アルバイト・パートの有給休暇基礎知識
執筆: 田中靖子(たなかやすこ) | |
アルバイトやパートタイムの従業員も、有給休暇を取得することが法律で認められています。
アルバイトやパートタイムの従業員から有給休暇を申請された場合には、会社は必ず有給休暇を付与しなければいけません。 もっとも、全てのアルバイトに有給を与えなければいけない、というわけではありません。
また、アルバイトやパートタイムの従業員が取得できる有給日数は、正社員とは異なります。 今回の記事では、アルバイトやパートタイムの従業員に与えるべき有給休暇の日数や罰則について、分かりやすく解説します。
そもそも正社員とアルバイトの区別はどうやってするのか?
下記の2つの条件を充たす従業員は、「パートタイム労働者」と呼ばれ、フルタイムの正社員とは区別されます。
(1)1週間の労働時間が30時間未満であること
(2)勤務日数が週4日以下であること
つまり、アルバイトとして採用された従業員であっても、週30時間以上勤務している場合は、正社員と同等の有給休暇を与えなければいけません。また、1日の勤務時間が2~3時間と短時間のアルバイトであっても、週5日勤務している場合には、正社員と同等の有給休暇を取得する権利があります。
今回の記事で解説するのは、「1週間の労働時間が30時間未満」かつ「1週間の勤務日数が4日以下」である、アルバイトやパートタイムの従業員を対象としています。
全てのアルバイトに有給休暇が必要か?
全てのアルバイトやパートタイムに有給休暇を付与する必要はありません。下の2つの条件を充たしているアルバイトやパートタイムに限り、有給休暇を与えなければいけません。
(1)6ヶ月間継続して勤務していること
(2)全労働日の80%以上出勤していること
(3)週1日以上出勤していること又は年間48日以上出勤していること
注意しなければいけないのは、「勤務日数が少ないアルバイトであっても、6ヶ月以上勤務しているのであれば、有給休暇を与えなければいけない」ということです。この点を見落としている会社が多いので、注意しましょう。
たとえば、週に1日しか出勤しないアルバイトであっても、6ヶ月以上無遅刻無欠勤で働いていれば、有給休暇を与えなければいけません。
「週1日しか出勤していないアルバイトだから、大丈夫だろう」と油断していると、法律違反となってしまいます。出勤日数が少ないアルバイトであっても、継続年数が長い場合には、出勤率が80%以上かどうか確認しておきましょう。
アルバイトの「全労働日」はどうやって計算するのか?
アルバイトやパートタイムにとっての「全労働日」とは、「アルバイトとして勤務しなければならない日」を意味します。アルバイトの方はシフト制で働いていることが多いので、一般的には「シフトで定められた出勤日」を全労働日として計算します。
たとえば、シフト制で「月曜午前と水曜の午後に出勤する」と決まっている場合は、「週2日」を全労働日として計算します。この例のように、午前だけの勤務や午後だけの勤務であっても、全労働日は「1日」として計算します。
アルバイトと正社員に違いはあるのか?
アルバイトと正社員では、「与えなければいけない有給休暇の日数」が異なります。アルバイトは短時間勤務であるため、有給休暇の日数は正社員よりも少なく定められています。
アルバイトに付与される有給休暇の日数は、下記のとおりです。
継続勤務年数 | ||||||||
勤務日数 | 半年 | 1年半 | 2年半 | 3年半 | 4年半 | 5年半 | 6年半 | それ以上 |
週4日勤務 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 | 15 |
週3日勤務 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 | 11 |
週2日勤務 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 | 7 |
週1日勤務 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 | 3 |
このように、週ごとの勤務日数がばらばらである場合は、1年間の勤務日数で計算します。アルバイトの中には、週ごとの勤務日数が決まっていない人もいます。たとえば、「先週は2日しか出勤していないが、今週は4日出勤して、来週は1日も出勤しない」という人もいるでしょう。
継続勤務年数 | ||||||||
年間の 勤務日数 | 半年 | 1年半 | 2年半 | 3年半 | 4年半 | 5年半 | 6年半 | それ以上 |
169~216日 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 | 15 |
121~168日 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 | 11 |
73~120日 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 | 7 |
48~72日 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 | 3 |
有給休暇中の賃金はいくら払えばいいのか?たとえば、年間の勤務日数が80日のアルバイトの場合を考えてみましょう。継続勤務年数が4年3ヶ月であれば、1年間の有給休暇は5日となります。
有給休暇を取得したアルバイトやパートタイムに支払う金額は、どのように計算すればよいのでしょうか?計算方法は、下記の3通りがあります。
(1)平均賃金
(2)所定労働時間労働した場合に支払われる賃金
(3)健康保険の標準報酬月額相当額
アルバイトには時給で賃金を支払うことが一般的なので、多くの会社では「(2)所定労働時間労働した場合に支払われる賃金」を採用しています。
アルバイトについてよく問題となるのは、「1日の有給休暇に対して、何時間分の時給を支払えばよいのか?」ということです。
この問題は、「もし有給休暇を取らずにアルバイトとして出勤したとすると、いくらのアルバイト代を支払ったか」と考えて計算します。
たとえば、午前中3時間のシフト制で働いているアルバイトの場合は、下記のように計算します。
時給900円✕3時間=2,700円
よって、1日分の有給休暇に対して、2,700円を支払うことになります。
有給休暇として1日休んだからといって、丸1日分の賃金を払わなければいけないわけではありません。
アルバイトに有給休暇を与えなかった場合の罰則は?
アルバイトやパートに有給休暇を与えなかった場合には、労働基準監督署から指導や勧告を受けることになります。それでも改善されない場合は、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金の刑に処せられます。
会社が労働基準法違反による罰則を受けてしまうと、社会的な信頼を失ってしまいます。違法と知らなかったでは済まされません。有給休暇のルールを正しく理解して、アルバイトやパートタイムの従業員にも適正な有給休暇を与えましょう。
まとめ
アルバイトやパートタイムなどの短時間勤務の労働者に対しても、有給休暇を与えなければいけません。付与する有給休暇の日数は、週又は年間の勤務日数によって異なります。アルバイトが有給休暇を取得した際の支給額は、時給をもとにして計算します。アルバイトやパートに有給休暇を与えなかった場合には、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金の刑の対象となります。有給休暇のルールを正しく理解して、アルバイトやパートタイムの従業員にも適切な有給休暇を与えましょう。
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