所得税と個人住民税(地方税)の違いについて

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

給与計算する際「所得税」と「地方税(個人住民税)」を考慮する必要があります。それぞれの違いを説明していきます。

所得税とは

所得税とは、国に収める税金です。国税庁が管理し、事業所を管轄する「税務所」で手続きします。通常は、当月に発生した賃金に対しての税金を、会社が源泉徴収し、翌月に税務所へ納付します。給与の支給者が常時10人未満である中小企業の場合は、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請を行うことで、源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税を、次のように年2回にまとめて納付できるという特例制度(『源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請』)を受けるために行う事が可能です。対象となる事業者は、申請を検討しましょう。

1月から6月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税・・・7月10日
・7月から12月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税・・・翌年1月20日

個人住民税とは

ただ単に「住民税」と呼ばれたり「地方税」と呼ばれる場合もあります。従業員の住民票所在地に対して納税する税金なので、所得税のように、納付先が一律(税務所)ではありません。例えば、東京都新宿区に住んでいる従業員の場合、個人住民税は「都民税(東京都民の納税義務)」と「区市町村民税額(新宿区民の納税義務)」の2つとなり、その2つを新宿区に一括して納付します。

所得税と異なり、個人住民税は、前年の収入に対して課税されます。会社は、毎年の年末調整を行い、各市町村に申告する必要があり、年末調整を行うことで、翌年の税額が決定され、5月になると、その年の6月から翌年5月までに納める税額が書かれた通知書『特別徴収税額通知書』が会社に届きます。特別徴収の手続きの義務化は、厳格化の方向にあります。特別税額通知書が届いたら、特別徴収手続きをするようにしましょう。従業員が自分で個人住民税を納付する事を、税務所では「普通徴収」と呼んでいます。普通徴収は、一括納付が可能なほか、年4回(第1期の納付期限が6月末、第2期が8月末、第3期が10月末、第4期が翌年の1月末)に分割して納付することも可能です。

所得税と個人住民税の計算方法の違い

所得税は、その年の所得を元に計算し、所得合計額によって税率が異なります。

課税される所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円を超え 330万円以下10%97,500円
330万円を超え 695万円以下20%427,500円
695万円を超え 900万円以下23%636,000円
900万円を超え 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円を超え4.000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%

https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm

一方、住民税は昨年の所得を元に計算したものを納付します。住民税は、「所得割」と「均等割」の2つの要素で構成されていて、市民税(所得割)が一律6%、都道府県民税(所得割)が一律4%の、合計10%を、昨年の所得合計にかけて計算されます。


1:所得割

昨年の1/1~12/31の所得合計を元に計算し、所得合計額によって税率が異なります。※所得税の計算方法とほぼ同じです。

2:均等割

すべての人に等しく一律でかかります。※所得が無い人や一定金額以内の収入の人などを除きます。

東京都民の場合

・都民税額(1,500円)+区市町村民税額(3,500円)
※平成26年度から平成35年度までの間、地方自治体の防災対策に充てるため、均等割額は都民税・区市町村民税それぞれ500円が加算されています。

所得税と個人住民税の「控除額」の違い

【基礎控除額、配偶者控除額、扶養控除額】 所得税38万円/住民税33万円
【障害者控除額】 所得税27万円/住民税26万円
【地震保険料控除額】 所得税:最高5万円/住民税:最高2万5,000円
【生命保険料控除額】 所得税:最高12万円/住民税:最高7万円

※生命保険の契約日が平成23年12月31日以前場合、原則として生命保険料控除額は、所得税においては最高10万円、住民税については最高7万円とする旧制度が適用されます

※その他、対象は同じでもその金額が異なる控除が多くあります。詳しくは、Gozal Basics「税法上の配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除の違い」を参考にして下さい。