[社会保険の基礎知識]健康保険と厚生年金保険とは
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
「社会保険」は一般的に健康保険と厚生年金保険のことを指します。(かつてはこの2つに労働保険を合わせたものを社会保険と呼んでいたこともありますが、いまでは医療保険や傷病手当の役割を担う健康保険と、年金保険を担う厚生年金保険の2つを指す場合がほとんどです。)
ここでは、健康保険と厚生年金保険について、説明します。
社会保険とは
健康保険
一般的な企業の従業員やその被扶養者が受けた医療行為、出産、死亡に対しての給付、傷病手当などを支給する制度が、健康保険制度です。一般的に「公的医療保険」と呼ばれることもあります。新規適用の手続きは、事業所を管轄する日本年金機構の事務所で行います。中小企業の場合「協会けんぽ」に加入するのが通常です。
厚生年金保険
一般的企業の従業員が加入する公的年金制度です。厚生年金保険料には、国民年金保険料が含まれており、厚生年金保険に加入するだけで、国民年金保険にも加入する状態となります。健康保険と同じく、事業所を管轄する年金事務所で事務手続きします。
社会保険の加入(適用)義務
社会保険の適用を受ける事業所を適用事業所といいます。法律で加入が義務付けられている「強制適用事業所」と、任意加入の「任意適用事業所」があります。株式会社は、強制適用事業となりますので、加入義務があります。
強制適用事業
- 法人(個人事業主で無い)の場合(従業員数は問わない)
- 個人事業主で、所常時5人以上の従業員が働いている場合で、非強制適用業種(農林漁業、サービス業)で無い場合
【主な非強制適用事業態】
農業、牧畜業、林業、水産養殖業・漁業、ホテル・旅館、料理飲食店、理容理髪、浴場、洗濯、映画演劇、ダンスホール、競馬競輪、ボウリング、野球場、保養施設、弁護士、会計士、税理士、社会保険労務士、神社、寺院、教会等
社会保険の被保険者(加入する必要がある従業員)とは
「適用事業所」で常時働く従業員は、被保険者となることが原則となります。非常勤の顧問、監査役などの「雇用関係」が無い人や、個人事業主は被保険者にはなれません。アルバイト・パート、契約社員、派遣社員など非正規雇用の場合、所定労働時間と所定労働日数が、どちらも通常の労働者(正社員)の約4分の3以上である場合は被保険者となります。
例外として、被保険者とならない人は、
①船員保険に加入している人
②国民健康保険組合に加入している人
③日々雇い入れられる人
④2ヵ月以内の期間を定めて雇われる人
⑤季節的業務に4ヵ月以内の期間雇われる人
⑥臨時的事業に6ヵ月以内の期間雇われる人の場合です。
被扶養者にできる範囲とは
詳しくは→ Gozal Basics『配偶者等が被扶養者になる場合の変更手続き』、『「税法上の扶養家族」と「健康保険の扶養家族」の違い』をご覧ください。
会社で届出が必要な手続き
(1)従業員の雇用時
管轄の年金事務所に 「被保険者資格取得届」を提出します。受理されると、事業所に「被保険者標準報酬決定通知書」と「健康保険被保険者証」が送付されてきます。
(2)従業員が退職した時(被保険者でなくなった時)
退職し、被保険者で無くなった場合、年金事務所に 「被保険者資格喪失届」を提出し、「健康保険被保険者証」を返却します。資格喪失日は退職日の翌日で設定します。
(3)そのほかの、主な届出・手続き
主な届出・手続きは、以下の通りです
- 氏名を変更した場合 →「被保険者氏名変更届」
- 住所を変更した場合 →「被保険者住所変更届」 (主に年金の記録を正確に把握するために行政側は活用します。)
- 被扶養者に異動(変更)があった場合 →「被扶養者異動届」
- 賞与を支払った場合 →「賞与支払届」
- 会社が引越した場合 →「適用事業所(所在地・名称)変更届」
- 代表者が引越した場合など →「事業所関係変更届」
社会保険料の算定と「標準報酬月額」
社会保険料の算定は、毎月の報酬を区切りのよい幅で区分した「標準報酬月額」をつかって行います。
標準報酬月額は第1級の5万8千円から第50級の139万円までの全50等級に区分されています。都道府県ごとに異なるので詳しい標準報酬月額は協会けんぽで参照してください。
さらに詳しい説明は、Gozal Basics『標準報酬月額の意味と決定方法』をご覧ください。
社会保険料の納付
社会保険料は、毎月の保険料を、翌月末までに納付する必要があります。支払い日基準で考えれば、前月分の給与で控除した保険料を、前月の事業主負担分と併せて、翌月末までに納付します。納付は、銀行引き落としで行うと便利です。引き落としの用紙は、新規適用届を出した際に渡されると思いますが、紛失した方は年金事務所のWebサイトからもダウンロードできます。 なお、保険料は、被保険者資格を取得した月から、資格を喪失した月の前月分まで、月単位で納めます。月単位で計算するので、入社した日が1日でも、31日でも、丸々1ヵ月分を徴収します。資格を喪失した日というのは退職日の翌日なので、月末に退職した場合は、退職月の保険料も徴収する必要があります。注意しましょう。
介護保険、子ども・子育て拠出金
介護保険とは40歳以上から65歳未満の被保険者が加入する保険で、保険料は事業主と被保険者折半して負担します。
子ども・子育て拠出金とは厚生年金保険と一緒に、事業主(会社)が年金事務所に納めるお金(拠出金)です。「児童手当拠出金」とかつて呼ばれていた制度が、平成27年4月より「子ども・子育て拠出金」として再スタートしたものです。厚生年金保険とは異なり、従業員本人負担はありません。事業所の100%負担(従業員の給与から天引き無し)となります。
→ Gozal Basics『40歳からの介護保険入門 [2017年版]』『子ども・子育て拠出金(旧:児童手当拠出金)とは』をご覧ください。
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