転勤規定の作成・変更の参考となる『転勤に関する雇用管理のヒントと手法』をポイント解説
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
「『転勤に関する雇用管理のポイント(仮称)』策定に向けた研究会」では、労使代表の活発な意見出しが行われていました。※写真は第三回会議のもの。
厚生労働省は昨年(2016年)、約1800社・約5800人の正社員を対象に「国内外への転勤」についてのアンケートを実施しました。その結果、7割超の企業で転勤に関する具体的なルール(転勤規定など)が無いことが判明しました。アンケートの結果を踏まえ、厚労省は転勤に関するガイドラインとして「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」(全43ページ)を作成し、2017年3月末にWebサイト上で公表しました。
今回は、そのポイントを解説していきます。引用元表記が無い場合、原則的に『転勤に関する雇用管理のヒントと手法』の引用・要約となります。
『転勤に関する雇用管理のヒントと手法』の構成
大きく3つの章で構成されています。
- 転勤に関する雇用管理について踏まえるべき法規範
- 転勤に関する雇用管理を考える際の基本的な視点
- 転勤に関する雇用管理のポイント
1、2章で法律や、仕組みづくりについての考え方を説明し、3章で「勤務地を限定しないことを原則とする場合」や「勤務地の変更の有無や範囲により雇用区分を分ける場合」など、複数のケースを想定して事例紹介しています。
ガイドラインの順番とは異なりますが、まず3章「転勤に関する雇用管理のポイント」をみていきましょう。
転勤に関する雇用管理のポイント
管理するにあたり、以下の手順で取り組むことが推奨されています。
- 自社の実態把握
- 基本方針で自社に不可欠な転勤を見極める
- 雇用形態ごとにルール(転勤規定など)を策定する
自社の実態把握
- 「異動」の目的:適正配置、人材育成、昇進管理、組織活性化など、異動の目的をどのように定義しているのか、確認する。
- 「異動」の状況(現状):組織全体について、例えば「異動の規模」「異動者の中の転勤者の割合」「転勤をする可能性のある者と実際に転勤を経験する者の人数・割合」などを調査。あわせて労働者の状況、「労働者の企業内のキャリアにおける異動の時期」「年齢層」「回数」「期間」「地理的範囲」「本拠地の有無」「単身赴任その他家族への影響」をの状況等も調査する。
- 「転勤」の状況:転勤の起案・調整・決定までのプロセス、費用(赴任旅費、単身赴任手当、社宅費等)、処遇(賃金、昇進・昇格)との関係を調査する。JILPT「企業における転勤の実態に関する調査」によると、年間一人当たりの転勤コスト(転居費用、社宅費用、単身赴任手当等の諸手当、帰省旅費等)が「70万円以上」の企業が54.9%に上ります。企業によっては、転勤の可能性を予め織り込んだ賃金設定をしている場合もあるため、そのコストも調査するべきである。
- 効果:異動のうち転勤が果たしている機能は何か。転勤がその機能にどれだけ貢献しているかといった効果を検証する。
基本方針で自社に不可欠な転勤を見極める
転勤の効果のうち、どうしても必要な転勤とは何か、代替手段は無いのかを検討します。完全に代替できないにしても、転勤の地理的範囲や期間などについて調整できないか見極めます。
雇用形態ごとにルール(転勤規定など)を策定する
【勤務地を限定しないことを原則とする場合】
従業員個別の状況(家庭の事情等)を把握し、就業規則等で予め原則や目安を従業員と共有します。転勤の決定までには、細かな調整・説明プロセスが重要です。
- 従業員個別の状況(家庭の事情等)把握:定期的に自己申告書を提出させたり、面接などで家庭の事情や本人の意向を汲み取る。
- 原則や目安の共有:地域的な範囲、時期、回数、一つの地域における赴任期間、本拠地の有無など、転勤の有無や態様について原則や目安を共有する。これは、従業員の自己キャリア形成等の見通しを良くするという目的もある。従業員の「生活の本拠地」を登録させ、本拠地を軸に転勤を組むことも有効。
- 転勤の理解を得るための仕組みづくり:育児や介護など家庭の事情がある場合、転勤を限定的に免除する制度などを検討する。また、企業によるベビーシッター代や家事サービス代の補助など、転勤の支障を取り除く工夫を検討する。
- 転勤対象者への個別対応:転勤候補の時点で、当該従業員の状況(家庭の事情など)に問題がないか再度確認。その結果に応じて、転勤の時期や場所を調整できないか検討する。この時点では、転勤対象の候補者を変更すること、転勤の時期をずらすこと、通勤可能な範囲の異動で代替することなどを含め検討する。
- 告知・説明:最終的に決定したら、上司や人事部門はできるだけ早めに告知・説明する。転勤の趣旨、転勤後に期待される役割、赴任旅費・単身赴任手当等の諸条件について誠意を持って説明する。
【勤務地の変更の有無や範囲により雇用区分を分ける場合】
勤務地を限定するなどの雇用区分を持つことで、従業員の事情や意向とのすり合わせるが容易になります。その際注意すべきは、雇用区分間の処遇の均衡や、労働者の事情や意向の変化への対応(コース変更を可能にする等)が重要です。
- 雇用区分の設定:海外転勤の有無、全国転勤の有無、一定の地域ブロック内の転勤有無などで区分を設定する。
- 運用の基本方針:転勤がある雇用区分では、上記「勤務地を限定しないことを原則とする場合」と同じ。
- 「コース等別雇用管理指針」に沿った適正な運用: 勤務地の変更の有無や範囲による区分を含め、複数の雇用区分を設定して行う雇用管理については「コース等別雇用管理指針」に沿った運用となるよう留意する必要がある。
- 処遇の均衡:賃金:労働契約法第3条第2項では、労働契約は就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきとしている。これには勤務地の変更の有無や範囲により分けられた雇用区分の間の均衡も含まれる。雇用区分間の賃金水準の差については、どのような水準が均衡であるかは一律に判断することが難しいが、いずれにしても、企業ごとに労使で十分に話し合って納得性のある水準(均衡する水準)とすることが望ましい。雇用区分間の賃金水準の差への納得性を高めるために、例えば、同一の賃金テーブルを適用しつつ、転勤の有無等による係数を乗じたり、転勤手当等の転勤の負担の可能性に対する支給をすることが考えられる。転勤のある雇用区分における賃金の上乗せは、実際の転勤の有無にかかわらず当該雇用区分の選択時から適用され、事前のプレミアムとしての性格を持つものと、本拠地を離れる等の転勤をした時点から適用され、事後のプレミアムとしての性格を持つものとが考えられるが、実際に転勤を経験する労働者の割合や本拠地の有無など、実情に応じて設計することが有効と考えられる。これらの設計のあり方によって、転勤がある雇用区分で実際には転勤を経験しない労働者との関係で、同じ雇用区分内の転勤経験者や、転勤がない雇用区分の労働者の納得感の向上にもつながると考えられる。平成28年に実施されたJILPTアンケート調査では、勤務地限定正社員と全国転勤型との間の年収(給与・賞与含む)の差については、「5~10%」とする企業が27.4%、「10~15%」が25.3%などとなっている。
