[2017年版] 出産・育休・職場復帰する従業員の手続き

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

女性の社会進出が、これからさらに加速すると考えられます。妊娠しても会社を辞めずに育児休暇を取って会社に在籍し続ける女性社員が増えています。また、人事制度の進んだ企業では、男性が育児休暇を取得ケースも珍しいことでは無くなってきました。

この記事では、妊娠の報告を受けてから、育児休暇を終えた職場復帰までの、出産・育児に関する会社がやるべき社会保険・雇用保険の手続きを詳しく説明します。出産・育児の際は、さまざまな医療助成や控除・補助を受けることができるので、しっかり理解して、従業員をサポートしていきましょう。

前提として知っておく事

<産休と育休の違い>

まず、産休と育休の違を正しく理解しましょう。「産休」は出産予定日の6週間前から出産の翌日から8週間に休暇を取得することで、「育休」は産休終了後の子供が1歳になるまでの期間に休暇を取得することです。

以下の場合には、育休期間は子供が1歳半になるまで延長できる場合もあります。
育児休業が延長できるのは以下のような場合です。

  • 保育所の申し込みを行っているが保育場所を確保できない場合
  • 養育を行う場合だったものが負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により養育することが困難な場合
  • 養育を行う予定だった者が死亡した場合
  • 婚姻の解消その他の事情により配偶者が子と同居しないことになった時
  • 6週以内に出産する予定であるか、産後8週間を経過しないとき

(参考:育児休業給付の内容及び支給申請手続きについて

 

<マイナンバー(個人番号)について>

日本年金機構に提出する、厚生年金関連の書類については、マイナンバーの使用が延期されており、2016年10月現在、記入は不要です。

また、協会けんぽに提出する、健康保険関連の書類についても、マイナンバーの使用開始予定は平成29年1月以降となりますので、こちらもマイナンバーの記入は不要です。

マイナンバーの取り扱いについては各健康保険組合で取り扱い方法が異なりますので、自社の健康保険組合の取り扱い方法に従って下さい。なお、税務関係の「給与所得者の扶養控除申告書」や雇用保険の「育児休業」
関連の書類はマイナンバーの記入が必要です。注意しましょう。

(参考:日本年金機構へおけるマイナンバーの対応 2016年5月2日

<生まれてくる子どものマイナンバーについて>

出生したばかりの子供は、出生届が受理された時点でマイナンバーが決定されます。通知カードの発行は、通常後日発送となります。手続書類にマイナンバーを記載する際、本人確認を「住民票」ではなく「通知カード」で行う場合は、通知カードがまだ従業員の手元に届いていない可能性がありますので注意しましょう。

<妊娠・出産前後に退職した従業員について>

妊娠・出産前後に退職する従業員もいると思います。退職した場合でも、一定の条件を満たすことで、助成を受ける権利が残ります。出産育児一時金、出産手当金については、以下の要件を満たすと給付を受けられるので、確認しておきましょう。

【退職者が出産育児一時金・出産手当金を受けられる条件】

  • 資格喪失日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間があること
  • 資格喪失後から6カ月以内の出産であること
  • 資格喪失時に出産手当金を受けているか、受ける条件を満たしていること(退職日に出勤した場合には継続給付を受ける条件を満たないために資格喪失後以降の出産手当金は支払われない)
  • 妊娠4ヶ月(85日)以上の出産である(早産、死産、流産、人工中絶も含む)こと(例:退職後2ヶ月後に、妊娠8ヶ月で子供を死産した場合も給付の対象になる)

出産・育児に関して必要な手続き一覧

さて、具体的に細かな手続きの説明をする前に、これから必要な手続きを一覧にまとめました。出産前、出産後〜育児中、職場復帰時に分けて、全体を俯瞰してみましょう。眺めてみて気づくのは、ほとんどの手続きは出産して出産日が確定してからという点や、男性は楽だなあという点でしょうか。笑

【出産前】

  • 3-1.健康保険・厚生年金保険 産前産後休業の取得申請
  • 3-2.傷病手当金の受給申請(一部)
  • 3-3.高額療療養費の受給申請(一部)

こちらもご覧ください:出産時に高額医療費を受けとるための条件と保証内容

【出産後〜育児中】

  • 4-1.出産育児一時金の受給申請
  • 4-2.出産手当金の受給申請
  • 4-3.育児休業等取得者の申出
  • 4-4.健康保険・厚生年金産前産後休業取得者変更(終了)届(一部)
  • 4-5.扶養への加入手続き
  • 4-6.給与所得者の扶養控除(異動)申告
  • 4-7.育児休業給付受給の申請

