40歳からの介護保険入門 [2017年版]
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
現代日本では、高齢化だけでなく、核家族化も進んでいます。サザエさんや、ちびまる子ちゃんで描かれる様な、大家族で赤ちゃんや老人を支えるような風景は、消え去ろうとしています。育児や介護を、社会全体で支え合って進めていかなければならないし、高齢化が進む中では、元気な高齢者は自立して、自分で身の回りのことをする必要性に迫られています。
そのような背景で、1997年に「介護保険法」が制定され、2000年から公的な「介護保険」が導入されています。
日本で、75歳以上の人口がピークに達するのは、2024年(平成36年)以降といわれています。それまでに介護保険制度を定着させる必要があります。
今回は、公的な介護保険制度のしくみ、保険料の負担、最近の改正ポイントについて確認していきます。
こちらも参考にしてください;
『[介護保険] 要支援認定と要介護認定の違い』
『[介護保険] 保険適用でユニットバスに住宅改修する方法』
介護保険制度とは
介護保険制度は、市町村が運営主体(=保険者)となる制度です。東京23区の場合は、区が運営主体です。
運営主体の区市町村は、被保険者(後述)からの保険料の他、税金を財源として、「要介護認定」を受けた被保険者が受けた、訪問介護や社会福祉施設などのサービスの8割〜9割を、その運営するサービス事業者に費用を支払います。
被保険者は、2種類に分けられます
- 第1号被保険者
- 第2号被保険者
第1号被保険者について
- 65歳以上の人が、強制的に被保険者(加入者)になります
- 保険料は、第1号被保険者の場合は原則として、年金から天引きすることで徴収
- 原因にかかわらず、公的介護サービスを受けることができる
第2号被保険者について
- 40歳以上64歳までの人が、強制的に被保険者(加入者)になります
- 加入している公的医療保険と合わせて徴収
- 公的介護サービスの対象となるのは、16種類の特定疫病が原因の場合だけ
第2号被保険者が公的介護サービスを受けることができる16種類の特定疫病
- がん末期(医師判断が必要)
- 初老期における認知症(アルツハイマー病、脳血管性認知症等)
- 関節リウマチ
- 脳血管疾患(脳出血、脳梗塞等)
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 骨折を伴う骨粗しょう症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎等)
- 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靭帯骨化症
- 多系統萎縮症
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症(ウェルナー症候群等)
- 閉塞性動脈硬化症
介護保険制度のサービスを受けるには
- 「要支援・要介護」の認定を、区市町村から受ける必要があります
- 公的介護サービスの費用は自己負担が1割(平成27年8月からは、一定以上の所得がある場合は2割)で、残りは介護保険からでの負担となります。
介護保険の被保険者と保険料負担
介護保険の被保険者は前述したように、第1号被保険者と第2号被保険者に分かれます。
それぞれの保険料負担について、確認してみましょう。
第1号被保険者は、所得の段階別の定額の保険料を負担することになっています。2015年以前では、所得段は6段階となっていましたが、2015年の改正により9段階に区分されました。また、年金額が年間で18万円以上の公的年金受給者は年金から天引きされる形で徴収されます。【参考:厚生労働省「介護保険の保険料(第1号被保険者)」】
第2号被保険者の場合、協会けんぽに加入している人は、標準報酬月額や標準賞与額に介護保険の料率を乗じた金額となります。負担は事業主と従業員が折半となります。平成29年3月分(5月1日納付期限分)からの介護保険料率は協会けんぽの場合、1000分の16.5(1.65%)となっています。【参考:協会けんぽの介護保険料率について】
高額介護サービス費
介護サービスが急に必要となった場合、利用者の負担が高額となる場合があります。介護保険制度には、高額サービス費を支給する制度もあります。
高額サービス費は1ヶ月の自己負担額が一定の金額を超える場合に支給されます制度です。上限額は、被保険者の段階(状況)によって変わります。
- 15,000円:第1段階=老齢福祉年金受給者で、世帯全員が市長村民税非課税枠の人または生活保護受給者
- 15,000円:第2段階=年金収入が80万円以下の人
- 24,600円:第3段階=市長村民税非課税枠で第2段階以外の人
- 37,200円:第4段階=市長村民税課税世帯の人
- 44,400円:第5段階=現役並み所得者
※高額サービス費は「施設サービス利用者の居住費や食費」「福祉用具の購入費」「住宅改修費」の金額は対象とならないので注意が必要です。
【参考:厚生労働省『[PDF]平成27年8月から、月々の負担の上限(高額介護サービス費の基準)が変わります』】
介護保険改正ポイント
2012年(平成24年)度の改正
高齢者が地域で自立して生活を送れるように、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく提供され、より手厚い支援となる「地域包括ケアシステム」の実現へ向けた取り組みがポイントです。
- 単身・重度の要介護者等に対応できるよう、24時間対応の定期巡回・随時対応サービスや複合型サービスを創設
- 介護福祉士や一定の教育を受けた介護職員等によるたんの吸引等の実施を可能とする
- 各都道府県の財政安定化基金を取り崩し、介護保険料の軽減等に活用
※引用:『厚生労働省関係の主な制度変更(平成24年4月)について』
2015年(平成27年)度の改正
介護保険サービスの充実と効率化が図られました。また、特別養護老人ホームの新規入所者は要介護1と2の人が入所できないという厳しい条件となっています。さらに、介護サービスを利用する場合の負担割合も引き上げられています。介護サービスを利用する人の増加で引き締めにかかっている傾向が見られます。
- 特別養護老人ホームの新規入所者が、原則、要介護3以上
- 低所得の方への施設入所等の居住費・食費の負担軽減基準の見直
- 一定以上の所得がある方のサービスの利用負担割合が2割に
※引用:『[PDF]介護保険制度規制のお知らせ』
まとめ
介護サービスは、サービスを利用する家族にとって大きな負担がかかります。ここのところ改正された介護保険制度では、より多くの人に手厚いサービスを提供する方針になってきているとはいえ、利用者の自己負担は増加の傾向にあります。高齢化と核家族化を考えれば、これはいたしかたないことなのかもしれません。今後の法改正に目を凝らしながら、いざ自分が介護される側になった場合の資金計画を立てておくべきでしょう。
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