- 処遇の均衡:昇進・昇格:勤務地の変更の有無や範囲により分けられた雇用区分の間で、職務の範囲や経験により習得する能力に相違があることが明らかでない場合には、昇進・昇格の上限や滞留年数要件に予め差を設けることなく、転勤の有無とは関わりのない要素に基づいて昇進・昇格を認めることが望ましい。他方、習得する能力に相違があることが明らかな場合には、その相違の内容に応じて昇進・昇格について上限や滞留年数要件に予め差を設けることも考えられる。
- 処遇の均衡:転換制度:労働契約法第3条第3項は、労働契約は労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものであることを規定しており、これには雇用区分間の転換制度も含まれる。家庭環境などの状況変化に対応し、本人の申出があれば、双方向で、転換が可能な仕組みとすることが有効である。転換の要件、回数制限、実施時期等について制度化し、男女雇用機会均等法等の趣旨を踏まえ、例えば、妊娠・出産した労働者を一律に転換させること等のないよう、留意する必要がある。
【その他の(労働者が決定に関与する)場合】
転勤の決定に労働者自身が関与する形もあり得る。具体的には、転勤について本人の個別の同意を条件とする方式や、転勤をすべて社内公募とする方式などが考えられる。
ルール(転勤規定など)作成時の注意ポイント:用語の定義と関連する法令の確認
「配転」とは?
「配転」とは、転勤を含む配置転換で、職務内容又は勤務場所が相当の長期間にわたって変更されることです。同一勤務地(事業所)内の勤務箇所(所属部署)の変更が「配置転換」、勤務地の変更が「転勤」と称されることが一般的です。特に、正規雇用労働者について、職業能力・地位の向上や労働力の補充・調整のために系統的で広範囲な配転が幅広く行われています。
「配転」を決定・命令できる根拠とは?
転勤を含む配置の変更は、労働契約上の職務内容・勤務地の決定権限(配転命令権)に基づき行われています。就業規則に定めがあり、勤務地を限定する旨の合意がない場合には、企業が労働者の同意なしに勤務地の変更を伴う配置転換を命じることが広く認められています。 就業規則に定めがあっても、配転が認められないケースもあります。業務上の必要性が存しない場合や、労働者の育児や介護などの事情に対する配慮の状況等の考慮が必要な場合です。具体的な判例をページ下で説明していますので、参考にしてください。
労働契約法(抄)
(平成十九年十二月五日法律第百二十八号)
(労働契約の原則)
第三条 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
2 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
4 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、 及び義務を履行しなければならない。
5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。
(労働契約の成立)
第六条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
第七条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
労働契約時に、条件を明示する義務
労働関係法令の中では、転勤などの労働条件について明示する義務が課されています。
労働基準法(抄)
(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)
(労働条件の明示)
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
(2・3略)
労働基準法施行規則(抄)
(昭和二十二年八月三十日厚生省令第二十三号)
第五条 使用者が法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。ただし、第一号の二に掲げる事項については期間の定めのある労働契約であつて当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の場合に限り、第四号の二から第十一号までに掲げる事項については使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでない。
一 労働契約の期間に関する事項
一の二 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
二 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
三 賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
四 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
四の二 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
五 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項
六 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
七 安全及び衛生に関する事項
八 職業訓練に関する事項
九 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
十 表彰及び制裁に関する事項
十一 休職に関する事項
○2法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める事項は、前項第一号から第四号までに掲げる事項(昇給に関する事項を除く。)とする。
○3法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。
育児・介護に関する注意
育児・介護休業法第26条は、企業が就業場所の変更を伴う配置の変更をしようとする場合に、これにより育児や介護が困難となる男女労働者がいるときは、その育児や介護の状況に配慮することを規定している。
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(抄)
(平成三年五月十五日法律第七十六号)
(労働者の配置に関する配慮)
第二十六条 事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。
子の養育又は家族介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針(抄)
(平成21年厚生労働省告示第509号)
第2 事業主が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るための指針となるべき事項
