試用期間が終わって「明日からこなくていいよ」は許される?知っておきたい従業員雇用時の試用期間の効力

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

従業員を雇用するときに、1〜2ヶ月の試用期間を設けている会社もあるかと思います。試用期間を設けることで、会社にとってはその方の実力・協調性を知るチャンスを獲得できます。また採用される側にとっても、会社での働きやすさを経験した上で検討できます。そのため相互に意味がある制度だと考えている方が多いでしょう。しかし法的な意味をきちんと理解していないと思わぬリスクを負うことになりますのでご注意ください。

従業員の試用期間を1ヶ月としている会社は要注意?

試用期間を1ヶ月にしている会社は、1ヶ月間候補者に働いてもらって、本当に戦力になるのかどうかを見極めるでしょう。結果的に「申し訳ないが、うちで働いもらうことはできない。また力を積んでから是非挑戦してほしい」ということを1ヶ月間の試用期間の最終出社日に伝えるかもしれません。

この場合、実は解雇に該当します。解雇ということになれば30日以上前に解雇予告を行う必要がありますが、行っていない場合は、平均賃金30日分以上の解雇予告手当を支払わなければなりません。

つまり試用期間を1ヶ月としている場合、30日以上前に解雇予告を行うことは事実上不可能なので、試用期間終了後に本採用を行わない場合には、原則として解雇予告手当てを支払うことが必要となるのです。

従業員の試用期間中は、解雇を自由にできるわけじゃない

試用期間だからスキルや協調性が足りない人は本採用しなければいいだけ、という考えは甘いといえます。客観的に合理的な理由がり、社会通念上相当と認められる場合(学歴詐称など)でない限り、試用期間といえど解雇できませんし、合理的な理由があった上で、30日以上前に解雇予告を行うか、解雇予告手当てを払うことが必要となります。

判例によると「試用期間は労働者の職務上の能力、人物を判断することを目的として設けられたものであるが、労働契約と別個の契約ではなく、試用の当初から労働契約が締結されているものであり(大同木材工業事件)」とされており、普通の解雇規定をそのまま適用する性質を持っていると考えられています。

従業員の試用期間を14日以内にすれば問題は解決する??

試用期間中の社員であっても、解雇手続きを行うには客観的かつ合理的な理由があり、それが社会通念上認められるものである必要があります。

ただし、労働基準法21条にあるとおり、解雇手続きを行う必要があるのは14日を超えて雇用されている場合なので、14日以内に解雇する場合には、解雇手続きを行う必要がなくなります。

しかし、この場合にも正当な解雇理由は必要なので、簡単に解雇できるわけではないのでご注意ください。

では従業員の試用期間はどのように設計すべきなのか?

まずは、試用期間だから簡単に解雇できるわけではないと知っておくことが重要です。その上で、労働法に強い弁護士か社会保険労務士と相談して、試用期間の最適な長さと、その中で本採用が難しい候補者が見つかった時に、どのように対応するべきかアドバイスを受けておくことが重要です。

本採用を一方的に拒絶するのではなく、指導・教育を行って改善を目指すことが原則だと考えましょう。それでも改善しないのであれば、その記録をとっておき、きちんと法律に基づいて、手続きを行うことも覚悟しましょう。