【職場復帰時】

  • 5-1.健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者終了の届出
  • 5-2.健康保険・厚生年金保険 養育期間標準報酬月額養育期間特例の申出
  • 5-3.健康保険・厚生年金保険 養育期間標準報酬月額養育期間特例の終了(一部)
  • 5-4.健康保険・厚生年金保険 育児休業終了時月額変更の届出
  • 5-5.雇用保険の手続き(一部)

 

出産前の手続き

ここから、出産前の手続きを説明します。最初に社員から妊娠の報告を受けた時点が、スタート地点です。報告を受けたら、社会保険、雇用保険の出産関連の手続きをはじめます。

3-1.健康保険・厚生年金保険 産前産後休業の取得申請

産前産後の従業員は、社会保険料を免除されます。「健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申出書」を、管轄の年金事務所に提出する必要があります。雛形と記入例、記入後の重点確認ポイントを説明しています。従業員が休暇期間に入ったら早めに記入し、管轄の年金事務所に早めに提出しましょう。(※提出時の添付資料はありません)

提出書類:健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申出書

>雛形ダウンロード先:日本年金機構 (別ウィンドウで開きます)

記載後の重点確認ポイント!

  • 事業所記号、被保険者の氏名、年金番号生年月日を正確に記入しているか
  • 出産予定日、出産種別を正確に記入しているか
  • 産前産後休業期間(出産以前42日、出産の日の56日後で労務に服さなかった期間)を正確に記入しているか
  • 出生児氏名はやむを得ず提出が出産後になった場合には、出生児氏名を正確に記入しているかに記入
  • 事業所名等を正確に記入しているか。の記入、押印を忘れていないか

3-2.傷病手当金の受給申請・3-3.高額療療養費の受給申請(一部)

妊娠の経過次第では、長期入院や高額療養費の対象となる療養・治療を受ける場合があります。医師が療養を必要と認めた傷病で、連続3日を超えて会社を無休で休んだ場合に、傷病手当金の支給対象となります。この場合、有給休暇を使用してしまうと対象外になりますので、注意しましょう。

提出書類:健康保険 傷病手当金支給申請書
>雛形ダウンロード先:協会けんぽ (別ウィンドウで開きます)
>記入例参照先:協会けんぽ (別ウィンドウで開きます)

提出書類:健康保険 高額医療費支給申請書
>雛形ダウンロード先:協会けんぽ (別ウィンドウで開きます)
>記入例参照先:協会けんぽ (別ウィンドウで開きます)

また、入院の費用が高額になると、高額療療養費の対象となる可能性があります。詳しくは、出産時に高額医療費を受けとるための条件と保証内容を参照してください。

 

出産後〜育児中の手続き

ここからは、出産後の手続きです。出産と育児は、連続したイベントなので、境目が難しく、説明が長くなってしまいますが、ぜひついてきて下さい。

4-1.出産育児一時金の受給申請

従業員から「出産した」と報告を受けたら、女性従業員が自身で出産する場合は「出産一時金」を申請します。男性従業員の妻や扶養家族が出産する場合は「家族出産一時金」を申請します。

出産一時金は、社会保険(健康保険組合)より、出産した子供1児につき42万円が支給される制度です。支給されるための要件は、被保険者または家族が妊娠4ヶ月(85日)以上で出産したこと(早産、死産、流産、人工中絶も含む)です。扶養家族が出産した場合(※主に男性従業員の家族が出産した場合)は、家族出産育児一時金として申請しますが、支給金額や内容は同一です。

>出産一時金の申請方法
A.通常の方法(直接支払い制度を使用しない方法)
子供が産まれたら速やかに申請書(下記に雛形、記入例、気を付ける点の説明をしています)を記入し、医療機関に発行してもらう「直接支払制度を使用していないことの証明」、もしくは「戸籍謄本、出生届受理証明書、母子健康手帳、住民票等」のうちのいずれかのコピーを添付して、協会けんぽに提出します。届出はすみやかに行いましょう。

A.通常の方法の提出書類:出産育児一時金申請書
>雛形ダウンロード先:協会けんぽ (別ウィンドウで開きます)
>記入例参照先:協会けんぽ (別ウィンドウで開きます)

記載後の重点確認ポイント!