15 法第26条の規定により、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮するに当たっての事項配慮することの内容としては、例えば、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況を把握すること、労働者本人の意向をしんしゃくすること、配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをした場合の子の養育又は家族の介護の代替手段の有無の確認を行うこと等があること。
性別による間接差別に関する注意事項
「間接差別」とは、以下3条件すべてに合致する場合に該当します
- 性別以外の事由を要件とする
- 他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与える
- 合理的な理由がない
採用・昇進・職種変更の条件として、転居を伴う配置の変更に応じられることを要件とすることは、性別による間接差別に該当し、禁じられています。「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(通称:男女雇用機会均等法)」では、間接差別となりうる措置を省令で列挙しています。
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則(抄)
(昭和六十一年一月二十七日労働省令第二号)
(実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置)
第二条 法第七条の厚生労働省令で定める措置は、次のとおりとする。
一 労働者の募集又は採用に関する措置であつて、労働者の身長、体重又は体力に関する事由を要件とするもの
二 労働者の募集若しくは採用、昇進又は職種の変更に関する措置であつて、労働者の住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを要件とするもの
三 労働者の昇進に関する措置であつて、労働者が勤務する事業場と異なる事業場に配置転換された経験があることを要件とするもの
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(抄)
(昭和四十七年七月一日法律第百十三号)
(性別以外の事由を要件とする措置)
第七条 事業主は、募集及び採用並びに前条各号に掲げる事項に関する措置であつて労働者の性別以外の事由を要件とするもののうち、措置の要件を満たす男性及び女性の比率その他の事情を勘案して実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置として厚生労働省令で定めるものについては、当該措置の対象となる業務の性質に照らして当該措置の実施が当該業務の遂行上特に必要である場合、事業の運営の状況に照らして当該措置の実施が雇用管理上特に必要である場合その他の合理的な理由がある場合でなければ、これを講じてはならない。
労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針(抄)
(平成18年厚生労働省告示第614号)
第3 間接差別(法第7条関係)
1 雇用の分野における性別に関する間接差別
(1) 雇用の分野における性別に関する間接差別とは、①性別以外の事由を要件とする措置であって、 ②他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるものを、③合理的な理由がないときに講ずることをいう。
(2) (1)の①の「性別以外の事由を要件とする措置」とは、男性、女性という性別に基づく措置ではなく、外見上は性中立的な規定、基準、慣行等(以下第3において「基準等」という。)に基づく措置をいうものである。(1)の②の「他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるもの」とは、当該基準等を満たすことができる者の比率が男女で相当程度異なるものをいう。(1)の③の「合理的な理由」とは、具体的には、当該措置の対象となる業務の性質に照らして当該措置の実施が当該業務の遂行上特に必要である場合、事業の運営の状況に照らして当該措置の実施が雇用管理上特に必要であること等をいうものである。
(3) (略)
2 (略)
3 労働者の募集若しくは採用、昇進又は職種の変更に当たって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること(法第7条・均等則第2条第2号関係)
(1) 均等則第2条第2号の「労働者の募集若しくは採用、昇進又は職種の変更に関する措置であつて、労働者が住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを要件とするもの」とは、労働者の募集若しくは採用、昇進又は職種の変更に当たって、転居を伴う転勤に応じることができること(以下「転勤要件」という。)を選考基準とするすべての場合をいい、例えば、次に掲げるものが該当する。
(転勤要件を選考基準としていると認められる例)
イ 募集若しくは採用又は昇進に当たって、転居を伴う転勤に応じることができる者のみを対象とすること又は複数ある採用又は昇進の基準の中に、転勤要件が含まれていること。
ロ 職種の変更に当たって、転居を伴う転勤に応じることができる者のみを対象とすること又は複数ある職種の変更の基準の中に、転勤要件が含まれていること。例えば、事業主が新たにコース別雇用管理(事業主が、その雇用する労働者について、労働者の職種、資格等に基づき複数のコースを設定し、コースごとに異なる雇用管理を行うものをいう。)を導入し、その雇用する労働者を総合職と一般職へ区分する場合に、総合職については、転居を伴う転勤に応じることができる者のみ対象とすること又は複数ある職種の変更の基準の中に転勤要件が含まれていることなどが考えられること。
(2) 合理的な理由の有無については、個別具体的な事案ごとに、総合的に判断が行われるものであるが、合理的な理由がない場合としては、例えば、次のようなものが考えられる。
(合理的な理由がないと認められる例)
イ 広域にわたり展開する支店、支社等がなく、かつ、支店、支社等を広域にわたり展開する計画等もない場合
ロ 広域にわたり展開する支店、支社等はあるが、長期間にわたり、家庭の事情その他の特別な事情により本人が転勤を希望した場合を除き、転居を伴う転勤の実態がほとんどない場合
ハ 広域にわたり展開する支店、支社等はあるが、異なる地域の支店、支社等での勤務経験を積むこと、生産現場の業務を経験すること、地域の特殊性を経験すること等が労働者の能力の育成・確保に特に必要であるとは認められず、かつ、組織運営上、転居を伴う転勤を含む人事ローテーションを行うことが特に必要であるとは認められない場合
4 労働者の昇進に当たり、転勤の経験があることを要件とすること(法第7条・均等則第2条第3号関係)
(1) 均等則第2条第3号の「労働者の昇進に関する措置であつて、労働者が勤務する事業場と異なる事業場に配置転換された経験があることを要件とするもの」とは、一定の役職への昇進に当たり、労働者に転勤の経験があること(以下「転勤経験要件」という。)を選考基準とするすべての場合をいい、例えば、次に掲げるものが該当する。
(転勤経験要件を選考基準としていると認められる例)
