主体性を伸ばす組織・仕組みづくりがユニーク!化粧品メーカー「メディプラス」躍進の秘密を探る【前編】
執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 | |
創業者自身の肌悩み解決がきっかけとなり、約40人の社員数にもかかわらず年商80億円・130万人を超える顧客の支持を得ているメディプラス。今回は、メディプラス社長室 室長・渡辺大介氏と、経理/人事マネージャー・井草陽子氏に、同社の躍進を支える組織づくりを伺ってきました。今回は前編をご紹介します! >後編はこちらから
組織づくりの基本的な考え方を教えてください。
常識にとらわれない組織づくりはメディプラスの特徴の一つだと思います。もともと恒吉(社長)自身、会社務めをしたことがないので、「普通の会社なら○○」といったセオリーをベースとしていません。恒吉自身がやるべきだと思ったことは、とことん突き詰めて実現させる。そういうバックグラウンドが少し、普通の会社務めの経験者からすると変わっているように感じられるかもしれませんね。
今より、もっと。もっとより、ずっと。という理念のもと、それを事業だけでなく、会社作りの哲学としても反映しています。仲間としてもっと、ずっとつながり笑い続けていたいという考えから、いかに居心地がよく、成長を持続できる組織であるかに着目した工夫を行っています。
現在、ブランドとしては「肌と心はつながっている」という考えをもとに、環境や心身など様々なストレスへの配慮がされた商品を提供しています。
これは会社づくりの上でも同様に取り入れられていて、「ストレスオフ組織」と呼んでいます。
ストレスオフというのは、簡単に言うと自分でストレスのマネジメントができていることを言います。例えば、仕事などで成長するためには、負荷、つまりストレスがかかることもあるでしょう。でもそこから逃げたり、ストレス発散するだけではなく、負荷がかかっていることを自覚して成長につなげていくために、自分自身が主体的にON/OFFをコントロールするということです。
ストレスがあまりに多いと自律神経の乱れなど心身に影響が出てしまう恐れもありますが、かといって完全に取り除けるものではありませんし、成長のためには必要な時もあります。
こういったストレスを自ら切り替えてコントロールできるというのが大事なことだと考えて、「ストレスをオフする」という表現を使っています。
当社の組織づくりにおいて、大切にしているのが主体性/休息/グルーミングの3つの概念です。
従業員数を考えても、社員/契約社員合わせて39人という決して多くはない人数なので、それぞれが主体性をもった働きをすることで事業が効率よく進められます。いかに主体性を発揮してもらうか、そして目線を揃えてどこに向かっていくかをきちんと理解してもらうことで、自転成長していくような組織作りを心がけています。
ストレスオフという考え方に基づく具体的な施策について、まずは「主体性」の部分を教えてください。
主体性を発揮してもらうというテーマは難しく、まだまだ試行錯誤の途中となってしまいますが、ご紹介させていただきます。
まずは、社内の情報格差を是正するための朝ゼミという時間について。
朝ゼミは、月曜日から金曜日の毎朝9時から約1時間、社員全員参加で行っている会です。登壇者が毎日入れ替わりとなり、情報共有であったり、ディスカッションする時間を設けています。
内容は時々によって変わるのですが、会社の方針、ブランドや商品について、現状の課題などの共有が主です。例えば今朝ですと、商品企画部の担当から商品開発の進捗について情報共有がありました。ただ一方的に伝えるのではなく、自分事にして主体的に考えてもらうために、「新商品のアイデアを出してみよう」というような投げかけも行われます。それに対し、分けられたチームごとにディスカッションをしたり発表を行います。
司会はどなたがされるのですか?
登壇する人が、毎回行います。テーマは、適宜決めながらやっていて、枠さえ空いていれば、誰でもその時間を使えます。発信したいことがあれば、手を挙げて発信することができる、というのが基本ルール。外部講師の方を呼んで勉強会の形式をとることもあります。
主体性を発揮しようにも、発揮する方向性を間違ったら困ってしまいますので、「いまこっちの向きで進んでいるよ」という大方針をみんなでシェアし、情報のギャップを無くす。そういう目的で行っています。
透明というか、表裏が発生しないような仕組みづくりをすごく感じます。
やはり会社全体に浸透させないといけないことがあれば、ここでの時間の使い方を考えますね。
あとは毎年、「ポラリス」という社員手帳を内製し、社内で配布しています。コーポレート企画部にはこういったインナーブランディング用のツールを内製できるチームもあります。毎年一冊編集していて、その年度の方向性、重要な共有事項をテーマに制作しています。
かわいいです。デザインも内製なんですか?
