フレックスタイム制の労働時間管理の方法

執筆: 『人事労務の基礎知識』編集部 |

自由な勤務体制を実現するための方法として、フレックスタイム制度は有効な場合があります。コアタイムに出勤していれば、それ以外のフレキシブルタイムには、従業員が自由に勤務時間を決めることができます。しかしフレックスタイム制を採用した場合でも、労働時間の管理は適切に行うことが必要です。

フレックスタイム制とは

フレックスタイム制とは、1ヶ月の総労働時間を定めておき、従業員がその範囲内で各日の始業・終業の時刻を決定できる制度です。1日のうちで必ず終業すべきコアタイムと、いつ出社・退社してもよい時間帯(フレキシブルタイム)を設定する形が一般的です。またコアタイムを一切設けず、すべての時間をフレキシブルタイムとする形も認められています。

フレックスタイム制のメリット

従業員に労働時間の始業・終業時刻の決定を委ねているため、従業員の働きやすさや個別の事情に応じて、柔軟な働き方が実現できます。具体的には以下のようなメリットがあります。

  • 終業時間が夜遅くまでに及んだ場合に、次の日の出社時間を調整し、十分に休息をとってから出勤できる。
  • 育児、介護のための時間を取ることができます。
  • 人材の確保、定着に効果が見込める
  • 従業員の労働時間に対する意識が高まり、残業代の削減につながる
  • 通勤時の混雑時間を避けて出社できる

フレックスタイム制のデメリット

柔軟がゆえに、幾つかのデメリットも当然に発生します。しっかり吟味して、導入を検討してください。

  • 自己管理能力の低い人は残業代が増える場合がある。
  • 出勤、退勤時間が個人によって変わるため、打ち合わせ、会議の日程調整が難しくなる。
  • 社内でのコミュニケーションが取りづらくなる。
  • 何かあった際に、担当者が不在である事態が生じやすい

フレックスタイム制をスタートするための要件

フレキシブルタイム制を導入するためには事前に就業規則で内容を定めて、労使協定を締結することが必要です。ただし、変形労働時間制とは異なり、所轄労働基準監督署長に届出を行う必要はないので注意しましょう。

労使協定で定めるべき事項
・対象となる労働者の範囲・清算期間・清算期間内の総労働時間・標準となる1日の労働時間・コアタイムを定める場合はその時間帯・フレキシブルタイムを定める場合にはその時間帯

 

※労使協定とは労働者(の過半数を代表する者)と使用者との間で締結される、書面による協定のことです。

※清算期間とは労働者が労働すべき時間を定める期間で、1ヶ月以内の期間です。

フレックスタイム制における時間外労働の考え方

フレックスタイム制でも当然時間外労働の概念があります。清算期間における法定労働時間を超えた時間を時間外労働時間と考えます。つまり1日単位で時間外労働時間を計算することはせず、清算期間を単位としてのみ計算を行うことになります。清算期間における法定労働時間を超えた時間が割増賃金の対象となる時間外労働と考えます。

フレックスタイム制に関する規定例

フレックスタイム制を導入する際に活用できる規定の例を下記に上げていきます。実際には、専門家と相談しながら、自社に適する規定を作成することをおすすめします。

 

(適用する従業員の範囲)

前条の規定にかかわらず、開発部に所属する従業員については、フレックスタイム制を適用するものとする。

 

 

(始業・終業時刻等)

1 フレックスタイム制を適用することとした従業員の始業、終業時刻については、それぞれの時間帯において、従業員が自主的に決定するものとする。

2 フレキシブルタイム、コアタイムおよび休憩時間の時間帯は次のとおりとする。
始業時間帯 7時から10時まで

コアタイム 10時から15時まで

終業時間帯 15時から20時まで

休憩時間  12時から13時まで

 

 

(清算期間および総労働時間)

1 フレックスタイム制における勤務時間の清算の期間は、毎月1日から末日までの1ヶ月間とする。

2 清算期間における所定総労働時間は、160時間とする。

3 1日の標準となる労働時間は、8時間とする

4 従業員は、所定総労働時間に対し著しく過不足時間が生じないように努めなければならない。

5 所定労働時間を超えた労働に対しては、賃金規定の定めるところにより時間外労働手当を支給する

6 所定総労働時間に不足が生じた場合には、月刊法定総労働時間から所定総労働時間を差し引いた範囲内の労働時間分を加算した労働時間を翌月の所定労働時間として清算することができる。

7 年次有給休暇を取得した日については、1日の標準労働時間である8時間労働したものとみなす。