イ 一定の役職への昇進に当たって、転勤の経験がある者のみを対象とすること。
ロ 複数ある昇進の基準の中に、転勤経験要件が含まれていること。
ハ 転勤の経験がある者については、一定の役職への昇進の選考において平均的な評価がなされている場合に昇進の対象とするが、転勤の経験がない者については、特に優秀という評価がなされている場合にのみその対象とすること。
ニ 転勤の経験がある者についてのみ、昇進のための試験を全部又は一部免除すること。
(2) 合理的な理由の有無については、個別具体的な事案ごとに、総合的に判断が行われるものであるが、合理的な理由がない場合としては、例えば、次のようなものが考えられる。
(合理的な理由がないと認められる例)
イ 広域にわたり展開する支店、支社がある企業において、本社の課長に昇進するに当たって、本社の課長の業務を遂行する上で、異なる地域の支店、支社における勤務経験が特に必要であるとは認められず、かつ、転居を伴う転勤を含む人事ローテーションを行うことが特に必要であるとは認められない場合に、転居を伴う転勤の経験があることを要件とする場合
ロ 特定の支店の管理職としての職務を遂行する上で、異なる支店での経験が特に必要とは認められない場合において、当該支店の管理職に昇進するに際し、異なる支店における勤務経験を要件とする場合
勤務地の変更の有無や範囲により雇用区分を分ける場合の注意事項
コース等で区分した雇用管理を行うに当たって事業主が留意すべき事項に関する指針
(平成二十五年厚生労働省告示第三百八十四号)
第1 目的
この指針は、事業主がコース等で区分した雇用管理(以下「コース等別雇用管理」という。)を行うに当たり、その適正かつ円滑な運用に資するよう、事業主が留意すべき事項について定めたものである。
第2 コース等別雇用管理を行うに当たっての基本的考え方
事業主は、コース等別雇用管理を行うに当たっては、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号。以下「法」という。)を遵守するとともに、その適正かつ円滑な運用を行い、その雇用する労働者がどのようなコース等の区分に属する者であってもその有する能力を有効に発揮しつつ就労できる環境が整備されるよう、この指針で定める事項に留意すべきである。
第3 コース等別雇用管理の定義
この指針において「コース等別雇用管理」とは、事業主が、その雇用する労働者について、労働者の職種、資格等に基づき複数のコースを設定し、コースごとに異なる募集、採用、配置、昇進、教育訓練、職種の変更等の雇用管理を行うものをいい、一定の業務内容や専門性等によりコースに類似した複数のグループを設定し、処遇についてグループごとに異なる取扱いを行うもの及び勤務地の限定の有無により異なる雇用管理を行うものも含まれるものである。
第4 コース等別雇用管理を行うに当たって事業主が留意すべき事項
一 事業主は、コース等の新設、変更又は廃止に当たっては、次に掲げることに留意することが必要である。
(法に直ちに抵触する例)
(1)一方の性の労働者のみを一定のコース等に分けること。
(2)一方の性の労働者のみ特別な要件を課すこと。
(3)形式的には男女双方に開かれた制度になっているが、実際の運用上は男女異なる取扱いを行うこと。
(制度のより適正かつ円滑な運用をするために留意すべき事項の例)
(1) コース等別雇用管理を行う必要性及び当該コース等の区分間の処遇の違いの合理性について十分に検討すること。その際、コース等の区分に用いる基準のうち一方の性の労働者が事実上満たすことが困難なものについては、その必要性について特に注意すること。
(2) 労働者の納得が得られ、長期的な職業設計をたてることができるように制度運営がなされることが肝要であることを踏まえ、コース等の区分間の職務内容及び職務上求められる能力を明確にするとともに、労働者に対し、コース等の区分における職務内容、処遇等を十分に説明すること。
(3) コース等の新設、変更又は廃止に際して、処遇を変更する場合には、その内容及び必要性を十分に検討するとともに、当該コース等に属する労働者及び労働組合に対し、十分に説明しつつ慎重に行うこと。またその場合には、転換制度の活用等経過措置を設けること により柔軟な運用を図ることも考えられること。
(4) コース等を廃止する際、当該コース等に属する労働者の多くが一方の性の労働者である場合には、結果的に一方の性の労働者のみに解雇その他不利益な取扱いがなされることのないよう、教育訓練の実施等により他のコース等への円滑な転換を図る等十分な配慮を行うこと。
(労働者の能力発揮のため実施することが望ましい事項の例)
(1)コース等の区分に分ける際、労働者の従来の職種等に関わらず、その時点における意欲、能力、適性等を適切に評価するとともに、当該労働者の意思を確認すること。
(2)コース等の区分間の転換を認める制度を柔軟に設定すること。その際、労働者に対し、コース等ごとの職務内容、処遇の内容等の差異について情報を提供するとともに、労働者の意向等を十分に把握した上で、例えば、次の事項に配慮した柔軟な運用を図ることも検討すること。その際、女性労働者の活躍推進の観点から、コース等の区分間の転換を目指す労働者の努力を支援すること等に配慮した制度設計を行うことが望まれること。
i)転換が区分間相互に可能であること。
ii)転換の機会が十分に確保されていること。
iii)転換の可否の決定及び転換時の格付けが適正な基準で行われること。
iv)転換を行う労働者に対し、これまでのキャリアルートの違いを考慮した教育訓練を必要に応じ受けさせること。
二 事業主は、コース等別雇用管理における労働者の募集又は採用に当たっては、次に掲げることに留意することが必要である。
(法に直ちに抵触する例)
(1)募集又は採用に当たり、男女別で選考基準又は採用基準に差を設けること。
(2)募集又は採用に当たり、合理的な理由なく転居を伴う転勤に応じることができる者のみを対象とすること(いわゆる「転勤要件」)又は合理的な理由なく複数ある採用の基準の中に、転勤要件が含まれていること。
ただし、法上、総合職の女性が相当程度少ない場合に、例えば総合職の採用に当たって、女性を積極的に選考すること等女性優遇の措置をとることは許容されていること。
(制度のより適正かつ円滑な運用をするために留意すべき事項の例)
(1)募集又は採用に当たり、応募者の自主的なコース等の選択を促進する観点から、応募者に対し、コース等ごとの職務内容、処遇の内容等の差異について情報を提供すること。
(2)募集又は採用に当たり、合理的な理由により転勤要件を課す場合には、応募者に対し、可能な範囲で転勤要件に関する情報を提供すること。
(労働者の能力発揮のため実施することが望ましい事項の例)
(1)採用時にはその雇用する労働者をコース等に区分せず、一定の勤務経験を経た後に、当該労働者の意欲、能力、適性等に応じて区分することも一つの方法として考えられること。
(2)採用担当者等に対する研修の実施等により、性別に関わらず、労働者の意欲、能力、適性等に応じた採用の実施の徹底を図る等の対策を講じること。
