労働基準法違反に注意!出勤簿の正しい保存方法とは
執筆: 田中靖子(たなかやすこ) | |
出勤簿とは?
出勤簿とは、「従業員の労働時間数を記録するもの」です。
多くの人が、「『出勤簿』という名前なのだから、出勤日を記録すればいいのだろう」と誤解しています。しかし、「何時から何時まで働いたのか」という労働時間数まできちんと記録しなければいけません。
タイムカードとの違いは?
一般的な会社では、タイムカードで記録することによって、出勤簿としています。しかし必ずしもタイムカードの記録が正しいわけではないので出勤簿に残業時間などを含めた正確な労働時間を記載します。
どうして出勤簿を保存しなければいけないのでしょうか?
労働基準法施行規則第54条では、従業員の出勤簿の保存を義務付けていますが、どうして出勤簿を保存する義務があるのでしょうか?
出勤簿は、従業員の残業や深夜労働の有無を把握したり、月ごとの給与を算出するために、欠かせない書類です。出勤簿が無ければ、欠勤の有無を調べることもできませんし、残業代の計算をすることもできません。
会社が従業員の労働スケジュールを把握し、適切な給与を支払うためには、出勤簿が重要な書類となるのです。
また、会社は労働者の健康を管理する義務を負っています。
会社が出勤簿を確認することによって、「Aさんは今週は残業が多すぎるのではないか」「Bさんに深夜残業がかたよっているから、来月からはCさんに担当を変えよう」など、従業員の健康を管理することができます。
会社が労働者の健康を把握するためにも、出勤簿が大切な資料となるのです。
いつまで保存しなければならないのか?
労働基準法第109条によると、出勤簿の保存期間は「3年間」です。
出勤簿の保管は会社の義務ですので、3年以内に廃棄処分してしまうと、法律違反となってしまいます。
注意すべき点は、「出勤簿を最後に記入した日から3年間」という点です。
「最後に出勤簿を記入した日」というのは、「最後に出勤した日」ということです。最後の出勤日から3年間は保存しなければなりません。
つまり、退職者や解雇者がいる場合でも、退職後すぐに出勤簿を廃棄することはできません。退職や解雇の日から3年間は、必ず出勤簿を保存しておきましょう。
(退職者の出勤簿に関しては退職金請求権の時効が5年間なので5年以上保存することをおすすめします。)
数多くの社員を抱える会社の場合は、3年分の出勤簿を保管するためには広いスペースが必要となります。
この点、平成8年6月27日基発第411号行政通達では、電子データによって出勤簿を保管することを認めています。つまり、出勤簿は紙媒体で保管する必要はありません。電子データで保管することによって、オフィスのスペースを節約することができます。
もちろん、電子データには改ざんや消去のリスクが伴いますので、会社に十分なスペースがある場合は、紙媒体の資料そのものを保存しておくことが望ましいでしょう。もしも残業代について裁判上で争いになった場合には、実際に刻印されているタイムカードがあれば、重要な証拠となります。
出勤簿を電子データで保存しておきたい場合は、セキュリティーが万全のサービスを利用し、改ざん性や消去のリスクを低くすることがポイントです。
出勤簿を保存しなかった場合の罰則
出勤簿は重要な書類ですので、適切に保存していなかった場合には罰則が課せられます。
出勤簿を適切に管理していなかった場合は、労働基準法第120条により、「30万円以下の罰金」に処せられます。
会社が労働法違反の罪を負うと、会社のイメージが損なわれるだけでなく、取引先からの信頼も大きく失墜してしまいます。顧客も離れてしまうかもしれません。万が一マスコミによって労働法違反が報道されてしまうと、会社の信用を取り戻すまでに長い時間がかかってしまいます。
出勤簿は、会社にとっても労働者にとっても重要な書類です。出勤簿のルールをきちんと確認したうえで、適切に保管しておきましょう。
罰則を受けないための管理方法
労働法違反の罰則を受けないためにも、ここで出勤簿のルールを確認しておきましょう。
出勤簿の内容としては、下記の事項を記載することが義務付けられています。
・労働日数
・労働を行った時間数
・時間外労働 を行った時間数
・休日労働 を行った時間数
・深夜労働(午後10時から午前5時までの労働)を行った時間数
出勤簿に「5月10日に6時間働いた」と記録するだけでは、不十分です。合計の労働時間数しか記録していない場合は、「通常労働なのか、時間外労働なのか、深夜労働なのか」が判断できないからです。
「5月10日に午前9時から午後3時まで働いた」というように、時刻まできちんと記録しておきましょう。上記の事項が入っていればいいのでエクセルなどで自作してもいいしょう。ネット上にテンプレートがたくさんありますので、それを活用するのも一つの手です。
出勤簿は出勤したことだけでなく、どれだけ働いたか労働時間も管理しなければなりません。なので、印鑑だけでは不十分です。
まとめ
出勤簿は、労働基準法で定められた重要な書類です。会社が従業員の給与を適切に計算し、従業員の健康を管理するためにも、出勤簿は欠かせない存在です。会社には3年間の保存義務がありますので、退職した人の出勤簿もきちんと保管しておきましょう。紙媒体で保管する必要はありませんので、電子データで保管することもできます。電子データで保管する場合は、信頼に値するサービスを利用しましょう。
出勤簿を適切に保存していなかった場合には、30万円以下の罰金の対象となります。会社が労働法違反の罰則を負うと、会社の信頼は失墜してしまいます。出勤簿の重要性を認識して、ルールを守ってきちんと保存しておきましょう。
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