつ詳細に明示するよう配慮が必要です。
- 明示する労働条件が変更される可能性がある場合はその旨を明示し、実際に変更された場合は速やかに知らせるよう、配慮が必要です。
条件変更時の明示ポイント
以下の1~4のような場合、変更明示が必要です。
- 「当初の明示」と異なる条件を提示する場合:例)当初:基本給30万円/月 ⇒ 基本給28万円/月
- 「当初の明示」の範囲内で条件を特定する場合:例)当初:基本給25万円~30万円/月 ⇒ 基本給28万円/月
- 「当初の明示」に有った条件を削除する場合:例)当初:基本給25万円/月、営業手当3万円/月 ⇒ 基本給25万円/月
- 「当初の明示」に無かった条件を新たに提示する場合:例)当初:基本給25万円/月 ⇒ 基本給25万円/月、営業手当3万円/月
変更の明示方法
変更した条件を明示する際は、求職者がその内容を適切に理解できるようにする必要があります。下記の(1)による方法が望ましいですが、(2)の方法でも構いません。
- 当初の明示と変更された後の内容を対照(比較)できる書面を交付する
- 「労働条件通知書」で変更箇所に下線・着色・脚注をつける
変更を明示する際の注意事項
- 変更明示を行う場合でも、当初の明示を安易に変更してはなりません。学校卒業見込者等については、特に配慮が必要であることから、変更を行うことは不適切です。また、原則として、内定までに、学校卒業見込者等に対しては職業安定法に基づく労働条件明示を書面により行わなければなりません。
- 変更明示が適切に行われていない場合や、当初の明示が不適切だった場合(虚偽の内容や、明示が不十分な場合)は、行政による指導監督(行政指導や改善命令、勧告、企業名公表)や罰則等の対象となる場合があります。
- 変更明示が行われたとしても、当初の明示が不適切であった場合には、行政指導や罰則等の対象となることには変わりありません。
職業安定法に基づく指針等の主な内容
- 労働者が変更内容を認識した上で、労働契約を締結するかどうか考える時間が確保されるよう、労働条件等が確定した後、可能な限り速やかに変更明示をしなければなりません。
- 変更明示を受けた求職者から、変更した理由について質問をされた場合には、適切に説明を行うことが必要です。
- 当初明示した労働条件の変更を行った場合には、継続して募集中の求人票や募集要項等についても修正が必要となる場合がありますので、その内容を検証した上で、必要に応じ修正等を行うことが必要です。
職業紹介事業者を利用する際のポイント
厚生労働省「人材サービス総合サイト」では、職業紹介事業者の検索し照会できます。
確認できるのは、以下の事項です。(上記写真は2017年10月26日撮影のため、まだ対応できていない事項があります。)
- 職業紹介事業者の紹介により就職した者の数(2016年度に就職した者の数から掲載)
- 上記のうち、6か月以内に離職した者の数(2018年度に就職した者の数から掲載)
- 手数料に関する事項
- 返戻金制度(短期間で離職した場合に手数料を返金する制度)の有無や内容
- その他、得意とする分野等(職業紹介事業者が任意で掲載)
※職種や業界等によって事情も異なりますので、早期離職者の数は、参考情報の一つとして確認しましょう。
※就職した求職者が6か月以内に離職したか否か、職業紹介事業者から調査の依頼があった場合には、求人者も協力する必要があります。
職業紹介事業者に課せられたルール
職業紹介事業者にも、職業安定法で定められたルールがあります。不適切な場合は、都道府県労働局に相談することができます。
- 自らの紹介により就職した者(無期雇用契約に限ります。)に対して、就職した日から2年間は、転職の勧奨を行ってはなりません。
- 返戻金制度を設けることが望ましいこととされています。
- 求職者、求人者双方に対し、求職者から受理する手数料及び求人者から受理する手数料の両 方に関して明示を行う必要があります。
- 求職者等を勧誘するに当たっては、お祝い金等の金銭を支給することは望ましくありません。
※参考:厚生労働省「求人サイト・求人情報誌などを運営する事業者の皆様へ~募集情報等提供事業のルールが新設されます~<職業安定法の改正>」(PDF)
法違反等への対応
厚生労働省「平成30年1月1日から適用される募集・求人業務取扱要領」(PDF)には、違反した場合の取扱いについて記載があります。
違反者には、指導及び助言が行われ、改善命令にも違反した場合は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
「労働者募集の原則」及び指針に違反した場合には、法第48条の2の規定による指導及び助言を行うこと、第48条の3第1項による改善命令(これに従わない募集主はその旨を公表されることがあり、また、改善命令に違反した場合には法第65条第7号により6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられることがある。)を発出することがある。また、委託募集については、法第41条の規定により許可を取消し若しくは業務の廃止を命じ、又は期間を定めて業務の停止を命ずることがある(これに違反した場合には、法第64条第7号及び第8号により、1年以下の懲役又は100 万円以下の罰金に処せられることがある。)。
出典(すべて厚生労働省より)
- 労働者を募集する企業の皆様へ(PDF)
- 労働者供給事業者の皆様へ、労働者供給を受ける皆様へ(PDF)
- 求職者の皆様へ(PDF)
- 求人サイト・求人情報誌などを運営する事業者の皆様へ(PDF)
- 職業紹介事業者の皆様へ(PDF)
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