(3)コース等別雇用管理を行う事業主においては、一般的に、事業の運営の基幹となる事項に関する企画立案、営業、研究開発等を行う業務に従事するコース(いわゆる「総合職」)に女性労働者が少なく、定型的業務に従事するコース(いわゆる「一般職」)に多い等の実態があることから、総合職の女性が相当程度少ない状況である場合には、その募集又は採用に当たり、女性応募者を積極的に選考することや女性応募者に対し、採用面接の際に女性の活躍を推進する意思表示を積極的に行うこと。
三 事業主は、コース等別雇用管理における配置、昇進、教育訓練、職種の変更等に当たっては、次に掲げることに留意することが必要である。
(法に直ちに抵触する例)
配置、昇進、教育訓練、職種の変更等に当たり、男女別で運用基準に差を設けること。
ただし、法上、総合職の女性が相当程度少ない場合に、例えば、コース等転換制度を積極的に用いて、一般職女性の総合職への転換促進を図ることは許容されていること。
(制度のより適正かつ円滑な運用をするために留意すべき事項の例)
コース等ごとにそれぞれ昇進の仕組みを定めている場合には、これを明確にすること。
(労働者の能力発揮のため実施することが望ましい事項の例)
一般職についても、相応の経験や能力等を要する業務に従事させる場合には、その労働者に対し、適切に教育訓練等を行い、その能力の向上を図るとともに、当該労働者の意欲、能力、適性等に応じ、総合職への転換を行うこと。
四 その他
(1)コース等別雇用管理を行う場合において、制度を導入した後も、コース等別雇用管理の状況を把握し、それを踏まえ、コース等別雇用管理を行う必要性の検討及び法に則した雇用管理となっているかの分析を行うとともに、その結果、法に則した雇用管理への改善が必要と認められる場合においては、当該コース等別雇用管理を法に則したものとなるよう、必要な措置を講じることが重要であること。
(2)どのようなコース等の区分を選択した者にとっても家庭生活との両立を図りながら働くことのできる職場環境を整備したり、出産、育児による休業を取得しても、その後の労働者の意欲、能力、成果等によって、中長期的には処遇上の差を取り戻すことが可能になるような人事管理制度や能力評価制度の導入を積極的に推進することが重要であること。
参考となる裁判例:「転勤(配転命令権)」の重要な先行事案
実務レベルで落とし所を探るには、関連する裁判例を確認していくのが効率的です。『転勤に関する雇用管理のヒントと手法』には、裁判例が11件掲載されています。各裁判から導かれる注意事項を理解しましょう。
裁判例では、就業規則に業務上の都合により従業員に転勤や配置転換を命ずることができる旨の定めがあり、勤務地や職種の限定に関する合意がない場合は、企業は従業員の同意なしに転勤や配置転換を命じることができるとしています。ただ、配転命令権は無制約に行使できるものではなく濫用することは許されないとなっています。
具体的には、業務上の必要性が存しない場合、又は業務上の必要性が存する場合であっても、他の不当な動機・目的を持ってなされたものであるとき、若しくは労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせるなどの特段の事情がある場合以外は、権利の濫用とはならないとしています。裁判例では、退職させることを目的とした配転命令を違法とした事例があります。
東亜ペイント事件(最二小判昭和61年7月14日)
大阪地判昭57.10.25、大阪高判昭59.8.21、最二小判昭61.7.14
【事案の概要】
Yは大阪に本店をおき、全国に事務所・営業所を持つ会社である。Yの就業規則には、「業務の都合により異動を命ずることがあり、社員は正当な理由なしに拒否できない。」と定められており、実際にも従業員、特に営業担当者について転勤が頻繁に行われていた。Xは営業担当者として、勤務地を限定することなくYに採用されたが、入社してから約8年間、大阪近辺で勤務していた。
こうした中、YはXに名古屋営業所への転勤を内示したが、Xは転居を伴う転勤を拒否した(Xはそれ以前にも転勤の内示を拒否している)。Yは、Xに対して名古屋営業所勤務を命じたが(本件転勤命令)、Xはこれを拒否した。そこでYは、この転勤命令拒否が就業規則所定の懲戒事由に該当するとしてXを懲戒解雇した。これに対してXは、本件転勤命令および本件懲戒解雇の無効を主張して提訴した。
第一審および第二審は、本件転勤命令は権利濫用で無効であるとし、Xの請求を全面的に認容したため、Yが上告したのが本件である。 判決では、本件転勤命令は権利濫用には当たらないとして、原審を破棄・差し戻した。
【判決の概要】
- 本件のように、労働協約及び就業規則に転勤を命ずることができる旨の定めがあり、実際に転勤が頻繁に行われ、さらに入社時に勤務地を限定する旨の合意がなかったという事情の下では、使用者は個別的同意なしに労働者の勤務場所を決定することができる。
- しかし、特に転居をともなう転勤は、労働者の生活に影響を与えるものであるから、使用者の転勤命令権は無制約に行使できるものではなく、これを濫用することは許されない。
- 具体的には、当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合には、当該転勤命令は権利の濫用になる。
- ただし、業務上の必要性は、当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、肯定すべきである。
- 本件においては名古屋営業所のA主任の後任者として適当な者を名古屋営業所へ転勤させる必要があったのであるから、本件転勤命令には業務上の必要性が優に存したものということができる。そして、Xの家族状況に照らすと、名古屋営業所への転勤がXに与える家庭生活上の不利益は、転勤に伴い通常甘受すべき程度のものである。
参考となる裁判例:「配転命令権の存否と範囲」の事案
新日本通信事件(大阪地判平成9年3月24日)
【事案の概要】
Yは、電気通信事業、通信機器の販売及び施工、管理等を業とし、大阪に本店を置く会社であり、Xは、Yの仙台支店開設に際して採用され、同支店において勤務した。Yが就業規則を作成していないことについて従業員らが労基署に申告をし、労基署から改善命令が出された当日、YはXを解雇した。
後日、YはXの解雇を撤回し、その後、Xを本社直轄のプロジェクト・リサーチ部仙台分室に配置転換した。さらに、同室は仙台支店外に 移された後、廃止され、YはXに大阪本社プロジェクト・リサーチ部への配置転換を命じた。
Xは、勤務地は仙台の約束であったとして、配転には応じられないとの態度をとったが、その後、異議をとどめたうえでこれに応じ、Y大阪本社に赴任した。Yは、平成6年、勤務成績不良を理由にXを解雇した。Xは、本件配転命令及び本件解雇の無効を主張して提訴した。
【判決の概要(配転命令関係)】
- Xは、採用面接において、採用担当者であったAに対し、家庭の事情で仙台以外には転勤できない旨明確に述べ、Aは、本社に採用の稟議を上げる際、Xが転勤を拒否していることを伝えたのに対し、本社からは何らの留保を付することなく採用許可の通知が来たこと、その後YはXを何らの留保を付することなく採用し、転勤があり得ることをXに明示した形跡もない以上、XがYに応募するに当たって転勤ができない旨の条件を付し、Yが右条件を承認したものと認められるから、XY間の雇用契約においては、勤務地を仙台に限定する旨の合意が存在したと認めるのが相当である。
