「変形労働時間制」と「みなし労働時間制」を理解する

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

クリエイティブな仕事の場合、労働時間とアウトプットは比例しない場合も多々あることでしょう。

また、夏場は忙しいけれど、冬場はほとんど業務がない。逆に冬場は忙しく、夏場は閑散としている等、季節によって、業務の忙しさに波がある業種や職種ってありますよね。1か月の中でも、月末は忙しいけど、中旬はそうでもないといった業種/職種もあることと思います。

本来、法定労働時間内で労働時間を変則的にすることは認められませんが、上記のような業種や職種に対応して、法定労働時間を例外的に変更できる制度があります。

今回は、法定労働時間の例外となる「変形労働時間制」、並びに「みなし労働時間制」について説明します。

※こちらもご覧下さい:
変形労働時間制(フレックス制など)の始め方と運用方法
みなし労働時間制の始め方、運用方法

変形労働時間制とは

労働基準法では、1日8時間/1週40時間を超えて労働させてはならないとしています。

その例外となる、変形労働時間制度を活用すれば、1日または1週単位の枠を解除し、月単位や年単位など一定期間を平均して1週当たりの労働時間が法定労働時間の枠を超えなければ労働させることができます

変形労働時間制度には、以下の種類があります。

  • 1年単位の変形労働時間制
  • 1か月単位の変形労働時間制
  • 1週間単位の非定型的変形労働時間制

法定労働時間を超えて労働させた場合、通常は会社は従業員に対し割増賃金を支払う必要があります。業務の繁閑に法則性がある場合は、変形労働時間制度を採用でき、割増賃金を抑える事ができます。これは従業員にとっても、業務の閑散期に長期休日が得やすいなど、ゆとりある生活を送るためのきっかけにもなるでしょう。

上の3区分に加え、フレックスタイム制という制度もあります。こちらの方が、馴染みのある制度かもしれません。

フレックスタイム制を導入すれば、1ヶ月のあらかじめ決められた総労働時間内で、従業員自身が各日の始業時刻と終業時刻を自由に選択できます

フレックスタイム制は、以下2つの時間帯で構成します。

  • コアタイム:1日の労働時間帯の中で、従業員が必ず勤務しなければいけない時間帯
  • フレキシブルタイム:従業員の裁量で、出退勤してよい時間帯

コアタイムは、必須ではありません。全勤務時間をフレキシブルタイムでも構いません。

制度運用の注意点

ほとんどがコアタイムで、フレキシブルタイムが極端に短いと、フレックスタイム制とみなされない事があります。また、従業員が始業時刻のみを自由に決められるという場合も、フレックスタイム制とみなされません。フレックスタイム制とみなされるためには、始業時刻/終業時刻の両方を自由に選択できる必要があります。

フレックスタイム制は、従業員が自身のライフスタイルに合わせて、裁量を持って労働時間を決められる制度です。従業員が個性や能力を発揮する機会が増し、優秀な人材の確保に効果的だと考えられます。

みなし労働時間制とは

以下の様な業務に従事する従業員は、従業員自身に裁量を与え、労働時間を柔軟に取り扱った方がよい場合があります。

  • 営業や出張など、オフィス(事業場)外の業務
  • デザイナーや開発、研究職などの専門性が高い業務

労働基準法では、みなし労働時間制を以下のように規定しています。

事業場外労働みなし労働時間制

オフィス(事業場)外の業務で、みなし労働時間制の対象にできるのは、管理職など使用者の、具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な業務とされています。

直行や直帰で事業場に寄らない業務でも、管理者(使用者)と一緒の場合や、随時指示を受けながら業務をしている場合には、事業場外のみなし労働時間となりません。

専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制

裁量労働制は、業務を行う手段、方法、時間配分を従業員の裁量に任せる制度です。

実際の労働時間とは関係なく、あらかじめ取り決めた「時間」について労働したとみなし、給与を支払います。労働時間を管理しないことで、従業員がより能力を発揮できることを期待した制度のため、業種によっては裁量労働制にできないものもあります。

裁量労働制を採用できるのは、下記のような業務に従事する職種の場合です

  • 専門業務型裁量労働制:デザイナーや研究開発職、弁護士などの専門性が高い業務
  • 企画業務型裁量労働制:事業運営に関する企画・立案・調査・分析業務などの業務

裁量労働制を導入すれば、みなし労働時間に基づき給与を概算できるため、残業代の増加を抑えることができます。また、一般的には「質の高い労働の成果を受け取ることができる」と言われています。従業員にとっても、効率的に働くことができ、労働の成果を正当に評価してもらうことができると言われています。

まとめ

ここ数年、働き方の多様性が労使双方から求められています。従業員それぞれのライフスタイルに合わせて働ける職場を提供し、従業員にベストなパフォーマンスを提供してもらう。そのためにどうすべきなのか、模索を続けなければなりません。

毎日、同じ時間帯で働くのではなく、業務に合わせてメリハリをつけて働く「変形労働時間制」。効率的に、自律的に働く「みなし労働時間制」。法定労働時間の例外となる、これらの新しい制度は、会社経営にとっても、従業員のワークライフバランスにとっても、良い影響を与える可能性を秘めています。適材適所で、活用していきましょう。

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