  • 記号・番号、被保険者の氏名、生年月日を正確に記入しているか
  • 振込先を正確に記入しているか
  • 出産者や産まれた子供の情報を正確に記入しているかに関する記載を正確に
  • 医師、もしくは市区町村の出生に関する署名をもらっているか

B.直接支払制度を利用する方法
直接支払い制度とは、出産育児一時金を健康保険組合から医療機関に直接支払う制度です。被保険者が医療機関(産婦人科等)で指示される方法に従い手続きすると、医療機関が健康保険組合に申請します。事実上、従業員が出産の費用を工面する必要がなくなるため、従業員のふところに優しい制度といえます。零細の医療機関の場合には、「代理受理制度」と呼ばれる仕組みを医療機関から勧められる場合があります。これは、被保険者が受け取るべき出産育児一時金を医療機関が被保険者に代わって受け取る制度となります。便利な制度ですが、出産について医療機関に支払う費用が42万円を下回る場合、その差額も医療機関に入金される点は注意が必要です。

代理制度を利用せず、直接支払制度を活用する場合、医療機関でかかった費用が42万円以下の場合は、差額を従業員が受給できるように手続きします。「出産育児一時金差額申請書(内払金支払依頼書)」を作成し、協会けんぽに提出します(下記に雛形、記入例、気を付ける点の説明をしています)。

B.直接支払い制度の提出書類:出産育児一時金差額申請書(内払金支払依頼書)
>雛形ダウンロード先:協会けんぽ (別ウィンドウで開きます)
>記入例参照先:協会けんぽ (別ウィンドウで開きます)

記載後の重点確認ポイント!

  • 被保険者証の番号、被保険者の氏名、生年月日、住所を記載
  • 振込先の口座を記入
  • 出産者の氏名、生年月日を記入
  • 出産日、種別、出産人数等を記入
  • 出産した病院名、住所を記入
  • 出産に関する医師の証明を受ける

差額が出ない場合は医療機関への手続きのみで完了するので提出は不要
上記は実際に医療機関に払った金額が出産育児一時金よりも少ない場合に提出する
(例:医療機関への支払額35万円、出産育児一時金42万円の場合
差額の7万円についての支給申請することができる )

4-2.「健康保険出産手当金」の申請

従業員本人が出産する場合、出産の前後は仕事を休む必要があります。この期間、会社は給与を支払わない事が多いと思います。その場合は「健康保険出産手当金」を支給します。この制度は、出産日以前の42日から、出産日の翌日以降56日までの期間、会社を無給で休んだ場合に、休暇期間の給与支給がなかったらという条件で、一日につき標準報酬日額の3分の2が支給される制度です。早産、死産、流産、人工中絶の場合も、妊娠4ヶ月(85日)以上経過していれば、対象となります。出産後のなるべく早い段階で、速やかに協会けんぽ等、加入している健康保険組合に提出します。

提出書類:健康保険出産手当金支給申請書
>雛形ダウンロード先:協会けんぽ (別ウィンドウで開きます)
>記入例参照先:協会けんぽ (別ウィンドウで開きます)

記載後の重点確認ポイント!

  • 記号、番号、被保険者の氏名、生年月日、住所を正確に記入しているか
  • 振込先の金融機関を正確に記入しているか
  • 出産日や休んだ期間、報酬の有無について正確に記入記載しているか
  • 出産したことに対する医師の証明を受けているかる
  • 労務に服さなかった期間と給与の支払いの有無に関して正確に記入しているか記載
  • 事業所の所在地、名称を正確に記入しているか
  • 事業主名の最後に押印を忘れていないか

※従業員が勤務する事業所が、支給開始日以前の12カ月以内に異動・引っ越しなどの変更があった場合は、以前の各事業所の名称、所在地及び各事業所に使用されていた期間がわかる書類を添付して提出する必要があります。この場合には協会けんぽの場合は所定の書類を添付することになっています。(添付書類ダンロード先

4-3.育児休業等取得者の申出

育児休業期間に、社会保険料を免除するための申出を行います。社会保険料は高額なため、従業員本人にとっても、会社にとっても大変重要な手続きとなります。従業員が、育児休暇を取得した後速やかに、管轄の年金事務所に提出しましょう。添付書類は必要ありません。

提出書類健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)
>雛形ダウンロード先:日本年金機構 (別ウィンドウで開きます)
>記入例参照先:日本年金機構 (別ウィンドウで開きます)

記載後の重点確認ポイント!

