[2017年(平成29年)10月対応版] 育児介護休業法の改正で中小企業が注意するポイント

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

会社を出て、保育園に預けた子供を迎えに行った母。

2017年1月から「育児・介護休業法」が改正されるのはご存知ですか?育児関連の法律は改正が多いので、いつどんな内容が変わったのか、最新情報を見逃してしまう企業も多いのではないでしょうか。ここでは2017年の1月から改正される内容についての最新情報をご紹介していきます。

【参考情報】

「育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)」とは

「育児・介護休業法」と略して呼ばれるこの法律はご存知でしょうか。これは子を養育するため、または対象家族を介護するために一定期間の休業を労働者に与える場合について定めた法律です。休業の期間や給付される日数などが制定されているイメージがありますが、子の看護休暇や残業・深夜業の取り扱いなど総合的な措置について定められています。

2012年(平成24年)の変更ポイント

元々は2009年(平成21年)に育児・介護休業法が改正されましたが、従業員が100人以下の事業主については適用が猶予されていた部分がありました。それが2012年(平成24年)7月1日より改正された育児・介護休業法が全面施行されることになりました。これまで改正の対象外だった従業員100名以下の事業主についても以下の内容について変更が実施されることになったのです。

2012年の改正ポイントは以下の3点(短時間勤務制度、所定外労働時間の制限、介護休暇)です

短時間勤務制度

事業主は、3歳に満たない子を養育する従業員について、従業員が希望すれば利用できる短時間勤務制度を設けなければなりません。

対象となる従業員(男女とも)

  • 3歳未満の子を養育する従業員であって、短時間勤務をする期間に育児休業をしていない
  • 日雇い労働者ではない
  • 1日の所定労働時間が6時間以内でない
  • 労使協定により適用除外とされた従業員でない

雇用期間が1年に満たない、労働が週2日以下、業務の性質上短時間勤務が困難、などの要件を満たす場合に労使協定で適用除外にすることができます。しかし、その場合代替措置を設ける必要が出てくる場合もあります。

所定外労働時間の制限

3歳に満たない子を養育する従業員が申し出た場合には、事業主は、所定労働時間を超えて労働させてはなりません。

対象となる従業員(男女)

  • 原則として3歳に満たないを養育するすべての男女従業員(日雇い労働者を除く)

勤続年数が1年未満の従業員と、週の所定労働日数が2日以下の従業員は、労使協定で対象外とする事も可能です。

介護休暇

介護が必要である家族の介護やその他の世話をする従業員は、事業主に申し出ることにより、対象家族が1人であれば年に5日まで、2人以上であれば年に10日まで、1日単位で休暇を有給休暇とは別に取得することができます。

対象となる従業員(男女)

  • 対象家族の介護、その他の世話をするすべての男女従業員(日雇い労働者を除く)

勤続年数が6カ月未満の従業員と週の所定労働日数が2日以下の従業員については、労使協定で対象外とする事も可能です。

詳細は「[PDF]厚生労働省 都道府県労働局 雇用均等室」を参照してください。

2017年(平成29年)1月の変更ポイント

それでは2017年1月からの変更ポイントを紹介していきます。

介護休業の分割取得

  • 旧内容: 介護休業期間は対象家族一人につき通算93日まで、原則1回
  • 2017年1月の改正内容: 対象家族に付き通算93日目で、3回を上限として、介護休業を分割して取得可能

介護休業の取得単位を柔軟化

  • 旧内容: 介護休暇について1日単位で取得
  • 2017年1月の改正内容: 半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得が可能

介護のための所定外労働の制限(残業の免除)

  • 旧内容: なし
  • 2017年1月の改正内容: 対象家族一人につき、介護終了まで所定外労働の制限を利用できる

有期契約労働者の育児休業の取得要件の緩和

  • 旧内容: 子が1歳になった後も継続して雇用の見込みがあること
  • 2017年1月の改正内容: 子が1歳6か月になるまでの間に雇用契約がなくなることが明らかでないこと

子の看護休暇の取得単位の柔軟化

  • 旧内容: 子の看護休暇について1日単位で取得
  • 2017年1月の改正内容: 半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得が可能

育児休業等の対象となる子の範囲

  • 旧内容: 法律上の親子関係がある実子・養子
  • 2017年1月の改正内容: 特別養子縁組での監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子等も対象