ありがとうございます。デザインも内製です。このチームはもともと会報誌の制作チームでしたが、インナーブランディングのデザイン、制作編集などを行うなどして現在は別チームとして存在を発揮しています。 社員手帳の名前は、「ポラリス(=北極星)」からとっていて、先程の大方針のような「どっちを向いているのか」という疑問に対し「今年はこれなんだ」という指針を示す意味があります。
このポラリスの編纂のため、毎年「ポラリス制作委員会」を組織し、そこに私ですとか、コーポレート企画部から編集長を出します。制作委員会のメンバーは、全従業員から自薦・他薦で参加しています。 これは今期のものですが、前期から今期にかけては、理念の表現を変えました。従業員から「前の理念の言い回しだと、額縁に入れて飾ったままになる」という意見が出まして。
このあたりも、理念として直していいのかということを朝ゼミの時間で全社員で議論し、いいよとなれば反映すると。そういう風に皆が参加して作っています。そこも主体性を発揮して欲しいための取組みといえます。
これは、社員が千人になっても、1万人になっても通用するような、骨格をつくられているのだなあと感じます。
そうですね、そうであって欲しいです。でも限界というものもありますので、今後実施方法のブラッシュアップは常に必要だと思っています。 実は「ポラリス」は、作る側で関わると、「なぜ作っているのか」という事も理解できるのですが、受動的に渡されると感じれば、やっぱり温度差ができてしまいます。そこの温度差みたいなものをいかに埋めていくのかというのが、毎年難しいところではあります。
次に「休息」について、どのような施策があるか教えてください。
CSO=チーフ・スマイル・オフィサーという役割を持った者を配置しています。これは欧米の企業で取り入れられているCHO(チーフ・ハピネス・オフィサー)という、従業員の”幸福”をマネジメントする専門の役職を真似たもの。いわば従業員が笑顔で過ごすことを目的に設置した役職です。いまフォーカスしているのは有休の取得についてで、やはり一生懸命仕事に取り組めば取り組む人ほど、休み方が下手になっている実情があります。そこで誰か(CSO)がおせっかいをやいて計画的な取得をしていくという方法をとっています。
また、ただ休みを押し付けても、一日何もしないのではストレスオフにはつながらないと思うんですね。いつ取得するか、何のために休みを利用するのかということに対してきちんとアドバイスをしてくれて、一緒に考えて休みを取れるような仕組みがCSOです。実はここでもポラリスが登場します。
ライフデザインというパートがありまして、要は退職後の姿を思い描くというページです。あなたはどう生きていきたいんですか、ということですね。当社の数年後の事業のビジョンを掲げていますので、その時にあなた自身はどうなっていたいですか?という疑問を投げかけ、そこから逆算をして、今やるべきこと、やめるべきこと、そういった事を整理していって、大事にしていきたいことを見定める。その目標に基づいて、年間の休みの使い方を決めると。そういうことをやっています。
社員のセルフブランディングのようなところも支援しようとされている姿勢がすごいですね。
「どう生きるかなんて言われても」と戸惑う方もいると思いますが、でも言われないと考えもしないですよね。これは、恒吉自身が、「孝行のしたい時分に親はなし」という後悔を体験しているため、同じ思いを従業員にさせたくないという提案から始まったところもあります。
後から振り返って、こうしておけばよかったなあと後悔しないように、自分のゆくゆくの姿みたいなものを想像させるきっかけだけは与えたいということです。
では次に「グルーミング」について教えてください。
「ストレスオフ」に着目した取り組みの中には、脳のクセを利用したものがあります。グルーミングもその一つで、「愛着を伴ったコミュニケーション」などのことを指します。
人間は、ストレスを感じると「コルチゾール」というホルモンが発生します。これを抑える働きをするのが「オキシトシン」というホルモンで、愛情ホルモンと呼ばれたりもしますね。これは母親が授乳をするときに良く出るホルモンなのですが、他にも関係性の親しい間柄でスキンシップや会話などのコミュニケーションをすると分泌されることがわかっています。愛着を感じることがポイントです。
つまりそうして愛着を感じることで、ストレスを和らげる作用があることが科学的に分かっているんです。
そのため、社内でも、同僚で収まらず、一体感や仲間と感じられる間柄になるための様々な試みを行っています。
これを促進するために欠かせないのが「居場所づくり」です。会社組織って、ふつう部署に所属すると思うのですが、それだけだと上司と自分との関係性が膠着しやすくなり、居場所が限定されてしまいます。
そうなると、例えば上司との折り合いが悪かったら、場合によっては誰にも相談できずに、居場所がないというつらい気持ちを味わうかもしれません。また、問題の解決も難しくなります。
それを避けるために、複数居場所をつくるという提案をしているんです。
前編はここまでとなります。 >後編はこちらから
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