主体性を伸ばす組織・仕組みづくりをユニークに進める化粧品メーカー「メディプラス」躍進の秘密を探ってきました。【後編】

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部

前編に引き続き、今回もメディプラス社長室 室長・渡辺大介氏と、経理/人事マネージャー・井草陽子氏に、同社の躍進を支える組織づくりを伺います。前回のお話の続きで、組織内に作る、複数の居場所づくりから話が始まります。
 
<前編を読む
 
 

「組織内に作る複数の居場所づくり」は、具体的にどう施策に落とし込んでいますか?

いくつかありますが、一つは「クラス制度」です。勤続年数や業務内容の区別なく、5〜6人で1つのグループを作ります。現在7クラスあり、クラス単位でのコミュニケーションを活性化させる取り組みをしています。 例えば朝ゼミの席配置はクラス単位で、ディスカッションもクラス単位で行っています。先程のライフデザインについても、毎月・日々の単位で掲げた自分の目標をクラス内で見せ合うので、何が出来たか出来なかったかというのも、メンバーで共有しながらやっています。
 

クラス、面白いですね!通常の組織はツリー構造を持つと思うんですが、情報構造でいえば「タグ」のような、メインの構造とは別でまとめる単位があるということですね。今の時代に必要とされている考え方ですよね。クラス制度って、どうやってできたんですか?

これもよくある日常のシーンから思いついたもの。社内の喫煙者が、タバコを吸うために喫煙所に集まりますよね。どうやらそこでは会話しながら業務上の相談なんかも行われたりしていて、そこから帰ってくると、問題が解決していたり、顔が晴れやかになっている社員がいるぞ、という気づきがヒントになりました。
 

自分も昔喫煙していた頃、喫煙所でのコミュニケーションは確かに貴重でした。組織に関係なく、いろんな情報が集まってますし、みんなリラックスしているので、喋るんですよね。

はい、最初、そのリラックス感は喫煙そのものの効果だと思っていたんですが、どうやら、そこでのコミュニケーションが大事なのだと気づきました。タバコを吸わない人でも、同様に部署とは別のくくりをつくってみたらどうだろうという発想です。 当社は、学校のように1年を4ヶ月ずつの節目にわけ、1学期、2学期、3学期と呼んでいるので、そのグループ分けも「クラス」と名付けています。
 

それから、社員に好評な「居場所作り」の取り組みが、「ファミラブ制度」です。ファミリー+ラブから来ていて、家族間のグルーミングを促進する仕組みです。ファミラブ休暇、ファミラブウィーク、ファミラブチケットなどがあります。
 

ファミラブ休暇というのは、飛び石連休が合ったらそこは休みにするという発想で、これは公休扱いになります。 ファミラブウィークは、年間2回、3月と10月の連休がない月に設けるミーティングを控える週間のこと。フレックス勤務制にして、普段できない自分のための時間の使い方をしてみてほしいと思っています。
 

この制度は、多様性を生み出すきっかけにもなりますね。いろいろなコミュニティに参加することを推進されますね。

そうなんです。ファミラブチケットは、従業員が帰省する年末年始のタイミングにあわせて支給するギフト券です。家族との時間に使えるようにとメッセージを込めています。みんな休み明けに帰ってくると、何をしていたかだとか、これに使ったとか、報告もきちんとしてもらってそこでもコミュニケーションが促進されています。
 

他になにか、グルーミングに関してありますか?

全社員で夕礼を行っていて、それが勤務間インターバルをきちんととるよう促す役割を併せ持っています。17時の段階でいったん業務を区切るよう意識して、早く帰れるようにしましょうという奨励をしています。これは当初、社内で平均45時間/月を超える残業をしている人たちが、なるべく早く帰れるように、と始めたことでもあります。
 

当社の場合、広告関連の部署は、パートナー会社との調整も多いため、夜忙しくなりがちという傾向があります。残業の実情は、目に見えて改善というわけにはまだいきませんが、前年同月比で13%ほど改善していますし、その上で有給休暇の取得率も前年比20%ほど改善しています。様々な試みの効果が一定以上出ているのかなと思っています。
 

ちょっと話は飛ぶのですが、先程から社内を拝見していて、女性が多い印象があります。育児休業・休暇について、どのように考えていますか?

前提として、社員の男女比率は半々です。パートの方や派遣社員の方を含めますと、女性の方が多くなっています。 いわゆる育休などの制度は、他社と比べて特別違いはないと思います。 ただ、働き方を自分で変えることができるようになっています。正社員、契約社員といった雇用の形態を変えることで、ライフスタイルに合わせた勤務ができる選択肢を用意しています。 育児に限らず、いろいろと事情はあると思います。介護であったり、会社以外にもやりたいことがあるという事情に柔軟に対応しています。
 

社員数から考えますと、このあたりは制度化するというより、個別対応した方がまだ効率的だと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか?


