社員教育すると助成金がもらえる?社員教育と助成金の基礎知識
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
多くの大企業ではしっかり計画を立て社員教育・研修を実施しています。ですが中小企業では、教育や研修が必要であると分っていても、実践している企業は少ないと言わざるを得ません。中小企業にとって採用した人材を即戦力として活かしていくことは重要な経営課題ですが、大企業と違って教育するための費用や時間に余裕がないこともあり、綿密に計画を立てて実行するということが難しいのが現実です。
そのために新入社員の早期離職や従業員が育たないという問題を抱えている企業も多いのではないでしょうか?今回は、社員教育、研修の基本や計画の立て方などについて分かりやすく説明します。
社員教育とは?
社員教育を一言で表すと「従業員の会社理解を深め、経営戦略を推進するために従業員が成長できる環境づくりをすること」です。やはりある程度の規模になってくると会社を支えるのは従業員であり、業績を伸ばし経営戦略を推進するためには個人の能力が大きく影響してきます。しかし即戦力となり自社に貢献してくれるような人材を採用することは、そう簡単に出来ることではありません。
社員教育を行うことによって会社の理念や方針を浸透させることが出来、教育内容よっては従業員一人ひとりの能力を高めていくことも出来ます。また従業員にとっても、社員教育は会社のことを考えて行動するための手立てでもあります。社員教育の目的を明確にし、制度化する事によって従業員の質を高め、その結果として生産性が向上し、会社の成長にも繋がっていきます。
社員教育の種類
一言に社員教育と言っても、やり方にはいくつかの種類があります。教え方の方法で分けると、実際の日常業務の中で教えるOJTと、職場を離れて集合形式で行うOFF−JTがあり、さらに階層別研修、職種別研修、テーマ別研修などに分かれます。
0JT(on-the-job training)
OJTとは「上司が部下に仕事を通して、仕事に必要な知識やスキル、技能を計画的に教えること」です。個別教育でなおかつ実務を通して教育するので、より早く業務を習得し、知識や技術を身につけることができます。また通常の職場内で日常的に行われていることですので、中小企業でも取り組みやすい方法といえるでしょう。ただし、指導する従業員によって教育レベルに差が出る場合もあるので、会社は指導する側の従業員に対しても指導者としての教育を行い、「どういう目的でいつまでに何を教えるか」などを明確にし、計画的に実施することが重要です。
OFF-JT
一方OFF-JTは、仕事を進めていく上で必要な知識やスキル、技能などを修得するために実務を離れて行う教育です。会社内での座学研修、会社以外での講習に参加するなどが一般的で、近年ではパソコンやスマートフォンなどの端末で受講するeラーニングなどの方法もあります。
OJTで会社の方針を理解して真剣に仕事に取り組んだとしても、従業員によって考え方や知識の差がでてくることは避けられません。実務を離れて、会社にあった教育プログラムを受講することで、OJTでは足りない部分をOFF-JTで補うことが出来ます。
さらにOFF-JTでは、下記のように受講者にあわせた内容の教育を行う事が出来るメリットもあります。
階層別研修
新入社員、中堅社員、管理職など特定の年齢層・役職等に必要とされる能力・知識などを習得させるために行います。階層別の教育は年度始めや昇進時期など節目に合わせて実施することが重要です。
職種別研修
営業、販売、人事、経理、技術開発、生産など職種ごとに必要とされる能力・知識は異なります。その職種にあわせた専門的な教育研修を行うことで、教育レベルの均一化がはかり、会社レベルを向上させることにつながります。
選択型研修
階層や職種などにかかわらず、語学、プレゼンテーション、リーダーシップ、ビジネススキル、人材育成など仕事をする上で必要だと思うテーマの研修に従業員自身が必要に応じて参加する方法です。
OFF-JTでは多種多様な教育を行う事が出来るメリットがある反面、実務を離れての教育となると、研修場所の確保や外部からの講師の依頼など、手間や費用がかかるといったデメリットもあるため、これから教育制度を作っていく場合には、OJTでの教育制度を確立してから取り組むことをお勧めします。
社員教育の計画の立て方
従業員を教育するという事は、経営戦略の一翼を担うものであり、会社にとって重要な課題の一つです。社員教育の計画を作成するにあたり、「長期的な視点で、自社に必要な教育を計画的に実行していくこと」そして「実際に教育を行った効果を検証し修正していくこと」が大切です。
具体的には下記のような流れで計画を作成します。
研修計画作成の流れ
1. 教育予算の確保
2. 教育計画の作成
3. 教育内容の決定
4. 年間スケジュールの決定
5. 告知
「教育計画の作成」をする際は、まず会社が求める人材を明確にし、従業員レベルの現状を把握することが必要です。そして、現状と求める人材との差を埋めるための教育内容を考えなければなりません。その際は会社の代表や役員だけでなく、実際に従業員を近くで見ている各部門の責任者も交えて教育計画を作成しましょう。特に初めて教育制度を導入しようとする場合は、今年度無理なく出来る範囲の内容をピックアップし計画を完成させましょう。
「教育内容の決定」の際には、教育の目的、対象者、方法(OJT、OFF-JT、社外研修への参加 )、プログラム、教育研修の効果測定の時期や測定方法など細かな内容まで確認をしておきましょう。また、年間スケジュールを作成する際は、新入社員研修など実施時期が決まっている研修を優先し、業務の繁忙期を避けて多くの従業員が参加できるようにしましょう。
実際に社員教育を行った後は、「どの程度効果があったのか」を調査する必要があります。方法としては従業員にアンケートを記入させる、筆記・実技テスト、本人と上司らによる評価表の提出、売上や離職率など教育実施のきっかけとなった数値を算出するなどがあります。
社員教育を「実施する前」「教育期間中」「終了後」「一定期間ごと」などこまめな教育効果の調査を行うことで、次年度以降さらに具体的な目標を設けることができ、より良い教育計画の作成へとつながります。
社員教育をすると助成金がもらえる
社員教育を行うには、やはりそれなりの費用がかかります。あまり知られていないかもしれませんが、
会社が従業員のために社員教育を行うと、助成金がもらえる場合があります。さらに中小企業でなければ申請出来ない内容のものも多くありますので、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか?
キャリア形成促進助成金
職務に関連する専門的な知識や技能の習得をさせるための教育訓練行った場合に、その経費や賃金の一部を助成する制度です。様々な階層、職種で利用できる助成金の一つです。
(詳細はこちら)
キャリアアップ助成金
社員教育(OJT、OFF-JT)を行った場合や、契約社員に社員教育を行った上で正社員に転換した場合などに経費や賃金の助成として最大50万円支給されます。この助成金は賃金アップなど会社の処遇改善を行った場合やパート従業員、派遣社員を自社の正社員として採用した場合にも利用でき、その場合は最大60万円支給されます。
(詳細はこちら)
上記以外の制度についてはこちらをご覧ください。
まとめ
社員教育は会社をより良くしていくために欠かせない従業員の、気づき、やる気、ひらめきを創造する環境を作ることが出来ます。手間や費用がかかるため、大企業のように様々な教育・研修を行うことは難しいかもしれませんが、OJTのように日常的に行える教育や助成金を利用して、まずは始めてみることが大切です。
しかしずっとOJTを行うだけで結果が得られるものでもなく、不十分な部分をOFF-JTで補う必要があります。そして社員教育の効果の調査と計画の改善を繰り返し、長期的に社員一人ひとりの人間力や仕事力を伸ばすことは、業績向上だけでなく会社の成長にも繋がります。
この機会に、教育制度の導入・見直しを行ってみてはいかがでしょうか。
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