従業員の給料を上げるなら所得拡大促進税制で法人税の節税もしよう!
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
雇用の促進を図る制度として、所得拡大促進税制という制度があります。この制度はわかりやすく説明すると従業員の給料を上げると法人税が安くなるという制度です。従業員の給与を上げようと考えている場合はこの制度を使って法人税を節約することができるので従業員にも経営者にも有利になります。この制度は中小企業でも手続きすることができるので、しくみ、要件、具体的な手続きについて、ぜひ確認してみてください。
所得拡大促進税制とは
所得拡大促進税制とは、従業員の給与を増加させた場合に、法人税の特別控除を受けられる制度です。法人税がどれくらい控除されるかは、給与をいくら増加させたかによって異なります。法人税の控除限度額は、雇用者給与等支給増加額の10%相当になります。雇用者給与等支給増加額とは、雇用者給与等支給額から基準雇用者給与等支給額(※1)を控除した金額をいいます。ただし、法人税の控除限度額がその事業年度の法人税の10%(中小企業者等については20%)相当を超える場合には、その相当額が限度となります。また、平成29年の税制改正により、当期の1人当たりの平均給与の金額から前期の1人当たりの平均給与の金額を差し引きした金額が前期の1人当たりの平均給与に対して2%を上回る場合は、さらに現行の10%相当額に加えて12%の税額控除が追加して受けられる(結果として22%の税額控除)ようになります。中小企業者が2%賃上げした場合、法人税の特別控除額が増加することになります。
(※1)基準雇用者給与等支給額とは、平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち最も古い事業年度の前事業年度の雇用者給与等支給額をいいます。すなわち、平成25年4月1日より前に事業を行っている法人の場合には、平成24年度(個人事業主の場合は、平成25年)の雇用者給与等支給額が基準雇用者給与等支給額となります。
所得拡大促進税制の要件
所得拡大促進税制を利用するには3つの要件を満たす必要があります。
① 雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が増加促進割合以上になっていること
② 雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額(前事業年度)以上であること
③ 平均給与等支給額が比較平均給与等支給額(前事業年度)を超えること
適用年度、事業年度、前事業年度とは
より詳しい条件は国税庁のHPに載っていますが、そこの所得拡大促進税制の要件に出てくる事業年度に対する用語の意味を確認しておきましょう。要件には、適用年度、基準事業年度、前事業年度の3つの用語が出てきます。
- 適用年度とは、所得拡大促進税制の採用を検討している事業年度
- 基準事業年度とは、平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち最も古い事業年度開始の日の前日を含む事業年度
- 前事業年度とは、事業年度の前年度
例えば、平成27年4月1日から平成28年3月31日に所得拡大促進税制を利用する場合、平成28年3月期が適用年度となります。また、平成27年3月期が前事業年度、平成26年3月期が基準事業年度になります。
平均給与等支給額の対象になる継続雇用者とは?
所得拡大促進税制の手続きをするときに平均給与等支給額の計算をしなければなりません。その平均給与等支給額の対象となるのは継続雇用者ですが、継続雇用者とはどのような条件に該当する人かを確認してみましょう。
よって、適用年度である当期と前期のいずれも給与等の支給がある国内雇用者は、全て、その支給をした会社の継続雇用者に該当します。逆にいうと、適用年度に入社した国内雇用者や前事業年度に退職した国内雇用者は含まれません。
また、継続雇用者は、適用年度と前事業年度の両方の事業年度において、それぞれ一度でも給与等の支給がある国内雇用者に該当していれば、平均給与等支給額の計算で除外していた日雇い労働の方や、パートやアルバイトなどの短期契約の方も含まれます。しかし、これらの者の賃金形態やその支給額などを考慮した場合、平均給与額を比較する趣旨には適さないので、一般被保険者(※1)に該当する者に支給したものに限定されています。
(※1)一般被保険者とは、雇用保険法で、①65歳に達した日以後に雇用される者、②1週間の所定労働時間が20時間未満の者および③同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者以外のものを被保険者と定義していて、高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者および日雇労働被保険者を除く被保険者を一般被保険者と規定しています
詳しい範囲についてはこちらを参考にしてください。
所得拡大促進税制の手続き
所得拡大促進税制を受けるには、「雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」別表六(19)を記入して、税務署に提出する必要があります。
例えば、株式会社Aが
- 雇用者給与支給額が5,000万円
- 基準雇用給与支給額が4,500万円
- 調整前法人税額が800万円
だった場合
基準雇用給与支給額が4,500万円の場合、調整前雇用者給与等支給増加額は5,000万円-4,500万円=500万円となります。税額控除限度額は500万円×1/10=50万円となります。
調整前法人税額が800万円だった場合、当期税額基準額800万円×10/100(中小企業は20/100)=80万円です。
当期税額控除可能額は50万円と80万円のいずれか少ない金額になるので50万円となります。
所得拡大促進税制の気になる疑問
役員も所得拡大促進税制の対象になるのか?
使用人兼務役員を含む役員や役員の特殊関係者は所得拡大促進税制の対象となる国内雇用者とはなりません。
パートやアルバイトも対象になる?
パートやアルバイトも国内雇用者なので対象になります。
新設法人でも所得拡大促進税制の税額控除の適用できるのか?
平成25年4月1日以後に設立された新設法人の場合は、基準事業年度が存在しませんが、設立事業年度の給与支給額の70%相当額が、基準事業年度の雇用者給与等支給額ということになります。したがって、給与等支給増加割合は30%となり、新設法人は確実に所得拡大促進税制の税額控除の適用を受けることができます。
まとめ
所得拡大促進税制は従業員の賃上げにより、雇用者側が法人税の特別控除受けられる制度ですが、要件を満たしている必要があります。また、法人税額が出る黒字企業でなければ、特別控除を受ける意味がないので、その点をよく確認して、制度の利用を検討してみてください。
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