  • 事業所記号、被保険者の氏名、年金番号生年月日を正確に記入しているか
  • 養育する子の氏名、生年月日、区分を正確に記入しているか
  • 「養育のため休業する期間」は原則として子の生年月日の翌日から起算して57日後になっているか
  • 男性が取得する場合には養育のために休む期間を記入しているか
  • 事業所名等の記入を正確に記入しているか
  • 押印漏れしていないか

4-4.健康保険・厚生年金産前産後休業取得者変更(終了)届(一部)

出産前に、「健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申出書」を提出し、出産日(予定日)を記入していると思います。今回の届出は、正しい出産日を届出し、産休期間を正確に計算してもらうために提出します。出産後すみやかに、管轄の年金事務所に提出しましょう。特に添付資料は必要ありません。

提出書類:健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者変更(終了)届
>雛形ダウンロード先:日本年金機構 (別ウィンドウで開きます)

記載後の重点確認ポイント!

  • 出産予定日に出産した場合には提出不要だと理解しているか
  • 事業所記号、被保険者の氏名、年金番号生年月日を正確に記入しているか
  • 正確な産前産後休業期間を正確に記入しているか
  • 事業所名等の記入を正確に記入しているか
  • 押印漏れしていないか

4-5.扶養への加入手続き

従業員や、その家族が出産した子供を、扶養家族に入れるための届出手続きを行います。扶養の届出をしないと、新しく産まれた子供の保険証を発行できませんので、できるだけ速やかに行ってあげましょう。

提出書類:健康保険 被扶養者(異動)届
>雛形 ダウンロード先:日本年金機構 (別ウィンドウで開きます)

  • 添付書類:世帯全体の住民票(続柄記載は必須)、戸籍謄(抄)本

※健康保険組合によって詳細が異なる場合もありますので、加入している健康保険組合に確認してみましょう。

記載後の重点確認ポイント!

  • 事業所の整理記号、被保険者の整理番号、氏名を記入
  • 資格取得年月日、異動の別、住所を記入
  • 子供の名前、生年月日を正確に(この名前で保険証が作成されます)
  • 性別、続柄を記載、収入にゼロ記載するのを忘れずに
  • 被扶養者になった日は生まれた日を記載

4-6.給与所得者の扶養控除(異動)申告

税法上の手続きで必要になりますので「給与所得者の扶養控除(異動)申告書」についても出生した子供の分を記載して従業員に提出してもらいましょう。
下部に16歳未満の扶養親族について記載する欄がありますので、追加事項として記入してもらうことが必要になってきます。

子供が修正したことで月々の給与計算の所得税の金額が変わるわけではありませんが、住民税の関係で年末調整の際には必要になってくるので提出してもらうと良いです。
その際に子供のマイナンバーもしっかり記載してもらえると手間が省けますね。この書類は従業員が会社に提出するもので、会社が税務署に届け出るものではありません。会社は税法上必要な扶養者を確認し、そのデータを年末調整に反映させます。

提出書類:給与所得者の扶養控除(異動)届
>雛形ダウンロード先:国税庁 (別ウィンドウで開きます)

記載後の重点確認ポイント!

・下部に16歳未満の扶養親族の記載欄に子の氏名、生年月日を記載
・住所を必ず記載してもらい、事由については「出生のため」とする

4-7.育児休業給付受給の申請

冒頭で説明したとおり、産後57日以降から、子供が一歳になるまでの期間は、育児休業期間として扱います。女性従業員本人が出産する場合でも、男性従業員の妻や扶養家族が出産する場合でも、育児休業期間にはハローワークから「育児休業給付」が支給されます。

支給される条件は「育児休業の開始2年間に、賃金支払い基礎日数が11日以上ある完全月が12カ月以上ある」と定義されています。転職者の場合は、転職前後で雇用保険の空白期間が無いことが条件です。給付額は、育休開始から180日目までは、月給目の67%となり、181日目以降は50%となっています。「月給」とは、基本給のことではなく、残業代等も含めた金額となります。

>申請する書類と添付資料

A.通常の場合
提出書類:育児休業給付受給資格確認票
>雛形ダウンロード先:厚生労働省 (別ウィンドウで開きます)

