採用を決定した内定後の必要書類
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
さて、採用も内定者が決定してくるといよいよ最終段階に入りますが、最後には必要な手続きが控えています。実際に内定を出した応募者に必要な書類を出してもらうことになりますが、どんな書類が必要なのか、どんなルールなのかをご説明していきましょう。採用活動を始める前に確認して、いざ内定者が決まった時に必要な手続きを滞りなく行えるようにしていきましょう。
入社誓約書と内定後の提出書類
内定が決定すると内定者には入社手続きの際に入社誓約書を提出してもらう会社が多いです。その誓約してもらう内容は一般的には以下の通りです。
- 入社後に規律を守ること
- 会社の機密事項の漏えいを防ぐこと
- 会社に損害を与えた際の責任を負うこと
入社誓約書は内定時に会社に入社することを確約してももらう内定承諾書(入社承諾書等)とはまた別の書類であり、入社後にあたっての誓約をしてもらう書類になります。入社してからの不祥事を防ぐ効力もありますので、入社日までには必ず提出してもらうと良いですね。
また、内定者に提出してもらう書類としては以下の内容が一般的です。
<必ず必要なもの>
- 労働契約書(採用通知書)
- 雇用保険の被保険者証
- 年金手帳
- 前職の源泉徴収票
- 健康保険扶養者異動届(扶養者がいる場合)
- 扶養控除等申告書
- 給与口座の振込先
- 交通費支給申請書
- 健康診断書
<会社により必要な書類>
- 入社誓約書
- 身元保証書
- 住民票記載事項証明書
- 免許や資格関連の証明
- 卒業証明書
入社誓約書や身元保証書などは提出をしてもらうかどうかは会社よって異なります。しかし、入社した社員により被害を受ける事態を防ぐために提出をしてもらう会社は多いです。次項では導入している会社が多い入社誓約書と身元保証書のルールについてご説明していきましょう。
入社誓約書と身元保証書のルール
入社誓約書のフォーマットは会社にもよりますが、一般的に記入を必要としている事項は以下の通りです。これは一例であり、会社によってフォーマットは異なります。
<入社誓約書の必要事項>
- 記入日付
- 会社名
- 代表取締役名
- 内定者の住所
- 会社の規則を遵守する旨
- 採用の際に提出した書類と相違する事実が判明したら採用を取り消されても承諾すること
- 業務上知り得た機密事項は漏えいしないこと
- 故意または重大な過失を与えた場合はその損害について賠償責任を負うこと(※)
(※具体的な賠償金額を記載することは労働基準法で禁止されているので注意)
入社誓約書は内定時に送付してすぐに送り返してもらうか、遅くとも入社日当日には記載して提出してもらうようにしましょう。入社誓約書は導入している会社がほとんどですが、身元保証書は会社によって導入しているところとしていないところがあります。導入する際の目的は以下の通りです。
<身元保証書を導入する目的>
- 社員が会社に損害を与えた場合に賠償請求をするため
- 社員と連絡が取れなくなった時に連帯して責任を取る人物を特定するため
- 社員が身元保証人に迷惑をかけないように、不祥事を防止するため
<身元保証書に必要な事項>
- 会社名
- 代表者名
- 社員の氏名、生年月日
- 上記社員が就業規則等を守ることを保証する旨
- 会社に損害を与えた場合は連帯して損害を賠償する旨
- 身元保証の有効期間
- 連帯保証人の記入日付
- 連帯保証人の氏名、住所、電話番号、生年月日
- 社員との関係
- 連帯保証人の署名・押印
<身元保証書を提出してもらう際の注意点>
- 有効期間を設ける
- 必要に応じて保証人の数を複数名に設定する
- 身元保証人は親でもよいのか、親族の可否について基準を定めておく
身元保証の有効期間は最大で5年間とされています。自動更新はできないので、更新をする際には改めて提出してもらう必要があります。身元保証人の人数は会社によって異なり、中には親族以外の保証人を求める場合もあります。また、保証人になるための収入や資産に一定の基準を必要とする場合もあります。その設定内容は会社の状況によって異なり、特に金融関連の会社では厳しく設定する傾向にあります。保証人が探せない場合は保証人の代行会社を利用するケースもあります。
参考に身元保証書の提出に応じなかった社員を解雇した判例をご紹介します。当事者の履歴や提出状況などの諸事情にもよりますが、入社時の書類提出と解雇が絡んだ貴重な事例です。
1996年12月16日 シティズ事件
入社した社員に身元保証書の提出を求めていたが、提出に応じなかったために解雇した事件。
解雇された社員は解雇予告手当を求めていたが、裁判所は身元保証書の提出をしなかったことが「労働者の責に帰すべき事由」に当たるとし、解雇予告手当の支払いは不要とした。この事例では身元保証書の提出を採用の条件としていたこと、以前の職場では身元保証書を提出していたことから「労働者の責に帰すべき事由」に当たる解雇であるとの判決が下されました。
試用期間の適切な運用をする
多くの会社では入社する社員に試用期間を設けていることと思いますが、試用期間を終了してすぐに社員を解雇することはできるのでしょうか。実際には解雇をする際には以下の手続きが必要になります。
- 30日以上の解雇予告手当を払う
- 30日以上前に解雇予告を行う
試用期間中であってもいずれかの解雇の正式な手続きが必要になり、尚且つ解雇をするためには客観的・合理的な理由が必要になります。解雇の際の詳しい手続きについては以下を参考にしてください。
上記リンク先でも明記されていますが、試用期間中の場合でも14日を超えて使用された場合は解雇の手続きが必要になります。使用して14日以内の場合には上記手続きは不要になりますが、解雇であるからには客観的、合理的な理由が必要になることは覚えておきましょう。
試用期間を設けても解雇を実際するためにはそれなりの理由と解雇予告の手続きが必要となるということになります。以上を踏まえた上で試用期間を設定すると良いでしょう。
まとめ
内定者を出した場合には入社手続きに必要な様々な書類を提出してもらわなければなりません。必要な書類を採用担当者がきちんと把握しておきましょう。中でも入社誓約書、身元保証書は会社によって提出してもらうかどうかは自由ですが、大変重要な書類なのでルールを正しく把握しておきましょう。目的は以下の通りになります。
<入社誓約書の目的>→入社後に会社に損害を与えないことなどを誓約させる
<身元保証書の目的>→会社に損害を与えた際に連帯して責任を取る保証人を明確にする
また、試用期間を終了して社員を辞めさせたいと思った場合にも以下の内容が必要になります。
- 30日以上の解雇予告手当の支払い又は30日以上前の解雇予告
- 解雇するための客観的・合理的な理由
試用期間中の解雇であっても14日以上使用していれば以上の手続きが必要になりますので覚えておきましょう。
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