- 本件配転命令は、勤務地限定の合意に反するものであり、Xの同意がない限り効力を有しないところ、Xが同意しなかったことは争いがないから、本件配転命令は無効である。※解雇については、本件配転命令に応じないことを理由にされたものではなく、Xの勤務態度を理由にされたものであるため、その効力は別個に論ずるとした上で、解雇権を濫用するものとして無効とした。
日本レストランシステム事件(大阪高判平成17年1月25日)
(大阪地判平16.1.23、大阪高判平17.1.25)
【事案の概要】
Yは、飲食店経営等を主たる目的として、本社を東京に置き、約250の店舗を全国に展開し、従業員数約700名、パートタイマー等約4000名を擁していた。
大阪でYに入社したXは、4店舗でマネージャーとして担当総括をしていたが、原価を操作するなどしたことを理由にマネージャーA職からマネージャーB職に降格された。その後Yは、従業員のサービス残業及びその見返りとしての無銭飲食に係る管理不行届を理由にXを店長A職に降格し、営業4部(東京)に配転した。Xは、本件降格及び配転等が無効であるとして提訴した。
Yの就業規則には、Yが業務の都合により必要がある場合、社員に転勤を命ずることがある旨が規定されていた。
第一審は、本件降格及び配転は権利濫用に当たらないとした。高裁は、配転についてこれを無効とした。
【判決の概要(配転命令関係)】
- ①Xは、関西地区での事業展開を目指すYにより、同地区における調理師資格を有する管理職候補として現地採用(中途採用)されたものであり、本社で幹部要員として採用されたわけでも、長期人材育成を前提として新卒採用された者でもなかった。②また、Xは、採用面接の際、長女の病状を述べて関西地区以外での勤務に難色を示し、Yもこれを了解していた。③さらに、入社後も、Xは昇格したとはいえ、関西地区外に転勤する可能性について説明を受けたり、打診されたこともなく、従前と同様の業務に従事しており、本件配転命令時点において、関西地区はもとよりYの会社全体としても、マネージャー職を地域外に広域移動させられることは稀であった。
- XとYとの間では、採用時点において、黙示にせよ勤務地を関西地区に限定する旨の合意が成立しており、その後、マネージャーA職に至る各昇格の際にも上記合意が変更されるには至らなかった。
- また、仮に、上記のとおり認定できないとしても、少なくとも、YはXに対して、採用時から本件配転命令に至るまでの間、特段の事情がない限り、勤務地を関西地区に限定するようできる限り配慮をする旨の意向を示し、その旨の信義則上の義務を負っていたと認定すべきである。
- 勤務地限定の合意が成立したと認められる以上、権利濫用の点について判断するまでもなく本件配転命令は無効となるが、事案に鑑みて、この点(権利の濫用にあたるか)についても検討する。
- Xをただちにかつ期間の限定もなく、東京に異動させない限り、Xの改善を期待できなかったものとは認めがたく、本件配転命令に業務上の必要性があったとまではいい難い。Xの長女は特定疾患(心臓病三種合併症)に罹患し、X及びその家族は、本件異動によって相当な不利益を被るものといわざるを得ない。本件配転命令は権利の濫用に当たるから無効というべきである。
エフピコ事件(東京高判平成12年5月24日)
(水戸地下妻支判平11.6.15、東京高判平12.5.24)
【事案の概要】
Yは、合成樹脂製簡易食品容器の製造販売等を業とし、広島県に本社及び工場を置くほか、関東工場(茨城県)など5工場を含む全国21か所の事業所を有している。
Yは、経営合理化のための生産部門の分社化に伴い、関東工場から本社工場への転勤対象としてXら6名を含む10名を選定し、転勤を要請した。その後Yを退職したXら6名は、Yから不当な転勤命令により退職を強要されたなどとして債務不履行ないし不法行為に基づき損害賠償を請求した。
第一審は、Yの損害賠償責任を肯定した。高裁はこれを取り消した。
【判決の概要】
- Xらの本社工場への転勤は、Yの経営合理化方策の一環として行われることになった関東工場の生産部門の分社化に伴って生じる余剰人員の雇用を維持しつつ、本社工場の新規生産部門への要員を確保するべく組織全体で行われた人事異動の一環として計画されたものであって、経営環境に照らして合理的なものであった。そして、Xらを転勤要員として選定した過程に格別不当な点があったとは認められない。
- 関東工場の近くに生活の本拠を持ち、関東工場の従業員として採用されたXらが遠方の広島県福山市へ転勤することについては、それを容易に受け入れられない各人それぞれの事情があることは、それなりに理解できなくはないけれども、…Xらが勤務先を関東工場に限定して採用されたとの事実を認めるに足りないし、就業規則上も、「会社は業務上の必要があるときは転勤、長期出張を命ずることがある。この場合、社員は正当な理由なくこれを拒むことができない」旨明記され、Xらもこれを承知した上で勤務してきたものと認められる。
- YがXらを本社工場に転勤させようとしたことに、人事権の行使として違法ないし不当な点があったと認めることはできない。
参考となる裁判例:「配転命令権の濫用」の事案
帝国臓器製薬(単身赴任)事件(最二小判平成11年9月17日)
(東京地判平5.9.29、東京高判平8.5.29、最二小判平11.9.17)
【事案の概要】
Yは、各種医薬品の製造販売を目的とし、本社及び工場のほかに、営業所を全国8か所、出張所を3か所設置している。従業員は約900名であり、そのうち医薬情報担当者は約250名である。
Xは、入社当初から医薬情報担当者の職務に従事していたが、東京営業所から名古屋営業所への転勤を命じられ、同じ会社で共働きの妻及び3人の子と別居せざるを得なくなり単身赴任を強いられたとして、転勤命令の違法を主張し、債務不履行あるいは不法行為による損害賠償を請求した。
XとYとの間の労働契約書には、「業務の都合により勤務又は配置転換もしくは職種の変更をすることができる。」と規定され、Yの就業規則には、「必要があるときは、従業員に対し出張・転勤・出向・留学及び駐在を命ずることができる」「前項の場合従業員に正当な理由がないときは、これを拒むことはできない」旨が規定されていた。
第一審及び第二審は、本件転勤命令は業務上の必要に基づくもの等としてXの請求を棄却した。最高裁は、原審判断は正当として上告を棄却した。
【判決の概要(第二審判決が最高裁において是認されたもの)】
- 本件転勤命令は、Yにおいて医薬情報担当者に対して長年実施されてきて有用ないわゆるローテーション人事施策の一環として行われたものとして、Yの業務の必要性があり、Xにとっては、Yに勤務を続ける以上はローテーション人事により住所の移転を伴う転勤をする時期が既に到来しており、遅かれ早かれ転勤することを覚悟していて当然であり、転勤先が東京から新幹線で2時間の名古屋という比較的便利な営業所であってみれば、これによって通常受ける経済的・社会的・精神的不利益は甘受すべきであり、妻がY川崎工場に勤務し続ける以上は単身赴任をせざるを得ないものというべきである。
- 他方、Yは、Xに家族用社宅ないし単身赴任用住宅を提供し、従前の例にこだわらず別居手当を支給し、持ち家の管理運用を申し出るなど、就業規則の範囲内で単身赴任、家族帯同赴任のいずれに対しても一応の措置をしたものということができるところ、本件転勤命令においてYのとった対応だけでは社会通念上著しく不備であるとはいえない。