  • 提出期限:育児休業開始後10日以内
  • 提出先:管轄のハローワーク
  • 添付書類:雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書、賃金台帳、出勤簿、母子手帳など、育児を行っている事実、書類の記載内容が確認できる書類、銀行の振込先が確認できる通帳のコピー(金融機関の押印をもらわない場合)
  • 注意事項:男性の場合は、育児休業の開始日を「会社を休み、無給で子供の養育を開始した日」とします。女性の場合と異なりますので注意してください。
    記載後の重点確認ポイント!
  • 被保険者番号、資格取得日、事業所番号を正確に記入しているか
  • 育児休業開始日、出産年月日、育休取得者の住所、電話番号、マイナンバーを正確に記入しているか
  • 支給単位期間を1ヶ月ごとに2か月分を記入、就業日数、支払われた賃金額を正確に記入しているか
  • 事業所名、事業主、申請者氏名を正確に記入しているか
  • 事業主の押印を忘れていないか
  • 育休取得者本人の銀行口座を記入、金融機関による確認印を受けているか

 B.初回の受給申請も、同時に行う場合
提出書類:育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付支給申請書
>雛形ダウンロード先:厚生労働省 (別ウィンドウで開きます)

  • 申請期限:育児休業開始日から4カ月を経過する日の属する月の末日まで
    (例:育児休業開始7月10日  提出期限11月末)
  • 添付資料:A.通常の場合と同じ
  • 注意事項:養育のために出勤していないことの証明(出勤簿、賃金台帳等)を、
    初回の支給単位期間(初めの2カ月)が過ぎてから提出する必要があります。

記載後の重点確認ポイント!

  • 被保険者番号、事業所番号、氏名を正しく記入
  • 育児休業を開始した日(産後の8週間の産休が終了した翌日)
  • 会社名、所在地、電話番号、事業主、育休取得者の住所を正確に記入
  • 賃金支払い対象期間ごとの支払い基礎日数、賃金の支給額を記入
    (賃金支払い基礎日数が11日以上ある月を12カ月分以上記入)
  • 備考欄に産休のためにいつからいつまで賃金の支払いがないのかを記入

>初回と、2回目以降の申請について
初回の賃金登録、並びに初回の申請は会社側で必ず手続きをします。2回目以降(2か月に1度)については、従業員本人の希望や、事情がある場合は、本人がハローワークに行って手続きすることも可能です。その場合は、働いていないことや無給であることを証明するための添付資料が必要です。出勤簿やタイムカード、賃金台帳などで証明できますので、必要な添付書類として送付してあげましょう。また申請書類に会社の印鑑なども必要です。結局は、会社側で必要な書類を作成、押印し、添付書類と合わせて従業員本人に送付することになるかと思います。

こちらもご覧ください:育児休業給付金の計算がわかる記事

職場復帰時の手続き

さて、職場復帰です。職場復帰には、時間短縮して復帰する場合、完全にフルタイムで復帰する場合など、従業員に合わせたバリエーションが発生します。会社の事情も十分考慮した上で、ぜひ柔軟に対応してあげましょう。

5-1.健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者終了の届出

予定よりも早く育児休業を終了したときのみ、会社(事業所)を管轄する年金事務所に提出する書類です。目的は、育児休業の終了時期を年金に反映させるためです。添付書類は特に必要ありませんので、出産後なるべくはやいタイミングで提出しましょう。

提出書類:健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者終了届
>雛形 ダウンロード先:日本年金機構 (別ウィンドウで開きます)
>記入例参照先:日本年金機構 (別ウィンドウで開きます)

記載後の重点確認ポイント!

・事業所整理記号、被保険者整理番号、基礎年金番号、氏名を正確に記入しているか
・被保険者の生年月日、氏名、養育する子の生年月日、種別を正確に記入しているか
・育児休業等開始年月日、終了年月日を正確に記入しているか

5-2.健康保険・厚生年金保険 養育期間標準報酬月額養育期間特例の申出

子供が3歳までの期間について、申請可能となる特例申請です。職場復帰時に、時短勤務を選択した場合に、一時的な賃金低下が発生しますが、この低下分を、年金の受給額に影響させないために、子供が産まれる前の標準報酬月額を適用させる制度です。出産後の従業員に確認し、特に異論がなければすぐに会社(事業所)を管轄する年金事務所に申請します。添付書類として、戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書、住民票原本(同居を確認できるもの)を一緒に持っていく必要があります。

提出書類:健康保険・厚生年金保険 養育期間標準報酬月額養育期間特例申請書
>雛形 ダウンロード先:日本年金機構 (別ウィンドウで開きます)

記載後の重点確認ポイント!