いわゆるマタハラ・パタハラなどの防止措置の新設

マタハラとは、女性の妊娠・出産・育児に関する嫌がらせをすることを示すマタニティハラスメントのことです。

パタハラとは男性の育児休業の取得や、短時間勤務の申し出に対して嫌がらせをすることを示すパタニティハラスメントのことです。

  • 旧内容: 事業主による妊娠、出産、育児休業、介護休業等を理由とする不利益取り扱い禁止
  • 2017年1月の改正内容:
    • 上司、同僚からの妊娠、出産、育児休業、介護休業を理由とする嫌がらせ等を防止する措置を講じることを事業主に新たに義務付け
    • 派遣労働者の派遣先にも、育児休業等の取得等を理由とする不利益取り扱いの禁止
    • 派遣労働者の派遣先にも、妊娠、出産、育児休業、介護休業等を理由とする嫌がらせ等の防止措置の義務

2017年1月からの改正についての詳細は「[PDF]厚生労働省 都道府県労働局 雇用均等室」の内容を確認してみて下さい。

2017年(平成29年)10月の変更ポイント

続いて、2017年10月からの変更ポイントを紹介していきます。

最長2歳まで育児休業の再延長が可能になります

  • 旧内容: 育休の延長は1歳6ヶ月まで。育児休業給付金の給付期限も最長1歳6ヶ月まで。
  • 2017年1月の改正内容: 1歳6ヶ月以後も、保育園に入れないなどの場合には、会社に申し出ることにより、育児休業期間を最長2歳まで再延長可能に。育児休業給付金の給付期限も2歳までとなります。

子どもが生まれる予定の方などに育児休業等の制度などをお知らせする努力義務ができます

  • 事業主は、働く方やその配偶者が妊娠・出産したこと等を知った場合に、その方に個別に育児休業等に関する制度(育児休業中・休業後の待遇や労働条件など)を知らせる努力義務が創設されます。

育児目的休暇の導入を促進

  • 未就学児を育てながら働く方が子育てしやすいよう、育児に関する目的で利用できる休暇制度を設ける努力義務が創設されます。例として、配偶者出産休暇、ファミリーフレンドリー休暇、子の行事参加のための休暇などが挙げられます。

就業規則を定めている場合の注意点

就業規則を定めている会社は改正した内容に合わせて就業規則の内容を変更しなければなりません。また、新たに追加された変更内容に関しては追加項目を設けなければなりませんね。

就業規則は従業員が10名以上いる会社には作成の義務と、従業員に周知させる義務があります。従業員がいつでもその内容を閲覧できる環境を整えなければならないのです。いつ従業員の目に触れても良いように法律改正に合わせて就業規則の内容を変更しておきましょう。

[PDF]厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)」で育児・介護休業等に関する規則の規定例が紹介されていますので、ぜひ参考にしてみて下さい。

就業規則がない会社の注意点

就業規則がない会社でも、下記に対応する必要があります

  • 子の看護や介護休暇の場合に半日単位で休暇を取れるように勤務管理体制を整える
  • 介護休暇の取得日数や所定労働時間の短縮措置、残業の免除についての正しい知識を管理者が把握しておく
  • 妊娠、出産、育児休業、介護休業の取得により嫌がらせを受ける社員が出ないように事業主が防止措置を講じる

また、就業規則があった方が従業員への規律を示す良い指標にもなりますの、この機会に就業規則の作成を検討してみるのも良いかもしれません。

まとめ

2017年1月からの改正育児・介護休業法のポイント

  • 介護休業についての分割取得、取得単位の柔軟化
  • 介護のための労働時間の短縮、残業免除
  • 育児休業の取得要件や対象となる子の要件の緩和
  • 子の看護休暇の取得単位の柔軟化
  • マタハラ・パタハラに対する防止措置の義務付け

2017年10月からの改正育児・介護休業法のポイント

  • 最長2歳まで育児休暇の再延長が可能
  • 子どもが生まれる予定の方などに育児休業等の制度などをお知らせ
  • 育児目的休暇の導入を促進

育児介護休業法は頻繁に改正されています。どの改正も、労働者が快適に育児や介護に取り組める環境を得ることを意図して改正されています。最新の法改正内容を正しく把握し、必要な策を講じることで事業主として社員の育児や介護に関する理解を深め、従業員が働きやすい環境を整えるようにしましょう。

最新の育児介護休業法については以下をご覧ください。項目ごとの内容を閲覧できます。

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【参考情報】