- そうすると、結局、Yの業務の必要性の程度に比し、Xの受ける経済的・社会的・精神的不利益が労働者において社会通念上甘受すべき程度を著しく超えるものと認めることはできない。
- YがXに対して本件転勤命令を発したことに違法性はないものということができる。
ケンウッド事件(最三小判平成12年1月28日)
(東京地判平5.9.28、東京高判平7.9.28、最三小判平12.1.28)
【事案の概要】
Yは、音響機器、通信機器等の製造販売を目的とし、従業員約2000人を擁する会社である。Xは、東京都目黒区のY企画室における庶務の仕事に従事していた。Yは、八王子事業所の人員補充のため、1人を本社地区からの異動により補充することとし、Xを選定して異動命令を行った。
Xは、長男の保育園送迎ができなくなり、家庭生活も破壊される等として本件異動命令に従わず、八王子事業所に出勤しなかった。YはXを停職、後に懲戒解雇した。Xはこの各処分を権利の濫用で無効として提訴した。
第一審及び第二審は、本件異動命令、停職・懲戒解雇をいずれも有効とした。最高裁は、原審判断は正当として上告を棄却した。
【判決の概要】
- Yの就業規則には、「会社は、業務上必要ある時従業員に異動を命ずる。なお、異動には転勤を伴う場合がある。」との定めがあり、Yは、現に従業員の異動を行っている。XとYの間の労働契約において就労場所を限定する旨の合意がされたとは認められない。
- Yの八王子事業所においては退職予定の従業員の補充を早急に行う必要があり、本社地区の製造現場経験があり40歳未満の者という人選基準を設け、これに基づきXを選定した上本件異動命令が発令されたというのであるから、本件異動命令には業務上の必要性があり、これが不当な動機・目的をもってされたものとはいえない。また、これによってXが負うことになる不利益は、必ずしも小さくはないが、なお通常甘受すべき程度を著しく超えるとまではいえない。
- 本件異動命令が権利の濫用に当たるとはいえないと解するのが相当である。
※本判決には、「Xの学歴とXとYとの間に雇用契約が締結された時期とを考えると、(中略)原審が就労場所を特定の勤務地に限定する合意がされたとは認められないとしているのも、東京都内において勤務場所を変更する異動が命じられたという本件事例を前提としたものと理解すべきであり、より広域の異動についても被上告人に転勤命令権があるとしたものではない。」等とする元原利文裁判官の補足意見が付されている。
北海道コカ・コーラ・ボトリング事件(札幌地決平成9年7月23日)
(札幌地決平9.7.23)
【事案の概要】
Yは、札幌本社のほか道内に4支社、2工場、51営業所、従業員1900名をもって飲料製造業を営んでいる。
Yは、収益構造の改善のため生産ライン統合と人員再配置を行うこととし、帯広工場から本社工場への異動対象者としてXを含む4名を選出した。
YはXに本社工場への転勤を内示し、その後、一定期日までに転勤するよう通告した。Xは、本件転勤命令に従わないでいたが、その後、転勤命令を拒否し続けると、懲戒解雇等のより重大な不利益を被る恐れがあると判断し、本社工場に赴任した。Xは、帯広工場を勤務場所とする労働契約上の地位の保全を求めた。
【決定の概要】
- Yの就業規則の中に、会社はすべての従業員に対し転勤を命ずることがあり、従業員は正当な理由なくしてこれを拒むことができない旨の規定があり、Xもこれを遵守することを誓約してYに雇用されていることからすれば、XとYの労働契約において勤務場所を帯広工場に限定する旨の合意があったとは認められない。
- (Xの長女は躁うつ病(疑い)、二女は脳炎の後遺症によって精神運動発達遅延の状況にあり、また、Xの両親の体調が不良であるとして、)Xが一家で札幌市に転居することは困難であり、また、Xが単身赴任することも困難であると認められる。
- 加えて、帯広工場には、協調性という付随的要件に欠けるが、その他の要件を満たす者が他に5人もいることを考慮すると、これらの者の中から転勤候補者を選考し、債権者の転勤を避けることも十分可能であったと認められるから、Yは、異動対象者の人選を誤ったといわざるをえず、Xを札幌へ異動させることは、Xに対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるというべきである。
- なお、Xは、家庭状況を、転勤の内示を受けるまでYに申告せず、却って、長女、二女及び両親に何らの問題もないかのごとき家族状況届を提出し、債務者をして転勤の人選を誤らせており、その対応には遺憾な点が存するが、結局、本件転勤命令が出される1か月以上前にはYに対し家族状況を申告し、転勤には応じ難い旨伝えていることを考慮すると、Xの右対応によって右認定が左右されるものではない。
- 以上の次第で、被保全権利が存在すると一応認められる。
明治図書出版事件(東京地決平成14年12月27日)
(東京地決平14.12.27)
【事案の概要】
Yは、教科書・学習参考書の出版等を主たる目的とし、東京本社のほか、大阪支社、埼玉県に営業開発センター、東京都北区に配送センターがあり、従業員約119名である。
Xは、入社後2年半は営業職に従事したが、その後約10年、東京本社学習教材部門編集部2課に学習教材部編集者として勤務している。
就業規則には、「会社は業務上必要があるときは、従業員に異動を命ずることがある」「従業員は正当の理由なくして、異動を拒んではならない」と規定されていた。
Yは大阪支社の増員を行うため、X及び他の2名を大阪支社へ異動させることを内定した。
Xは共働きの妻がいること、2人の子が重度のアトピー性皮膚炎で東京都内にある治療院に週2回通院していること、将来的に両親の介護の必要があること等を理由に大阪転勤を辞退したい旨申し出た。その後Yは転勤命令を発し、Xは、これを無効として、同命令に基づく就労義務がない旨の仮処分を申し立てた。
【決定の概要】
- 大阪支社の営業部員の状況を背景に、…Xを異動対象と選定したことは合理的であり、…本件転勤命令について、業務上の必要性があると認められる。
- 改正育介法26条の「配慮」については、「配置の変更をしないといった配置そのものについての結果や労働者の育児や介護の負担を軽減するための積極的な措置を講ずることを事業主に求めるものではない」けれども、育児の負担がどの程度のものであるのか、これを回避するための方策はどのようなものがあるのかを、少なくとも当該労働者が配置転換を拒む態度を示しているときは、真摯に対応することを求めているものであり、既に配転命令を所与のものとして労働者に押しつけるような態度を一貫してとるような場合は、同条の趣旨に反し、その配転命令が権利の濫用として無効になることがあると解するのが相当である。
- Yは、Xの大阪への異動について、金銭的配慮を講じる旨の申し出をしているものの、本件転勤命令を再検討することは一度もなかったのであり、転勤を内示した段階で、すでに本件転勤命令を所与のものとして、これにXが応じることのみを強く求めていたと認められ、改正育介法26条の趣旨に反しているといわざるを得ない。
- 本件では人員不足のために絶対に3名の補充が必要であったというわけではなく、X本人のための教育的配慮も相当程度あったのであるから、業務上の必要性が、やむを得ないほど高度なものであったとはいえない。