  • 事業所整理記号、被保険者整理番号、被保険者の氏名、生年月日を正確に記入しているか
  • 養育する子の氏名、生年月日を正確に記入しているか
  • 養育することとなった月の前月に勤務していた事業所所在地、名称を正確に記入しているか
  • 養育開始日を正確に記入しているか
  • 事業主の所在地、事業所名等を正確に記入しているか
  • 事業主印を、押印忘れしていないか
  • 被保険者本人の住所、氏名等を正確に記入しているか
  • 被保険者本人印を、押印忘れしていないか

5-3.「健康保険・厚生年金保険 養育期間標準報酬月額養育期間特例の終了(一部)

養育期間の終了日に変更があった場合、例えば残念ながらお子さんが死亡したなどの事由で、養育の必要が無くなった場合の届出です。管轄する年金事務所に、事実発覚後なるべく早く提出しましょう。添付書類は特に必要ありません。

提出書類:健康保険・厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例終了届
>雛形ダウンロード先:日本年金機構 (別ウィンドウで開きます)

記載後の重点確認ポイント!

・事業所整理記号、被保険者整理番号、被保険者の氏名、生年月日を正確に記入しているか
・養育する子の氏名、生年月日を正確に記入しているか
・養育開始日、養育終了日を正確に記入しているか
(養育開始日には「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出受理通知書」に記載されている日付を、正確に記入しているか)
・事業主の所在地、事業所名等を正確に記入しているか
・事業主印を、押印忘れしていないか
・被保険者本人の住所、氏名等を正確に記入しているか
・被保険者本人印を、押印忘れしていないか

5-4.健康保険・厚生年金保険 育児休業終了時月額変更の届出

職場復帰する際、フルタイムではなく、時短で復帰する場合もあると思います。また、時短で復帰したけれど、フルタイムに変更する場合もあります。勤怠が変更されると、給与にも影響します。3歳未満の子を養育している従業員(被保険者)は、次の条件を満たすと、随時改定に該当しなくても、4か月目の標準報酬月額から改定できます。「健康保険・厚生年金保険 育児休業終了時月額変更届」を管轄の年金事務所に提出し、変更申請します。添付資料は特に必要ありません。

>該当する条件
・提出している標準報酬月額との間に1等級以上の差が生じる(支払基礎日数が17日未満の月は除く)
・育児休業終了日の翌日が属する月以後3か月のうち、少なくとも1か月における支払基礎日数が17日以上である
※短時間労働者(パート)については、3カ月のいずれも17日未満の場合、15日以上17日未満の月の報酬月額の平均によって算定する。

>申請時期
・育児休業終了日の翌日が属する月以後3か月分の報酬額が確定してから

提出書類:健康保険・厚生年金保険 育児休業等終了時報酬月額変更届
>雛形ダウンロード先:日本年金機構 (別ウィンドウで開きます)

記載後の重点確認ポイント!

・事業所整理記号、被保険者整理番号、基礎年金番号、氏名、生年月日、種別正確に記入しているか
・賃金の締め、支払日を正確に記入しているか
・養育する子の氏名、生年月日、育児休業を終了した日を正確に記入しているか
・従前の標準報酬月額を正確に記入しているか
・育児休業が終了した日の翌日が属する月から連続する3カ月を正確に記入しているか
・それぞれの月の賃金額を記入、3か月分の合計、平均額、改定月を正確に記入しているか
・事業主の所在地、事業所名等を正確に記入しているか
・事業主印を、押印忘れしていないか
・被保険者本人の住所、氏名等を正確に記入しているか
・被保険者本人印を、押印忘れしていないか

5-5.雇用保険の手続き(一部)

雇用保険の「育児休業給付支給申請(書)」は、最終単位期間まで申請を行っていることと思います。最終単位まで至っている場合、職場復帰の際に特別な手続きは必要ありません。当初の予定よりも職場復帰が早まった場合には、最終の「育児休業給付の申請」に記載する「職場復帰の年月日」に正しい日付を記入して申請するだけで構いません。

まとめ

従業員の出産に伴い、会社が行う社会保険と雇用保険の手続きは以上です。出産〜職場復帰に伴う手続きは、妊娠の報告を受けてから1年、もしく2年という長いスパンで行います。妊娠の報告を受けたら、どのタイミングで、どの書類を、どの機関に提出するのか正しく把握しましょう。

なお、出産、育児関連の手続きは女性の職場復帰推進などのために、給付や手続き内容の変更が頻繁にあります。手続きを行う際は最新の情報を確認してから行いましょう。