[確定拠出年金]「事業所登録申請書 兼 第2号加入者に係る事業主の証明書」記入時の注意点<2017年版>
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
確定拠出年金は、高い節税効果を享受しながら老後の資産を形成できる優れた制度です。この制度の利点を把握した、情報感度の高い従業員が、個人的に確定拠出年金に加入したいと考えた場合、会社側も無関係でいることはできません。
今回は、個人型確定拠出年金を始めようとしている従業員から「事業所登録申請書 兼 第2号加入者に係る事業主の証明書」という書類の記入を求められたケースを想定し、この書類の提出の意味、記入時の注意点について解説します。
確定拠出年金・個人型(iDeCo)について
確定拠出年金とは、公的年金だけでは老後の生活保障として充分ではない昨今、自分自身や所属する企業が掛金を拠出し、老後の資産を形成することができる制度です。これには個人型と企業型とがあり、会社が組織全体として導入し、その社員全員を加入対象にしているケースを確定拠出年金・企業型(又は、企業型確定拠出年金)といいます。企業型の場合は基本的に、掛金の拠出は企業が行います。
この制度を導入していない会社に勤める方や自営業の方、さらには専業主婦は、確定拠出年金・個人型(又は、「個人型確定拠出年金」もしくは「iDeCo」)に加入することが可能です。どのタイプに加入しているかによって、拠出できる金額の上限が異なっていますが、公的年金に上乗せして将来の年金受給額を増やしたり、退職金のような一時金として受け取ったりすることができます。
こちらもご参考ください:『 [ iDeCo | 個人型確定拠出年金 ] 年収400万円・30歳が加入して何がどう嬉しいの? 』
「事業所登録申請書 兼 第2号加入者に係る事業主の証明書」とは
確定拠出年金・企業型を導入していない企業の会社員の方が、確定拠出年金・個人型に加入しようとする際、必要な添付書類の1つとして「事業所登録申請書 兼 第2号加入者に係る事業主の証明書」があります。
証明書の書式は、従業員が利用しようとしている受付金融機関が用意しています。受付金融機関で、国民年金基金連合会に対して、加入者が勤めている会社の情報と、その会社が他にも年金制度を導入しているかどうかを確認してもらうためにに必ず提出します。記入は、社内の管理担当者(いない場合は、経営者)が行います。
この書類は、掛金の上限額が合っているかを確認するという意味も持っています。前述のように確定拠出年金制度には拠出金に限度額の上限があるため、自営業者、勤務先に年金制度のない厚生年金被保険者、企業型確定拠出年金制度を導入している会社の厚生年金被保険者、他の制度を導入している会社の厚生年金被保険者や公務員など、それぞれに応じてこの上限額が異なるからです。
自社で年金制度を導入していない中小企業等で、従業員が個人的に確定拠出年金制度に加入したいと自ら願う場合、どの立場で加入するのかを明確にしておくためにこの用紙を提出する必要があります。
記入の注意点
「事業所登録申請書 兼 第2号加入者に係る事業主の証明書」の提出について、会社側に注意すべき点があります。それは、書類の作成が会社の義務であるということです。たとえば確定拠出年金法第78条第1項では、「事業主は加入者に対し必要な協力をしなければならない」と定められています。ですから、従業員から書類の記入をお願いされた場合、会社は拒否したり後回しにしたりしてはなりません。
「事業所登録申請書 兼 第2号加入者に係る事業主の証明書」の記入例
※クリックして拡大します。引用元:大和証券(※2017年3月30日現在、リンク先のページがリニューアルしたためリンクが消滅)
記入が必要な箇所(ポイントとなる点についてはカッコ書きしています)
- 基礎年金番号
- 氏名
- 拠出金の納付方法について、給与天引きまたは本人の口座からの引き落としの選択
- 拠出金額
- 事業所の所在地と名称、電話番号など
- これまでの事業所登録の有無について(これまでにこの書類を書いたことがなければ、「わからない」にチェックで大丈夫です)
- 60歳未満であること、企業型確定拠出年金制度やその他の年金制度がないことの確認
- 拠出金の納付方法について(手続きの簡素化を望むなら、「(2)申込者が希望しているため個人払込とする」にしてください)
- 他に従業員のために加入している退職金制度などがあれば記入
「事業所登録申請書 兼 第2号加入者に係る事業主の証明書」が必要となる場面
この書類が必要になる場面は大きく3つです;
- 1つ目は、すでに雇用している従業員が初めて確定拠出年金・個人型に加入したいと希望した場合です。
- 2つ目は、その従業員が会社に雇用される前にフリーランスで、国民年金の第一号被保険者として確定拠出年金・個人型に加入していた場合です。この場合、当該従業員は国民年金の被保険者の種別が第一号被保険者から会社員である第二号被保険者に変更することになります。これに伴い、確定拠出年金制度に対しても「加入者被保険者種別変更届」及び「事業所登録申請書 兼 第2 号加入者に係る事業主の証明書」を速やかに提出しなければなりません。この提出がない場合、それまで継続していた掛金の引き落としが停止されてしまいます。
- 3つ目は、自社で雇用する前に別の会社に勤務しており、そちらでも個人型年金の加入者であったというものです。この場合は国民年金の被保険者の種別は第二号被保険者のままです。種別変更は必要ない代わりに、「加入者登録事業所変更届」及び「事業所登録申請書 兼 第2 号加入者に係る事業主の証明書」を提出する必要があります。
登録事業者となった場合、提出が必要な書類
従業員が確定拠出年金・個人型に加入した場合、その会社は登録事業者となります。様々なタイミングで提出しなければならない書類がいくつかあります。それを以下にまとめました。
- 事業所の名称変更や住所変更があった場合:受付金融機関に対して「登録事業所名称所在地等変更届」を提出し、変更内容を通知します。
- 従業員の掛金の変更があった場合:受付金融機関に対して「加入者掛金額変更届」を提出し、掛金の変更を通知します。もし掛金を事業主払い込みの方法で納付することになっている場合は、この金額変更について会社も把握しておかなければなりません。給与から天引きされる金額が変更されることになりますので、社内で適切に報告されるよう管理してください。
- 従業員が退職した場合:2017年1月から施行される法改正により、退職後の方向がどのようなものであっても、種別や事業所が変更されるだけで、引き続き個人型年金の加入対象者となります。年金の持ち運びが可能になり、より自由度が増しました。企業に雇用されている従業員は、国民年金の種別は第二号被保険者となっています。退職してフリーランスになる場合には第一号被保険者に、専業主婦になる場合には第三号被保険者になるので、「加入者被保険者種別変更届」を提出する必要があります。転職先が企業あるいは公務員である場合には第二号被保険者のままで、「加入者登録事業所変更届」で事業所の変更のみをすることになります。
まとめ
2017年1月から確定拠出年金・個人型は大幅な法改正により、対象範囲が拡大します。
どのようなタイプの被保険者であるかにより、拠出できる金額(掛金)の上限が決められていることに注意が必要です。加入者のタイプを把握して適正な運用するために必要な添付書類が準備されており、今回取り上げた「事業所登録申請書 兼 第2 号加入者に係る事業主の証明書」もそのような書類の1つです。この記入を煩雑だと思う担当者もいらっしゃるかもしれませんが、確定拠出年金制度は従業員の方一人一人が将来の老後の資金を確保するために有効な制度です。会社にとって金銭的な負担はなく、従業員が自ら拠出金を負担し運用していく制度になっています。非常に注目されており、今後利用者が増えていくことが見込まれていますので、その手続きに通じておき、会社の協力義務を十分に果たしていただきたいと思います。
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