中小企業でプライバシー侵害しないために気をつけたいこと

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

経営者は使用する労働者を管理する上で、労働者がきちんと働いているかを監視する役割があります。しかし、あまり行き過ぎた監視は労働者のプライバシーを侵害する恐れがあります。プライバシーとは何か、どのようなケースがプライバシーの侵害となるのか、プライバシーを侵害しないようにするにはどのようにすべきかを確認してみましょう。

個人のプライバシーとは

日常の生活の中で、個人情報とプライバシーは区別するとことなく、使われています。しかし、厳密にはこの2つの言葉の意味は異なります。 個人情報が氏名、生年月日などの個人を特定する情報になります。それに対して、プライバシーとは、個人の秘密であり、第3者である他人から干渉されるべきでないものになります。 個人情報とプライバシーの関係は明確なものは、示されていません。例えば、配達先の宛名は、個人を特定する個人情報であり、手紙の中身はプライバシーということになります。 個人情報は個人情報保護法によって守られていますが、プライバシーは守られている法律が明確には存在しません。ただし、個人情報保護法により、会社が個人情報を守る結果として、プライバシーも侵害されない状態になっているといえます。

こんなケースはプライバシーの侵害になる?

具体的に会社の経営者が従業員に対して行う行為で、どのようなケースがプライバシーの侵害に該当するのかを確認してみましょう。

 従業員の机を経営者が勝手に見るのは?

このケースは、私物や所持品の調査に該当し、業務上、必要な場合であっても、相当の注意をすべきケースです。好奇心や嫌がらせの目的で行う場合は、プライバシーの侵害になります。業務上に関係するもので、合理的な理由があれば、一般的に妥当な方法で行うには、問題ないでしょう。

 従業員の会社のメールを経営者が勝手にみるのは?

従業員の会社のメールを経営者が勝手にみるのは、業務を確認する目的で行う場合は許容され、プライバシーの侵害にはなりません。PCは会社の所有物であり、私的に使用してはならないものだからです。よって、業務上、使用しているメールを経営者が確認するのは問題ないです。

 従業員の行動を監視カメラで監視するのは?

 このケースは違法行為の防止目的で、監視の必要性が高いと思われる場合に、一定期間で一定の場所で  監視カメラで監視するのは、プライバシーの侵害とはなりません。しかし、在宅勤務の場合に監視カメラで監視するのは、自宅というプライバシーな場所を常に映すことになり、プライバシーの侵害に該当します

 経営者が会社に盗聴器を仕掛けるのは?

このケースは盗聴器をどこに仕掛けるのかで、解釈が変わってきます。オフィス内の机周りや休憩室であれば、公共の場所となるので、問題ないでしょう。ただし、トイレや更衣室に仕掛けるのはプライバシーの侵害に該当します。

 従業員の年収を経営者が他人にいいふらすのは?

 給与情報は個人情報であり、この情報を従業員の同意なく、他人にいいふらすのは、プライバシーの侵害に該当します

 従業員の休日の行動を把握しようとするのは?

従業員の休日の行動はプライベートなものであり、会社の業務とは関係ないものなので、休日の行動を把握するのは、プライバシーの侵害に該当します

 会社が従業員の通院歴や身長体重を把握するのは?

定期健康診断の結果は5年間保存しなければならず、労働者を使用する立場の上司や経営者は使用人の健康状態を知る必要はあるでしょう。ただし、業務を行う上で関係ない情報を把握することは行き過ぎであり、従業員の通院歴や身長体重までは、プライバシーの侵害に該当します

プライバシーを侵害しないために気を付けたいことは

会社と個人の関係は繊細なものであり、様々な事情があります。しかし、トラブルが起きてしまっては従業員の雇用継続の問題となります。よって、あらかじめ、プライバシーの侵害になりえる問題に関しては、出来るだけ、事前に従業員に対して、業務に関連することは、監視活動を行うことがあることを同意してもらう必要があるでしょう。 例えば、従業員の会社のメールを経営者が勝手にみるケースでは、事前に私的にメールを使用することを禁止することを明確にして、社内のメールは業務を確認する目的で閲覧することがあることの同意を得ておくべきでしょう。

まとめ

プライバシーの侵害は個人によって感じ方も違い、悩ましい問題であるといえます。しかし、最近では個人情報保護法も確立されており、個人も自分の権利を主張する時代となっています。ここで示した見解はあくまでも、一つの考え方です。判断に迷った場合は、弁護士などの専門家に相談することを検討してください。