- 以上を総合すると、Xについて生じている、共働きの夫婦における重症のアトピー性皮膚炎の子らの育児の不利益は、通常甘受すべき不利益を著しく超えるものである。
- 本件転勤命令は権利の濫用として無効である。
ネスレ日本事件(大阪高判平成18年4月14日)
(大阪地判平17.5.9、大阪高判平18.4.14)
【事案の概要】
Yは食品メーカーであり、神戸本社、東京、札幌、仙台等の事業所と、霞ヶ浦(茨城県)、島田(静岡県)、姫路(兵庫県)の3工場を有していた。Yは、姫路工場ギフトボックス係の廃止を決定し、同係従業員のうち定年退職予定の1名を除く60名に、霞ヶ浦工場に転勤するか、退職金を受領して退職するかを選択すべきことを通知した。
同係のX1及びX2は、家族の生活上の都合等により、姫路工場にとどまらせてほしい旨の書面を提出し、Yは、霞ヶ浦工場への異動を促す回答書を送付した。
X1及びX2は、いずれも現地採用者として姫路工場において雇用された者であるが、契約書には「雇傭中に、あなたは、他の勤務地へ転勤される事があり」と記載され、Yの就業規則には「会社は、
業務上の必要に応じ、従業員に異動を命ずる。異動とは、身分の変更、役職および資格の変更、配置転換、職種の変更、転勤、長期出張、駐在もしくは出向、派遣をいう」と定められていた。
X1及びX2は、本件配転命令の無効確認等を求めた。第一審は本件配転命令を配転命令権の濫用とした。高裁はこれを維持した。
【判決の概要】
- Yには、配転命令権があり、本件配転命令もこれに基づいてなされたものと認められる。
- (X2について、育児介護休業法26条が適用されるとした上で、同条に規定する配慮について)配慮をしなかったからといって、それだけで配転命令が直ちに違法となるというものではないが、その配慮の有無程度は、配転命令を受けた労働者の不利益が、通常甘受すべき程度を著しく超えるか否か、配転命令権の行使が権利の濫用となるかどうかの判断に影響を与えるということはできる。
- Yは、本件配転命令を出す際、事前に個別に労働者から家庭環境等に関する事情聴取を行わず、配転命令後に個人面談を行い、その際に申述された事情について考慮して転勤の可否を検討するという方式を採ったが、X2が、…母が要介護2の認定を受けているので介護の必要性があることを申述したにもかかわらず、Yは、その事情を聴取することなく、配転命令に従うことを求めた。…要介護者の存在が明らかになった時点でもその実情を調査もしないまま、配転命令を維持したのは、改正育児介護休業法26条の求める配慮としては、十分なものであったとは言い難い。
- (X1については、育児介護休業法26条は適用されないとしつつ、妻が非定型精神病に罹患していることを考慮し、その上でX1及びX2について)本件配転命令はXらに通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせるもので、配転命令権の濫用にあたり、無効である。
NTT東日本(北海道・配転)事件(札幌高判平成21年3月26日)
(札幌地判平18.9.29、札幌高判平21.3.26)
【事案の概要】
東日本で地域電気通信業務等を業とするYは、事業構造改革のための計画を策定した。その中で、基幹業務である固定電話の保全、管理、営業等の業務を子会社に外注委託することとし、50歳以上の従業員は、子会社に雇用される「繰延型」「一時金型」と、Yとの雇用契約を継続し全国的な転勤もあり得る「満了型」のいずれかを選択することとされ、選択通知書を提出しない者は「満了型」とみなされた。
X1〜X5は、選択通知書を提出せず、X1〜X4は北海道内、X5は北海道から東京への配転が行われた。X1〜X5は、これに対し、配転命令は違法であるとして精神的苦痛に対する慰謝料の支払いを求めた。Yの就業規則には、「社員は、業務上必要があるときは、勤務事業所又は担当する職務を変更されることがある。」との条項があった。
第一審はX1〜X5への配転命令をいずれも権利濫用で違法とした。高裁は、X1〜X4については一審判決を変更し、慰謝料請求を棄却する一方、X5については慰謝料を増額した。
【判決の概要(X5関係)】
- (X5の両親、とりわけ父については介護の必要性が強く)X5による介護が必要不可欠であると認められる。
- X5に対する配転命令は、Yの合理的運営に寄与するものであって、業務上の必要性が認められるものの、…Xに生ずる不利益の如何を問わず、東京への転居が必要となる配転が不可欠であったとまでは認めがたいのに対して、…Xに生じた不利益は、労働者が通常甘受すべき程度を著しく超えるものであり、…労働者の就業場所の変更を伴う配置の変更に当たり、当該労働者の家族の介護の状況に配慮しなければならない旨定める育児介護休業法26条に悖るものといわざるを得ない。…本件配転命令を発したことは、権利濫用として違法である。
参考となる裁判例:「配転拒否を理由とする懲戒解雇」の事案
メレスグリオ事件(東京高判平成12年11月29日)
(東京地判平9.1.27、東京高判平12.11.29)
【事案の概要】
Yは、レーザー等の電子光学部品の製造販売等を業とし、埼玉県比企郡に本社・玉川工場、東京都渋谷区に営業本部及び開発部、神奈川県川崎市に配送センターを有していた。Yは、売り上げ減少を受け、組織統合、人員整理等を決定した。
Xは、Yからの退職勧奨を拒否した後に、東京の営業部から埼玉県の本社への転勤を命じられ、通勤時間が従来の2倍となること、独身女性であることから居住している公団に老後も住み続けたいとして、本件配転命令を拒否し、懲戒解雇された。
Yの就業規則には、業務上の必要がある場合は、従業員に対し就業場所の変更を命ずることがある旨の規定があった。
第一審は、本件配転命令及び懲戒解雇を有効としたが、高裁は、懲戒解雇について、一審判決を変更した。
【判決の概要】
- (Xの自宅から配転先への通勤が不可能であったとはいえないこと等から)本件配転命令は有効であると判断する。
- 配転命令自体は権利濫用と評されるものでない場合であっても、懲戒解雇に至るまでの経緯によっては、配転命令に従わないことを理由とする懲戒解雇は、なお、権利濫用としてその効力を否定されうると解すべきである。
- 本件配転命令はXの職務内容に変更を生じるものでなく、通勤所要時間が約2倍となる等の不利益をもたらすものの、権利濫用と評すべきものでないが、Yは、Xに対し、職務内容に変更を生じないことを説明したにとどまり、本件配転後の通勤所要時間、経路等、Xにおいて本件配転に伴う利害得失を考慮して合理的な判断をするのに必要な情報を提供しておらず、必要な手順を尽くしていない。
- このように、生じる利害得失についてXが判断するのに必要な情報を提供することなくしてされた本件配転命令に従わなかったことを理由とする懲戒解雇は、性急に過ぎ、権利の濫用として無効である。
元資料:『「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」を公表します~事業主が従業員の転勤の在り方を見直す際に役立ててほしい資料を作成~』
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