 

今は仕事を頑張りたいのか、家族のためにもっと時間を使いたいのか。その時、その時の人生における優先順位に合わせて雇用形態を変えることで、本人の気持ちも楽になるんじゃないかと思っています。たとえば、子どもが大きくなっても時短勤務したいと希望した場合、周囲に迷惑をかけることになるのでは?と気になることもあるでしょうから。その期間は契約社員となり、条件など細かな調整はありますが、その後また社員に戻るという選択肢が選べるように、制度化しています。
 

会社組織と従業員、お互いのコミットメントレベルを調整しながら、制度をチョイスしていくというスタンスです。
 

男性の育休状況はいかがですか?

育休というのはまだありませんが、時短勤務を選択している人はいます。
 

参考までに、御社の平均年齢は何歳くらいか教えてください。

35、6歳くらいです。当社の場合、社長と同年齢か若いくらいが多い状況です。あまりベテランというか、シニアはいない状況ですね。
 

ストレスオフという考え方に基づいた諸制度について、今後改善していきたいことがあれば教えてください。

朝ゼミについて。やはり、これを当社の原動力の源泉にしたい想いがありますので、やり続けるという方針は変わり無いのですが、やり方や中身は、組織全体のフェーズに合わせて変えていかなければならないと思っています。実施して5〜6年経ちますが、これまでも中身はどんどん変わっていますね。 最初は本当に手探りだったので、最初は、経理担当が登壇して「経理クイズ」などもやっていました。会社のことや各々の業務のことを自分ごとにしてもらおうという試みだったんです。
 

「このオフィスの家賃いくらだ?」など、○×クイズ形式で出題したりという感じです。そういったことで普段と違う発想とか、事業に関心を持てる機会にしてほしいという狙いでした。また、それぞれが発表の場を体験することで、自分自身も成長するという効果もあります。しかし社員数が増えてきて、自分の順番がなかなかこないという問題もあり、内容を精査して絞っているところです。
 

あと、当たり前のレベルも上がっていきますよね。「ポラリス」や、朝ゼミの仕組みはすごいことなんだけれど、できた過程を知らない従業員が、それがある前提で入ってくると、有り難みが感じられないですよね。今回お聞きした諸制度は、他の会社と比較したりするとすごいことだと思うのですが、そういうのが無く「これがデフォルトだ」と思われてしまうと、しんどいですね。

ありがとうございます。はい、中にいると当たり前になってしまいがちです。このポラリスを始めた時からのメンバーと、入ってもらうタイミングの従業員とでは、なかなか温度差が発生しがちなので、そういったものを無くしていかないとと思っています。 これが解になるかわかりませんが、取り組みたいのは、採用の場面にどれだけ従業員を巻き込めるかだと思っています。
 

役柄上、外部の方に制度についてお話するたくさん機会があり、有り難いことに評価頂いていると感じる機会があるのですが、我々以外はそういう場面に出会うことが限られています。
 

そこに採用を絡ませて、例えばリクルーターのような役割を担わせれば、会社の良いところを相手に話して、説明する必要が生じます。そうなれば「どういう制度があったっけ?」と、改めて認識する機会にもなります。
 

自らの言葉で話す中で「いいですね」と言われたら、やっぱりいいんだ、と再認識できますから、そこは採用活動をしつつ、インナーブランディングに繋がっていけばと、同時にできればという目論見はあります。なかなかまだ、そこまでいけていませんが。 そういえば最近、リンクアンドモチベーション社の、モチベーションクラウドを導入し、エンゲージメントスコアも直近で74.6となりました。これは全体の中で、上位3%の偏差値とのことで、当社の働きがいについて数値化、可視化できたことは、我々の励みになっています。
 

ありがとうございました。最後に参考までに、渡辺さんはずっとこういった組織づくりを専門にやられてきたんですか?各制度がすばらしいので、バックグラウンドを知りたくなってしまいました。

今ある制度のほとんどは恒吉による発想が大部分ですが(笑)。ここに来る前は、外部パートナーとしてCS、お客様関連の仕事に携わっていました。4年ほど前にこの会社にジョインした際も、CS部でやっていました。そんな中で恒吉が「社長室をつくろうと思うんだけど。何やるかまだ決めてないけど。」という感じで。笑
 

そこから経営のメッセージを社内に浸透させるにはどうしたら良いかを考えるところから初めて、そこでやっていくとしたら運用を担うコーポレート関連の事も担当したほうがやりやすいのではと恒吉と相談し、いまはこのような役(コーポレート企画部 部長 兼 社長室 室長)をやらせてもらっています。社員手帳「ポラリス」の1冊目は、入社した年に制作委員会に加わり作ったものです。
 

楽しいお話、ありがとうございました。

ありがとうございました。

 
<前編を読む
 
 

Profile

『人事労務の基礎知識』編集部
株式会社BEC内で、Gozal(ゴザル)の編集制作を担当する部門です。社会保険労務士/弁護士/税理士などの専門家執筆陣とともに、中小企業の労務・給与計算担当の方が実務上感じる不安を払拭できるよう、情報発信しています。「こんな記事を読みたい!」とTwitterやFacebookでメッセージいただければ、可能な限り執筆いたします。